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日本はより高湿化する!夏の湿度対策のススメ

嫌な梅雨が近づいてきましたね。こういう季節になってきましたので、先日、新建ハウジングさんというプロ向けの新聞で、我が師匠の松尾先生が解説されていた内容をご紹介しようと思います。これは知っておいた方がいいなと感じましたので、僕なりの注釈も交えながらお話させていただきます。

ズバリ今回のテーマは、「日本はこれからますます高湿化する?」ということで、夏の湿度問題に関する対策を進めていこうね、というおすすめのお話です。いつものように僕の板書を見ていただきながら、聞いてもらえたらと思います。

僕は昭和のおじさんなんですけど、本当に思います。日本の夏って、暑くなりましたよね。気温が上がってきたという実感があります。そしてそれに付随して、湿度も上がってきたんです。気温が上がるのは、まあ地球温暖化の影響だからわかる。でも、なんで湿度も上がるんですか?って、お客さんに聞かれたことがあって、説明したことがあるんです。

要は、日本って四方が海に囲まれてるじゃないですか。気温が上がると、それに伴って海から上がる水蒸気の量が増えるんです。結果的に、日本列島全体の内陸の湿度が上がるという、そんなメカニズムです。だから温度が上がるということは、もう宿命的に湿度も上がるんだと、日本という国においてはそうなんですね。中国とかロシアのような内陸性の国とはまた事情が違う。海洋国家である日本だからこそ、ということなんです。

ここで松尾先生が紹介してくれたデータをご覧いただきたいんですけど、感覚的に「暑くなったな」と思うだけでなく、実際のデータではどうかという話です。2005年から2024年の20年間の、8月の東京における平均気温・平均の相対湿度・平均の絶対湿度の推移を統計で出してくださってるんですね。

このデータを見ると、確かに上がったり下がったりしてるんです。27.5℃が28℃になって、28.5℃が27.8℃に下がったり、また上がったり。でも平均すると、この20年間の8月の東京の平均気温は28.3℃。めちゃくちゃ暑いですよね。そして相対湿度はなんと75.2%。75%って聞くだけで気持ちが滅入ってきません?「なんちゅう湿気や」って感じになりますよね。

でもね、ここでこんがらがるのが「相対湿度のトリック」なんです。相対湿度というのは、文字通り「相対」なんです。どういうことかというと、空気1立方メートル(だいたい1kg)あたりに含まれる水分の量、つまり飽和水分量を分母にして、その時点で含まれている水分量をパーセントで表したものなんです。

だから、例えば気温が25℃で相対湿度60%だったとして、それが30℃になっても含んでる水分が同じなら、相対湿度は下がるんです。湿気が減ってなくても、パーセンテージが減るという現象が起こる。なので、実際の「湿気の重さ」で見る絶対湿度を見ないと、正しく判断できないというわけです。

この絶対湿度で見ると、2005年には1kgの空気中に17.3gの水分が含まれていたのが、20年間の平均では18.2gになっている。これも一見わかりづらいんですが、松尾先生がグラフにしてくれていて、上がったり下がったりしてる中でも中央値をとると、右肩上がりで概ね気温と湿度が推移していることがわかります。

1年ごとに、気温は約0.07℃、湿度は0.08gずつ増えている。これはなかなかのペースですよね。今35歳の人が10年後の45歳になる頃には、今よりもっと温度も湿度も上がった日本になってるかもしれません。

ちなみに、世界基準でいうと、人間が「蒸し暑いな」と感じる絶対湿度は12gだそうです。日本人は毛穴の数が多いのか、13gくらいまでは耐えられる人が多いみたいですけど、地域差もあるんですよね。僕の友人で北海道出身の人がいるんですけど、関西に来ると「なんでこんなに暑いんや」って言うんです。気温はそんなに変わらないのに、だるいって。だから「お前ら毛穴少ないんやろ」ってよく冗談を言ってます。

特に大阪は水の都ですから、湿気がすごいんですよね。そう考えると、西日本の人は13gの壁を越えても耐えられるかもしれませんが、東日本の人はちょっとキツいかもしれません。

