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塗り壁にすると冬の乾燥・結露はなくなるのか?

今日は、塗り壁にすると冬の乾燥・結露がなくなるかどうかについて、私なりの考えをお話しします。

先日お客様からご相談を受けました。冬の乾燥が嫌で加湿すると、今度は結露が気になるじゃないですか。悩んでいると、ある業者さんから「内壁を塗り壁にするとそういう心配は一切なくなりますよ」「なぜならその壁には調湿性能がありますから」と言われたと。それで私に「塗り壁にした方がいいんですか?」というご質問をいただいたわけです。

まずこの話をするにあたって、1つ冬の現実として、真冬の乾燥のメカニズムを知っておいていただくといいと思います。今は24時間換気が義務づけられていますので、外の空気をどうしても取り込まないといけません。外気がいつも入ってくると、どうなるでしょうか。

例えば1年間の中で、外に出てストレス無く気持ちいいと感じる時期としてパッと浮かぶのは、5月とか10月ぐらいじゃないですか。この時期の外気の湿気の具合を、まず頭に置いてほしいです。

空気は、温度が低くなると抱えられる水蒸気量が小さくなっていき、0℃ではほぼ0に近くなります。一方、真夏の30℃・35℃ぐらいまで上がれば、たくさんの湿気を含むことができるのです。これは、絶対湿度という考え方になります。湿り空気線図とか空気線図計算表とか言い方はいろいろありますが、二次曲線のグラフで表されるものです。飽和の水蒸気量は、必ず温度によって変わります。

みなさんが日常的に「今は湿度が何%」と言っているのは、相対湿度です。「何%」という相対湿度に支配されると、乾燥のメカニズムはわかりにくいところがあると思いますので、絶対湿度で説明していきます。

1月の本州の温暖な所の平均気温は、6.1℃と言われています。その時の平均の相対湿度が49%です。50%ぐらいあると、いいかなと思うじゃないですか。でも絶対湿度という観点で見ると、1㎥(1mの真四角)の空気の中に2.9gの水蒸気しかないのです。

これがどれぐらい乾燥している感じかと言うと、5月とか10月の快適な頃は8.9gとか8.8gあると観測では言われています。ということは、1㎥の空気中の水蒸気量は8gちょっとぐらいが人間が一番気持ちいいと感じる量だということです。その中で、絶対湿度が2.9gしかないとすると、いかに乾燥してるかがわかります。1月・2月の寒い頃の乾いた空気を取り込むと、どうやったって家の中は乾燥するのです。

さっきの業者さんの説明は、「塗り壁は調湿性能があるので人間が出している水蒸気を吸着して保持してくれて、吐き出してくれるから乾燥が和らぎます」ということでした。絶対湿度が2.9gといったら、ちょっくらちょいとでは人間が心地いい絶対湿度まで上がってきません。

私たちは1つの目安として、絶対湿度ベースで言うと7g未満になったら加湿しなければならないと思っています。2.9gから7gまで、壁から水分は出るでしょうか。ちょっとは出ると思いますが、すぐに乾いてカラカラになるはずです。

コロナのことや子どもさんの健康のことを考えたら、換気扇を使わないといけません。24時間換気で絶えず乾燥した空気が外から入ってくるので、乾燥はそんなものでは絶対に和らぐことはないということです。

改めて、今度は壁の結露に対してのメカニズムに関して説明していきます。一般的に塗り壁をオススメされる会社さんが採用されている断熱材は、全部ではありませんが、セルロースファイバーと言って新聞の古紙を粉砕して入れている断熱材です。これは紙の繊維とホウ酸とかを混ぜて攪拌して、圧力をガーッと入れて断熱の層にしています。紙ですから、調湿性能があると言われているのです。

塗り壁と石膏ボードと断熱材、全部に調湿性能があるからと好まれて、そういう会社さんってオススメされていると思います。もしそういう壁に結露が発生したら、というメカニズムを説明します。

壁には外壁があって通気層があって、透湿性のある防水シートが貼ってあります。なぜかは後で説明します。多くは後ろ側に、耐震性を担保するための耐力面材が張ってあります。冬型結露はどこで起きるかというと、外側の壁と断熱材の境です。ここが冷たくなってきて、この中に水蒸気があったら場合によっては悪さするというのが、結露のメカニズムになります。

これを防ぐために何をするかというと、実は2つ方法があります。2つの防波堤と言いますが、1つは内壁の下地の石膏ボードの裏側に気密シートを入れることです。

これはポリエチレンだったり可変透湿型シートだったりします。要は部屋内は人間が暮らしていて、さっきも言ったように水蒸気があるので、壁の中に入ってきても跳ね返すためのものです。気密バリアという言い方もあります。

