「吹き抜けは後悔する」はもう古い。設計で引き出す吹き抜けの魅力。
今日は吹き抜けについてお話をしていきたいと思います。私たちは設計の中でよく吹き抜けを使っていて、リビングには基本的に設けるようにしています。ただ、このお話をすると、お客様から「吹き抜けは寒いんじゃないですか」とか、「音の問題が気になります」「夏は暑いですよね」といったネガティブなご意見をいただくこともよくあります。
もちろん昔のお家では、吹き抜けがデメリットになってしまうケースもたくさんありました。ただ、それは家の性能や間取りによる部分が大きくて、少し気をつけて設計するだけで、デメリットと言われていることがメリットに変わったり、それほど気にならなくなったりすることも多いんです。今日はそういったお話をしながら、吹き抜けならではの開放感や空気の流れなど、私たちの設計では欠かせない理由を一つひとつご説明していきたいと思います。
吹き抜けでよく言われるのが、「夏は暑くて冬は寒い」ということです。そういう印象を持たれている方も多いと思いますが、これは吹き抜けが悪いというより、一番大切なのは家の性能なんです。まず大前提として、HEAT20のG1やG2グレードなど、ある程度高い断熱性能が必要になります。そしてもう一つが気密性です。私たちも、ある程度の気密性能がないと空気がうまく流れなくなりますので、この二つの性能がしっかり確保されていることが前提になります。
少し難しい話になりますが、熱というのは暖かいところから冷たいところへ移動します。例えば部屋の中が涼しくて外が暑ければ、熱は外から中へ入ってきます。壁には断熱材や外壁材が入っていますが、性能が十分でなければ、目には見えなくても壁を通して熱が移動してしまうんです。
私たちは全館空調で「どこにいても同じ温度」を目指していますが、これがとても重要です。例えば一つの部屋だけが涼しくて隣の部屋が暑いと、熱は壁の中を通ってでも暑い部屋から涼しい部屋へ移動してきます。使っていない部屋だから冷暖房をしない方がもったいなくない、と考える方もいらっしゃいますが、家全体を同じ温度に保つことで熱の逃げ場が少なくなり、吹き抜けがあっても温度差がほとんど気にならなくなるんです。
そのため私たちは、どこにいても同じ温度にすることを基本に考えています。そのうえで、UA値で表される断熱性能についてはHEAT20のG2グレード以上、6地域であればUA値0.46以下を推奨しています。また、私たちはエアコン1台で全館空調を行っているので、吹き抜けを積極的に活用しています。
夏は冷たい空気は重たいので、小屋裏から吹き抜けを通して冷たい空気を下へ落としていきます。気密性が高く、各部屋には第一種換気もあるので、家全体に冷たい空気を循環させることができます。冬は床下エアコンで床下から暖め、暖かい空気をゆっくり上へ送り、リビングで暖まった空気を吹き抜けや階段室を通して2階へ届けます。こうした空気の流れをつくるためにも気密性能が重要で、C値は1.0以下、私たちは特に0.7以下を基準にしています。つまり、UA値による断熱性能とC値による気密性能、この二つが快適な吹き抜けをつくるための大前提なんです。
次に、とても大事なのが吹き抜けにつける窓です。性能が大事というお話をしましたが、性能が高い家でも失敗することがあります。その多くが吹き抜けの窓の付け方なんです。
吹き抜けは光を取り入れる目的が大きいので、できるだけ窓をたくさん付けたいと思われる方も多いんですが、このお家でご説明すると、南側にはしっかり窓を設けています。ここは明るさを確保するためです。一方で、西側には窓を付けていません。
明るさだけを求めると西側にも大きな窓を付けたくなります。もちろん冬は日差しが入って暖かいんですが、最近は冬より夏の方が過ごしにくいですよね。吹き抜けにたくさん窓を付けると冬はメリットがありますが、その期間は短く、夏は非常に暑くなります。特に西日は高度が低く、強い熱を室内に入れてしまいます。
