土地を買う前に知っておくとモンスター近隣を見抜く方法
今日は、土地を探して家を買おうとか、中古の住宅も含めて不動産を買おうという時に、よく心配されることの中にある「買ったはいいんだけど、その近隣に変な人がいたらどうしよう」という不安について、事前にできる対処法や対策がないかということをお話ししていきたいと思います。これは、うちのお客さんのご友人の方が土地を買って家を建てられたんですけど、完成してしばらくしたら近隣にすごい人がいて、本当に困り果ててしまったという話を聞かれたようなんです。それで心配になられて、私の方に「何か事前に分かる方法はないですか」と質問をいただいたので、絶対こうしたら大丈夫ですというものではないですけど、ある程度リスクを軽減できる方法ということを解説していけたらいいなと思っています。題しまして「土地を買う前に知っておくモンスター近隣を見抜く方法」という感じでしゃべっていきますので、ではいつものように僕の板書を見てもらいながら、話を聞いてもらえたらと思います。
最近「モンスターなんとか」という言葉、いろいろありますよね。学校の先生からしたらモンスターペアレント、要は両親がすごく癖が強くていろいろ言ってくるみたいなんもあるし、商売をやっていたらモンスタークレーマーみたいな感じで、土下座をさせるような人とか、とんでもない人がいたりします。真面目に生きている人ほど、本当に怖いし、辛い目にあったりしますよね。同様に、不動産を買って新しい拠点ができたところに、今まで全然付き合いがなかった近隣との接点が増えてくると、その近隣の中に「モンスター近隣」と言えるような、困った人が一定数いることが時々あります。例えば、やかましいおばさんタイプで、ひどかったらスピーカーでわーわー音を鳴らすみたいな極端な例もあれば、とにかく路駐をする人っていますよね。そういう人に限って大きい車に乗っていて、勝手に道路にはみ出して止めて「通れるやろ」みたいな態度だったり。鬱陶しいなと感じるような人とか、ゴミを変な出し方をして周りに迷惑をかける人、その逆で「あなたのゴミの出し方が悪い」とぐちぐち攻撃してくる人、すごくわーわー文句ばかり言って恫喝する人、とにかく暮らしていたら頻繁に迷惑がかかる、癇に障る、ドキドキさせられるような人です。
本来そういう人がいると事前に分かっていれば、そのことを知った上でこの不動産を買うか買わないかという選択ができたはずなんですけど、なにせ予想もせえへん時に突然現れるので、精神的なショックが大きいですよね。「そんな因縁のある人が近くにおるんやったら、買うのやめたのに…」というのが、一番悲しい話だと思います。だから、そういうことを事前にチェックする方法を知っておいてほしいんです。僕はいろんな土地探しの時にも似たようなことはよく言っているんですけど、今回は特にモンスタークレーマー、いわゆるモンスター近隣に特化して話をしていきます。
まず、昔は家を建てる人って、新しい分譲地、例えば5区画とか10区画くらいできれいに整備された分譲地に建てるというパターンが多かったんですが、最近は空き家が増えて、いわゆる「ここに昔古い家が建ってたよ」というところに建て替えたり、昔からの街に引っ越してくる人というパターンが増えています。そうすると、分譲地に比べて、こういう近隣トラブルのチェックの仕方はより重要になってくるかなと思います。まず一つ目は、その近隣のどこがゴミ捨て場かというのを必ず確かめた方がいいです。昔、ニューヨークの街がすごく荒廃した時代に「割れ窓理論」といって、窓が割れっぱなしになっている建物があると、そこから街全体が荒れていく、人の心がささくれ立っていくという話がありました。それでジュリアーニ市長が、とにかく割れた窓ガラスを直していって街を良くしていった、という逸話がありますが、それと同じで、ゴミ置き場がやたら汚いとか、なんか変な感じがする場所は要注意です。要注意人物がいるからそんなムードになっているのか、そういう環境があるから要注意人物が生まれるのかは分からないですけど、いずれにしてもサインではあります。
それから、さっき言ったように路駐です。本来車を止める場所はきちんとスペースがあるはずなのに、路駐がやたら多いとか、「ここが道路との境界線やろうな」というところを越して車が飛び出していないか。飛び出していても平気な人というのは、決めつけたらダメですけど、社会人としての対応に問題がある人が多い印象はあります。君子危うきに近寄らずで、そういうところもよく見てください。それから、近くに空き家とか廃墟みたいな家があると、近隣が荒れているケースもありますし、逆に「隣の人が嫌だから空き家になっている」というケースだってあり得ます。雑草が伸びっぱなしで、ゴミが散乱しているような家があったら要注意です。もちろん、きちんとしている家の人でモンスター的な人もいるんですけど、乱れた家の人でモンスター的な人、文句を言っても「俺は知らんで」みたいな感じで開き直る人の可能性もあるので、こういう周りの様子は最低限見ておいてほしいところです。