もう1つは、万が一ちょっとした隙間とかコンセントの貫通部分からわずかに水蒸気が入った時、この中で悪さをしないよう速やかに水蒸気を排出することです。ここの耐力面材にも、透湿性のある人気のダイライトさんとかを貼って水蒸気を吐き出していきます。

外の防水シートは水が入ってきたら嫌だけど、内側に発生する水蒸気は出ていく。スキーウェアのゴアテックスのようなものを外にも貼って、この2つの防波堤でなるべく入らないようにして、万が一入ってきたら速やかに出すことで、結露を未然に防ぎます。

塗り壁で乾燥が緩和すると言われている会社さんに聞かなければわかりませんが、気密シートを第一の防波堤に持ってきた場合、結露を防ぐために湿気を吸着してくれるものは、石膏ボードはクロスだとか何かを絶対に貼っていますので、それ以外だと塗り壁のわずかな容積に閉じ込めることになります。

あとは湿気をいくら吸っても壁の中には入っていきませんから、塗り壁部分はすぐ満タンになってしまう可能性があります。だから塗り壁を塗ったからといって、効果はゼロではありませんが、絶対に結露を阻害できるほどに吸い込んで保持できるかというと、たちまちオーバーフローすると思います。

一方で、セルロースファイバーもすごく調湿性能があって、湿気を吸って部屋内の水蒸気の保持をしてくれるので我が社は入れていないという会社もあります。塗り壁もセルロースファイバーも断熱には貢献してくれますが、気密にはあまり貢献しないのです。そうすると外壁の外周側の所で気密を取るようになると思います。

それでしっかりと面材を打ってしまうと、断熱材のところまで水蒸気が入ってくることになります。そうするともちろんセルロースファイバーは非常に水分を保持できる力があるので、 一定の水蒸気をどんどん抱えていくわけです。

しかし万が一その面材の所で、透湿性があるとは言うものの水蒸気を出しきれずに保持したとしたら。その時は、セルロースの所で結露するまでいかないかもしれませんが、かなり水分量が増えるのはあり得ると思います。

グラスウールだろうがセルロースファイバーだろうが、繊維系の断熱材である以上、断熱性能を保持するためにはできるだけ乾燥した方がいいです。なので、積極的に湿気を呼び込んでセルロースに保持するのもどうなのかという気持ちも湧いてきたりします。

そうなってくると、セルロースが結露しないぐらいの水分の保持というのが、果たして中の水蒸気を吸着しきれるのかと言うと、ちょっとわからないというところです。

なおかつ、さっきの話とトレードオフになりますが、乾燥は嫌なんです。そんなにたくさん吸ってカラカラになったら結露はないかもしれないけど、家にいる者も干からびるみたいな話になっちゃうじゃないですか。そういったイタチごっこみたいな感じになってしまうところもあります。

ここでもう1つ最終的な確認になりますが、結露する条件は3つあります。まず結露するくらいだから、元になる水蒸気があります。これが1番です。

2つめは、結露面の内・外の温度差です。いくら外が-10℃でも、部屋内が-10℃だったら結露しません。外がマイナスで中が10℃とか15℃という温度差があって結露が発生するのです。

最終的には、温度が低い側の方の境界面で、内側の飽和水蒸気量を超えたら初めてその表面に結露します。結露するための表面が必要なのです。この3つが揃って初めて結露します。

そこから考えると、結露が嫌なんだったら塗り壁がどうこうではなく、壁の中に水蒸気が入ってこないようにするという阻止が1です。そしてもし入ってきたら、速やかに出すようにするというのが2になります。

そう考えていくと、冬の結露は壁じゃなくて心配なのは窓ですよね。窓には塗り壁も何も関係ありませんので、窓の性能が重要になってきます。

内壁の塗った風合いとか質感も素敵ですよね。凹凸とか陰影もあって素敵なんですけど、こと冬の乾燥を防ぐとか結露を防ぐことにおいては、効果がゼロではありませんが過信はしてはいけません。私は、乾燥に対しては加湿しないといけないと思います。

結露に対しては、さっき申し上げた2つの防波堤、バリアと吐き出すことに期待しすぎるより、窓をしっかり強化することの方がずっと大きいというお話をしました。

塗り壁については、風合いとかデザインとかそういうことは抜きにして、過乾燥や結露が緩和されると思い過ぎないようにしてもらえたらと思います。ぜひ参考にしてみてください。

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