そういう意味で松尾先生がおっしゃっているのが、ルームエアコンってだいたい26℃設定で、絶対湿度で言うと12.8gくらいをキープしてる。でもこれが13gを超えたら、エアコンを使ってても不快感が出る。それがエアコンの効きが悪いように感じられる原因なんです。

僕も昔、香港とかシンガポールに行ったとき、「なんかじめっとしてるな」と思ったんです。あれがまさにその状態で、気候に対する適応がしにくいということ。そうなるリスクが、これからの日本にもあるというお話です。

となると、エアコンにますます頼らざるを得ない。でも今の日本で主流の省エネ性の高いエアコンは、温度を下げるのは得意なんですけど、26℃に達すると止まっちゃう。省エネ性を優先するからですね。そうなると除湿が止まる。除湿させようとすると、風量を抑えて冷媒温度を下げることで電気代が跳ね上がる。

しかもこの2〜3年、エアコンの故障が増えたなと感じてます。昔は10年持つって言ってましたけど、最近は7〜8年、条件が悪いと5年で壊れることもある。沖縄の技術者の方と話した時も、「1年に1回業者に掃除してもらわないとすぐに劣化する」と言ってました。

冷媒管にピンホールっていう腐食の穴が開くことも多くて、だからエアコンはこまめに掃除しないといけないし、長く持たないというのが現実なんです。僕も「ほんまかな?」と思ってたんですが、気づけばここ数年、実際に故障の話をよく聞くようになりました。

そう考えると、夏の厳しくなる湿度対策は、これから本気で家づくりの中で考えていかないといけないなと感じています。温熱性能は断熱等級などで上がってきたけど、気密性能にはまだ明確な基準がない。気密が取れていない家は、湿気がどんどん入ってくるし、壁内結露を助長する恐れもある。

「気密が高いと息苦しい」とか、未だにそんな迷信もありますけど、湿気のことを考えたら高気密は必要なんです。松尾先生が今回の記事で提唱されていたのが、「換気を全熱交換型の一種換気にする」ということ。熱には顕熱と潜熱があって、顕熱は温度、潜熱は水蒸気。全熱交換型換気扇は、その両方を交換できるんです。

これまで冬のために取り付けることが多かったけど、これからは夏のためにも必要になってきた。費用は高くても、湿気の侵入を抑えて、エアコンの負担も減らす方向にシフトしていくべきだとおっしゃってました。

エアコンや除湿器で対応するより、全熱交換によって湿気を持ち込まないという手法のほうが、トレードオフとして優れているという考えです。

そして松尾先生が出した1つの答えが、「松尾式小屋裏エアコン バージョン3」。これは特許というわけじゃないけど、技術的にブラックボックスな部分もあるので、概要だけお伝えします。

ポイントは3つ。まず、素人でも掃除がしやすいエアコンの配置。これは僕も昔から知ってるエアコンなんですけど、手が入れやすくて、綺麗にできるんです。

次に、全熱交換型換気との組み合わせで、外からの湿気をなるべく取り込まずに冷房を効かせる方法。これによってエアコンの負担も減る。

そして3つ目が、「トルネックス」という電磁フィルターを使って、室内の空気に含まれるPM2.5のような微粒子を除去するというもの。全熱換気扇にもフィルターはあるけど、室内で発生するカビの胞子までは完璧には防げない。それをトルネックスが補ってくれる。

松尾先生は、設備メーカーが凝った設備を作るんじゃなくて、汎用性のある入手しやすい部材で、長く設備更新ができるようにという考えで設計されてる。これ、ほんと素敵だと思います。

実際に昨年の夏に見に行った物件では、外気温31.5℃、相対湿度58%、絶対湿度19gという湿気まみれの中でも、室内は22.3℃、相対湿度49%、絶対湿度9.6gという快適な環境でした。4〜5人家族程度なら、十分その環境が維持できるという実証結果もあります。

もちろん費用は増える部分もありますが、これから先鋭化していく日本の夏の高湿化に向けて、人が快適に暮らせるだけでなく、エアコンの寿命を延ばす方法としても、こういうやり方があるということを、ぜひ知ってもらえたらと思います。

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