そのため、一年を通して考えながら、どの方角に窓を付けるかをシミュレーションして設計しなければいけません。トリプルガラスだから性能が高いし大丈夫だろう、と西側にも大きな窓を付けてしまうと、壁に比べれば窓の断熱性能はどうしても低いため、夏は熱が入り、冬は熱が逃げる原因になります。吹き抜け設計で最も重要なのは、この窓の付け方なんです。
もちろん敷地条件や建物の向きによっては西側に窓を設けることもあります。その場合は必ずキャットウォークを設けたり、2階の廊下から窓にアクセスできるよう設計しています。アウターシェードやハニカムスクリーンを上げ下げできるようにしているんです。それだけでも吹き抜けの良さがさらに活かされ、デメリットを大きく減らすことができます。
では2階へ上がってご説明します。ここは寝室で、ここから吹き抜けへアクセスできます。南側に窓を設けているので、しっかり光が入ります。庇を90cmほど出しているため、夏は太陽高度が高く、直射日光を庇で遮ることができます。一方、冬は太陽高度が低くなるので、室内まで日差しを取り込むことができます。
ただ、9月や10月のようにまだ暑い時期は、太陽高度が下がるため庇だけでは防ぎきれない時間帯があります。そのため、私たちはアウターシェードを使います。外側で日射を遮ることでガラス自体が熱くなるのを防ぎ、室内への熱の侵入を抑えることができます。だから吹き抜けの窓にはきちんとアクセスできて、必要な時にシェードを操作できることが大切なんです。
冬になると、暖かい空気は吹き抜けを通って上がってきますが、夜になると窓から熱が奪われてしまいます。せっかく2階へ暖かい空気を送りたいのに窓から熱が逃げるため、「吹き抜けは寒い」と言われる原因になります。そこで私たちはガラス性能に加えて、ハニカムシェードを下ろします。蜂の巣構造になっているので空気層ができ、ガラスと室内の間にもう一層断熱材を入れるような効果があります。これによって熱の損失を大きく抑えることができます。
また、キャットウォークがあることでシェードの操作だけでなく、窓掃除も簡単になります。この家であれば外側も十分掃除できますし、下屋の屋根へ出て拭くこともできます。こうしたメンテナンス性まで考えて設計することで、吹き抜けはデメリットが少なく、快適な空間になっていくんです。性能だけでなく、窓の配置やアクセス方法まで考えることが非常に重要になります。
もう一つ、吹き抜けには大きなメリットがあります。それが光の取り入れ方です。この部屋は2階の北西角にある子ども部屋で、南側に面していないため、西と北の窓しかありません。西側は暑さを考えるとできるだけ小さくしたいので、そのままだと部屋が暗くなってしまいます。
そこで吹き抜け側に大きな室内窓を設けています。照明を消していても吹き抜けから光が入り、建具を開ければ1階リビングからの光まで届きます。昼間は照明を付けなくても十分過ごせるくらい明るい空間になります。吹き抜けに面した壁をガラスにしたり建具を工夫したりすることで、家全体に光を届ける設計ができるんです。
一方で、吹き抜けのデメリットとして音の問題があります。気密性が高い家は外へ音は漏れにくいですが、室内では音が伝わりやすくなります。このお家は家族みんながオープンにつながって暮らすことをテーマにしているので、建具を開けて生活すると1階の様子はよく聞こえますが、その分、一体感が生まれますし、暖かい空気も取り込みやすく、床下エアコン1台で2階まで十分暖めることができます。
もちろん暮らし方によっては音が気になる方もいらっしゃいます。その場合は吹き抜けをやめるのではなく、吹き抜けと部屋の間に収納を設けるなど、ワンクッション空間をつくることで音を和らげることができます。また、吹き抜け側の壁だけ吸音材や断熱材を入れたり、寝室や子ども部屋を吹き抜けから少し離して配置したりするなど、設計の工夫で十分対応できます。このあたりは設計士さんと一緒に考えていただければと思います。


