「俺のライバルはリングの中で戦う相手ではない。お客様だ!」
なんともいえないコクのあるお話が載っていたので
ご紹介したいと思います。
(私の趣味の4本柱は「音楽」「プロ野球」「お笑い」「プロレス」です(笑)。)
そのレスラーの名前は「上田馬之助」
35歳以上の人なら子どもの頃見たプロレスで
猪木とよく戦っていたヒール(悪役)のレスラーとして
知っている人も多いのではないでしょうか?
15年前におきた交通事故で胸下不随となり
ほぼ寝たきり状態となっています。
そんな上田さんの「遺言」ともいうべきインタビューの内容が
とても素晴らしかったので記事にしたいと思います。
昭和のあの時代、ヒールとして生きるには
非常に大変だったわけですが、
上田さんの覚悟というか考えは
本当にプロ意識に満ちたものだったんだなと思いました。
「なんの商売でも同じ。それぞれに役割があり、
死に役(負け役)やヒールがいてこそ全体が光るんだ。」
「ビジネスというのは次に続けていかなければならない。」
「勝手にてめえが目立つことばかり考えている。
一人の者をみんなで持ち上げてやろうというのがない。
だから、結果的に誰も目立てない。誰も光らない。足の引っぱり合い。」
「優勝するチームは、みんながそれぞれの役割をはたして、
力を合わせるチームだ。チームがバラバラだったら優勝は無理だ。
自分だけ成績がよければいいってもんじゃない。
プロレスもそれと同じ。
力道山がなぜ、あそこまでの人気になったのか。
それは、みんなが力道山を盛り立てたからだ。」
強い、弱いだけの勝負論ではなく、
大きな視野で考え、ビジネスとして興行を支え続けてきた
そのスタンスは、子どもの頃は理解しがたいですが、
大人になればなるほど納得してしまいます。
(私はプロである以上、
タイトルとったり、優勝するチームの野球選手より
お客様を球場に呼べる野球選手のほうが本物のプロという持論なので。)
例えば、世間でよくある「プロレス=八百長」論にもこんなコメントがありました。
「プロレスは八百長ではないんだ。
八百長というのは、どちらが勝つか負けるか、
金を賭けて不正をするのが八百長だろ?
プロレスに金を賭ける人いる?」
「いませんね。」
「だから、八百長じゃない。
ただ、筋書き、ストーリーというものはある。
でも、それは何のスポーツでも同じだ。
野球なんかは「筋書きのないドラマ」と言うけど、
選手は監督が出す指示に従ってバントをしたり、盗塁したりしている。
あれは監督が筋書きを作っているんだ。だからおもしろい。
野球は監督が指示を出し、あとは選手のアドリブ。
プロレスだってそう。プロレスはマッチメーカーが指示を出し、
あとはレスラーのアドリブだ。」
「なるほど。」
「筋書きだけがよくても、選手の力量が伴なわなければ、
決してお客様を満足させることはできない。
そしてストーリーがあっても、プロレスというスポーツはライブであり、
お客さんの反応によって左右される。
だからストーリーどおりにいかないこともある。
そのときは、トップのレスラー同士が、お互いに盛り上げ方を考えながら
試合を作っていく。
そこで『筋書きにない』ドラマが生まれるんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
なんとも唸ってしまいました(笑)。
私はスポーツは
アマチュアは「競うもの」で
プロは「魅せるもの」と思っています。
前者の評価は「強い弱い」ですが、
後者は「上手い下手」の要素が強いです。
なぜならプロはビジネスであり、
ビジネスは「お客様に喜んでもらってお金を頂いてナンボ」だからです。
ここまでなんでも背景や定義などの手の内が
あからさまに見えるようなこの時代ならさておき、
あそこまで閉鎖的だったあの時代に
そう思えた上田さんの懐の広さに
「これぞプロ!」といった心意気を感じてしまうのです。
で、今から15年以上前、
事故する前に上田さんが書かれていた色紙のコメントが
冒頭のタイトルの言葉です。
「俺のライバルはリングの中で戦う相手ではない。
お客様だ! 上田馬之助 」
子どもの頃にテレビで見ていた
憎憎しいヒールレスラー上田馬之助でしたが、
大人になり振り返って見れば
誰よりも大人で、誰よりもプロだったカッコいい男なことをに気づかされます。
私はスポーツ系では
「プロ野球」「プロレス」が好きなんですが、
この2つは観戦したりテレビで見たりするだけじゃなく
その間から滲み出てくる裏側のドラマ、
またそれが活字になりやすいからかとてもハマってしまうのです。
偶然かもしれませんが、
この2つの言葉には表現上「プロ」という言葉がくっついてきます。
一般的にはサッカーやバスケ、相撲なんかにはつかないですよね。
その辺あたりにも
「プロ」としての匂いがして好きなのかなと思う今日この頃です。
もしよかったご興味もたれた方はぜひ買って読んでみてください。
今なら本屋さんに並んでいます!税抜895円です!
※今回の記事は
「Kamipro(カミプロ)」2011年 155号」
株式会社エンターブレインさんより抜粋させて頂きました。
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