それから、近くを通る人に挨拶をしてみるというのも大事です。例えば隣の家の人が出てきた時に「こんにちは」と挨拶して、思いっきり無視されて「フン」という感じだったら、「ん?」と引っかかりを感じた方がいいですよね。その上で、これらのフィルターを通して「いやいや、そんな変な感じはなかった」「候補が絞れてきたな」となって、この土地がいよいよ本気で欲しいなと思った時に、ここから僕がおすすめしたいことをお話しします。僕自身がもしそういう土地を買う気になった時にも、必ずやることです。
一番モンスター近隣が出現したら嫌なのは、やっぱり隣近所ですよね。いわゆる「向こう三軒両隣」というやつです。だからその辺の人には、契約前に一回は必ず挨拶に行った方がいいです。単に「こんにちは」と話しかけるだけですけど、ここからが重要で、ただ挨拶に行くだけではダメなんです。モンスター系の人を見極める時には「会った瞬間」がすごく大切になります。こういうのって精神医学的に言い換えたらサイコパスの人たちで、ものすごく理不尽なことを良心の呵責もなく言えたり、常識が全く分かってないんかなと思うような人たちなんですけど、そういう人たちはものすごく頭が良くて、上手にお芝居もできるんです。ただ、このサイコパス的な人たちというのは、ものの5分も話していたら、逆にとっても魅力的に見えてしまうことがあります。
だからこそ、会った瞬間に自分の中に生まれた「ん?」「あれ?」という違和感がすごく大事なんです。最初に緊張しながら挨拶に行った時に、「なんか変やな」「ちょっと引っかかるな」と感じたなら、その感覚はとても大切にしてください。これが僕は一番重要じゃないかなと思っています。その上で、住む町の町内会長さんとか自治会長さんとかがいらっしゃったら、その方に挨拶に行くのも有効です。「あそこでいよいよ土地を買おうと思ってるんです」と、ざっくばらんにお話をして、いろいろ聞いてみたらいいです。もし民生委員さんみたいな方が分かるのであれば、その方も地域のいろんな事情をよくご存じだったりします。個人情報なので何でもベラベラしゃべることはないでしょうけど、こちらが切実に、真剣に相談すれば、人間ですからある程度の情報は教えてくれると思います。
それからもう一つ、「個店」、いわゆる個人のお店もかなり情報を持っています。例えば個人でやっている喫茶店とか、クリーニング屋さんとか。スタバみたいなチェーン店はダメです。昔は米屋さんや酒屋さんが一番事情通だったんですけど、最近は米も酒もスーパーで買うようになって、そういう個店は減ってきました。それでも、個人経営のお店が根強く残っている地域は、やっぱり地域のことをよく知っている人がいるんですよね。喫茶店だったら、お茶を飲みがてら世間話をしながら、「この辺に変わった人っていないんですか?」みたいに軽く聞いてみると、「あの人はちょっと変わってるかな」みたいな話が出てくる可能性もあります。すごく気に入った土地なんだけど、さっき言ったように「挨拶した時にちょっと引っかかった、でもよく分からない」という時は、本当に高い買い物なので、お金は多少かかっても調査会社とか探偵さんみたいなところにお願いして、調べてもらうというのも悪くないと思います。
僕は最近は、直接個人のお客さんの窓口になることはずいぶん減って、山下社長なんかがやってくれているんですけど、昔はよく「お施主さんの親のフリをしていく」というのをやっていました。「うちの娘がここの土地を欲しいと言うとるんじゃ。父親がしゃしゃり出てきたんですわ」みたいな感じで、ちょっと芝居がかった挨拶をするんです。「ご縁があったら隣近所になりますので、よろしく頼みますわ」みたいに言うと、「ああそうなんですか。若い人が来てくれはるんやね」と喜んでくれたりして、「ああこのおばさんはええ人やな」とか、ある程度人柄が見えてきます。本人が行くと構えられたり、逆に芝居を打たれたりするかもしれませんけど、親が行って「あんたが住むわけじゃないよね」と相手も少し気を抜いた時に、本音がゆるっと出てしまう可能性もあるので、これはこれでおすすめです。
隣近所にもし児童公園とかがあって、そこでお母さんたちが子どもと遊んでいたら、同じくらいの年頃の方なら、将来友だちになるかもしれないので、声をかけてみてもいいと思います。お孫さんを連れているおばあちゃんとか、お話し好きな方もたくさんいらっしゃるので、ちょっと聞いてみるといろんなことを教えてくれます。僕は小さな工務店を経営しているので、自分の住む町にも異業種の商売人の仲間がいて、交友範囲の広い人、地域の人の情報をよく持っているタイプの人っていますよね。そういう人に聞き合わせをしてもらうのも良いです。特に商売人さんというのは勘が働く人、センサーが鋭敏な人が多いので、こういう方を頼るのもおすすめです。
