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HEAT20 G1, G2, G3の選び方

今日は、HEAT20のグレードの選び方についてご説明します。

家を建てるなら、省エネルギー性能の高い家を建てたいですよね。最近みんなが支持している指標に、HEAT20というものがあります。G1・G2・G3とグレードがあるのはわかるけど、それをどんな風に選んだらいいのかがわかりにくいという方もいらっしゃるようです。

HEAT20というのは元々、2020年を見据えて住宅の高断熱化をするために集まった会議体の名前でした。坂本先生を中心に、建築の温熱に詳しい技術者が集まって、2020年にふさわしい高断熱のあり方を研究したのです。そこで出された指針の総称を、HEAT20と言うようになりました。これと似た言葉に、一般的な住宅性能を表す断熱等級というものがあります。その辺りの言葉の比較も含めて、解説をしていきたいと思います。

建物のグレードというのは4つの段階に分かれています。まず、断熱等級4、いわゆる平成28年度基準と言われているものです。これは今のスタンダードというよりは最低基準です。家を建てるならこれ以下だとダメというベースになります。建築基準法で最低限定められていることに等しいものです。ちなみに4ということは1・2・3があったわけですが、個人の住宅で考えたら、日本という国ではもはや1〜3等級で家を作ることはあり得ません。

具体的な数値で言うと、建物の壁・屋根など外側の部分、つまり外皮の性能値の合計を、U値のアベレージ、UA値で表わします。これは数値が小さい方が性能が高いです。そして、断熱等級4だと0.87以下ということになります。HEAT20はこれを1つのベースにして、そこからどうやってさらに高みを目指していくかという基準だと理解してください。

次が、HEAT20のG1グレードです。完全に一致はしていませんが、新設された断熱等級5に相当すると思ってください。正確には、断熱等級5はUA値で言うと0.6以下ですが、G1グレードは0.56なのでより厳しいというイメージです。

ゼロエネルギーハウス、いわゆるZEHというものがあります。大手ハウスメーカーさんなんかも、うちはZEH住宅ですから高性能ですと言われているはずです。それがUA値0.6あたりなので、今や断熱等級5でありG1グレードの世界になります。断熱等級5とかG1は、松竹梅で言ったら梅みたいなものです。それでもこれまでの感覚で言うと、結構ハイスペックな感じでした。

次がG2で少し性能が上がっていきます。これを断熱等級で言うと、6です。少し前までG2は最高レベルだと言われていました。UA値で言うと0.46以下になります。

今ってエネルギー危機じゃないですか。電気代も1.5倍、2倍と上がって、省エネルギー性が高くないと生活費が掛かって仕方がないという感じもあり、にわかに出てきたのがG3です。断熱等級で言うと7という世界になります。もちろんパッシブ住宅とかQ1住宅みたいに、もっとすごいものもありますが、一般に言うとこれが一番いいグレードです。外皮性能で言うと0.26以下で、私たちからしたら「それはすごいですね」という感じの性能になっています。

ここまでの説明でも、ちんぷんかんぷんだと思うので、より具体的にご説明していきます。例えば断熱等級4は何を目指しているのかと言うと、家の中の一番寒い温度が概ね10.5℃以下にならないよう、10℃ぐらいは保てるぐらいの性能です。家が10℃と言ったら、今の感覚で言うとまぁまぁ暖かいですよね。昔の家って、すぐに10℃以下になっていましたから。G1で言うと12.6℃で、G2なら13.7℃。G3にあたっては15.5℃ですから、冬の一番寒い時にその温度より下回らないようにできる性能と言ったら、結構な感じだと思います。こういう断熱感なんだということを知っておいてください。

性能はわかったけど、どういう風に選んだらいいのか。性能が高い方がいいのかと言うとそうなのですが、性能の高さを求めた時に必ず付いてくるのがコストの問題です。平成28年度基準の断熱等級4でも、G1グレードにしようと思ったら、断熱材の強化・窓の強化などで100〜150万円ぐらいのお金を掛けないとできません。G1からG2に上げるのも、やり方はいろいろあるし会社の力にもよると思いますが、70〜120万円の間ぐらいはコストアップになると思います。