お世話になる不動産屋さんがご近所の方だったら、その社長さんに「近くの商売人さんで、地域の様子を聞ける人はいませんか?」とお願いするのもいいと思います。本当に地元密着でやっている不動産屋さんなら、事情をよく分かっていて、そもそも不動産情報を紹介する前に「ここはこういうところですよ」「こういう人がおってね」と先に言ってくれることもあります。なので、買う気になってきたら、ぜひ自分の足を使って、それから自分の親御さんも巻き込んで、使えるものは猫でも使って(というくらいの気持ちで)、いろいろ動いてもらうのがいいんじゃないかなと思います。
その上で、いろいろやったにもかかわらず、結果として後から「えー!」ということが分かる場合も、残念ながらあります。その時には、あくまで対処療法で、必ず解決するということではないですけど、一番大事なのは「売り言葉に買い言葉」で直接対決をしないことです。サイコパス系のクレーマーとか文句言いの人たちというのは、それ自体が暇つぶしでありゲームなんです。そういうことを日常的にやっている人たちはその手のことに長けていますから、気が付いたら抜き差しならない状況に持って行かれてしまうこともあります。だから、なるべく直接ぶつかるのは避けてください。あとは物的証拠です。写真とか動画とか、最近はスマホですぐに撮れますので、証拠を残しておく。その上で、基本は専門家に相談です。自治会の世話役のおじさんみたいな方がいて、頼れそうならその人に相談してもいいし、警察の保安課とか生活安全課とか、署によって名前はいろいろ違うと思いますが、そういうところに一回話を聞いてもらうのも有効です。
民事不介入とはいうものの、警察に行けば「何月何日、こういう相談に来られた」という記録は、仕事として必ず残すはずです。それが後々、生きてくることもあります。最後は警察と連携しながら、必要であれば弁護士を立てて対応していく、という流れになるかなと思います。それと、これは逆パターンの話なんですけど、最近僕の近所でも「新しく家が建ったんだけど、その家を買った人がすごい人だった」というケースがありました。その方は工事中からハウスメーカーさんとすごく揉めていて、現場で業者さんに怒鳴ったり、職人さんが現場で正座させられていたとか、そんな話も聞きました。そんなことは滅多にないとは思いますけど、もし工事中の現場でそういう異常な様子を見かけたら、それも一つの情報として受け取っておいた方がいいと思います。
その家の近くには、ハウスメーカーさんが3つくらい分譲をしていて、「立派な家が次々建ってるな、新しい人たちが引っ越して来はったな」と思って見ていたんですけど、1年くらいしたら、その問題の家の前にバリケードが立てられていたんです。「何なのかなこれ? よっぽど猫が入ってくるのが嫌なんかな?」と思っていたら、違いました。目の前に住んでいる人が嫌だったんです。とどのつまり、結局どうなったかというと、1年か2年越しぐらいにその家の前を通ったら、バリケードもきれいさっぱりなくなっていて、住人も変わっていました。本当に思うんですけど、もしモンスター近隣が出現して、どうしようもないとなった時は、「損切り」という選択肢も頭に置いておいてください。サイコパス的な人と戦っても、こっちが身も心もボロボロにされてしまいます。
例えば、旦那さんは仕事に出ていて、奥さんが家にいる時間が長いご家庭だと、奥さんが参ってしまったり、子どもさんが心を病んでしまったりすることもあります。本当に後ろ向きな話にはなりますけど、最後の最後は、モンスター近隣に関して後から気づいて、どうにも抜き差しならないとなったら、さっさと撤退するというのも一つの道です。実際、さっさと引っ越された後、その変わった人の後に入った新しい住民の方々は、幸せに暮らされています。そういう、しょうもないことで引っかかって炎上騒ぎみたいに大ごとになる前に、「ここは割り切らなあかん」という判断も必要な時があります。そうならないためにも、今日お話ししたような「事前の見抜き方」をぜひ意識してもらえたらと思います。
繰り返しになりますが、モンスター近隣、すなわちサイコパス的な人というのは、初めて会った瞬間の感覚がすごく大事です。その時の「ん?」という違和感をよく覚えておいてください。5分も経ったら、うまく取り込まれてしまうことがあります。これは僕自身、これまで60年生きてきた中で、何回もこの感覚に救われたこともあるし、この感覚をうっかり無視してしまって後悔したこともいっぱいあります。だから、皆さんの家づくりや暮らしの場を選ぶときにも、ぜひ活かしてもらえたらなと思います。