ただ、平成28年度基準(断熱等級4)だと確かにイニシャルコストは安いですが、光熱費などのランニングコストを考えると、10年も住むとG1の方が絶対に得するようになっているのです。G2は、30年住んだら絶対にG1よりG2の方が得します。家って絶対に30年ぐらい住むじゃないですか。そのため「G2をやっておいた方がいい」という潮流が、ごく最近までありました。

G3は確かに性能はいいけど、G2からG3に上げるのに150万円とか200万円レベルで価格がアップします。これは何年したらペイするのかと言うと、50年以上しないとランニングコスト回収が難しいのです。もちろん今はエネルギー危機なので、それを考えるとわかりませんが、それにしてもまだ割高という印象があります。

そういう中でどれを選べばいいのか。私の師匠の松尾先生が最近よくおっしゃっているのが、G2.5という概念です。G2とG3の中間ぐらいにおいしいポイントがあるのではないか、と言われています。もちろんお金は一定掛かりますが、それだけのリターンも得られるということです。

G2.5は松尾先生のお話でいくと、0.46〜0.26の間になります。大体0.36前後です。0.38とか0.34みたいな感じでG2.5ぐらいになると、性能とコストバランスが合うということになります。G3は、お金持ちの方が気にせず買われたらいいと思いますが、そこそこの経済状態の方ならまずはG2を目指して、できればG2.5をやるのがいいというのが1つの判断基準になります。

その上で、G1・G2・G3のどれにすればいいのか。個人的には、G1でもパッシブ設計のポイントである冬の日射取得や夏の日射遮蔽をちゃんとやれば、十分に住みやすい家だと思います。でも、せっかく家を建てるんだったら「本当に悔いのない形にしたい」「失敗したくない」と言って、より安心できるものにしたいと思われる方は多いです。それで私も「もちろんG2もいいですよ」「冬場の暖かさはG1より体感で違います」と説明します。しかしG3に関しては、今のところ本州の6地域ではまだもったいないかなというのが正直なところです。今後、コスト問題に関してブレイクしてくる技術者も登場するかもしれませんね。

最後にとても面白い情報を紹介させていただきます。東京理科大学さんの理工学部建築学科の中に、高瀬研究室という研究室さんがあります。そこの方がYouTubeで「住宅を対象としたエアコン暖房時の温熱環境・熱負荷削減効果のCFD検討 断熱性能の違い・熱交換換気の使用有無による比較」という題名の動画を上げられています。ちょっとアカデミックですがすごく観やすい動画なので、もし良かったら観てみてください。
https://youtu.be/ldajpv-Ba44

温熱環境についてのきちんとしたシミュレーションを、動画でうまくまとめられています。これを観させていただいてすごく驚いたのは、今議論になっているG3グレードを購入すべきかという話の中の、比較シミュレーションです。冬期にエアコンのエネルギーが一番少なくて済む仕様は、本当にG3なのかを検証されています。

結果的に言うと、G2グレードとG3グレードを比べたら、当たり前ですがG3グレードの方がエアコンのエネルギーの投入量が少なかったです。しかし驚くなかれ、G2グレードに熱交換換気を足すと、実はG3グレードの熱交換換気無しのスペックと比較すると、そっちの方が投入量が少なくなるそうなのです。これはすごいですよね。熱交換システムという負荷を
G2にするだけで、G3より効率が良くなるという見方もあるということです。

結論です。できればG2はやってもらいたいですが、より高みを目指すならG2.5をまず目指します。そしてG3をやりたい方は、熱交換換気いわゆる一種換気を付けた方が、よりコストパフォーマンスは高くなるということです。これが、今の時点で一番バランスの取れたG1・G2・G3の判断の仕方かなと思います。

ちなみに今回の話は、本州で一番多い6地域という温暖な地域に照らしています。もっと寒い1〜4地域の方は、もっと数値が厳しくなりますので、そこは頭に置いておいてください。

今日はアカデミックでマニアックな話でしたが、とても大事なことです。技術に明るいご主人や奥様がリードしていただいて、家づくりの方向を出してもらえたらと思います。松尾先生の受け売りで申し訳ないのですが、参考にしてみてください。

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