「1次エネルギー消費等級とは?」ZEH・HEAT20との違いを解説
今日は、お客様から受けた質問で、「最近、一次エネルギー消費等級という言葉をよく聞くようになったんですけど、それってどんなもので、大事なんですか?」というものがありました。そこで今日は、この一次エネルギー消費等級について説明するとともに、ほかによく聞くZEH基準やHEAT20といった、省エネ住宅で大事だと言われている指標との違いも含めて解説したいと思います。では、僕の板書を見ていただきながら話を聞いてもらえたらと思います。
この一次エネルギー消費等級が強く言われるようになったのは、2025年4月頃からです。4月からは、一次エネルギー消費等級を4以上にしなさいということが義務付けられました。そして昨年の暮れには、等級7・8という上位グレードまで制定されて、「断熱等級とか消費等級とか似てるけど、何が違うんですか?」という疑問を持つ方も増えています。
この話をするにあたって、省エネ性や断熱性能を表す代表的な指標が4つあります。1つ目が断熱等級です。これは熱の逃げにくさ、つまりどれだけ熱が外へ逃げないかを表すもので、UA値や外皮性能と呼ばれるものです。
次によく僕たちが話すHEAT20です。これは断熱性能と似ていますが、「冬にどれくらい暖かく暮らせるか」「実際に室温がどれくらいになるのか」という、人が感じる快適性を重視した考え方です。
そして今回のテーマである一次エネルギー消費等級は、家全体のエネルギー消費、言い換えれば燃費にランクを付けたものです。
さらにZEHは少し似ていますが、年間のエネルギー収支を表す考え方です。いわゆる「光熱費ゼロに近い家」と言われるような、年間で使うエネルギーと作るエネルギーの収支を見ています。
では順番に説明していきます。まず一次エネルギーという言葉ですが、何となく格好いい響きですよね。でも実際に意味が分かっているかというと、若いスタッフに聞いても「一次の側のエネルギーですか?」みたいな返事が返ってくるくらい、意外と分かりにくい言葉なんです。
何かというと、家庭では電気やガス、灯油などのエネルギーを使いますよね。でも、そのエネルギーは突然家に届くわけではありません。家に届くまでに、社会全体でいろいろなエネルギーが使われています。例えば灯油ならトラックで運ばれてきますし、ガスも液化天然ガスをタンカーで運び、さまざまな工程を経て届けられています。つまり、目の前で使うエネルギーだけではなく、そのエネルギーが届くまでに使われたエネルギーも含めて評価するのが一次エネルギーという考え方です。
例えば電気であれば、発電や送電の過程で当然ロスが発生します。そういったものも含めて、「自然界から最初に取り出したエネルギーはどれくらいだったのか」というところまでさかのぼって評価するのが一次エネルギーです。
一次エネルギー消費等級というのは、標準的な住宅と比べて、どれだけ省エネ性能が高いかを、家全体で評価した等級になります。冷暖房、換気、給湯、照明など、住宅設備全体を含めた総合的な燃費だと思ってください。
だから、「等級が高ければそれでいいんですね」と思われるかもしれませんが、実は断熱性能だけを上げても、この評価は上がりません。給湯器や換気設備など、住宅設備全体の効率を含めて評価されるからです。断熱性能だけをものすごく高くしても、一次エネルギー消費等級は上がらないことがありますし、条件によっては評価が下がることもあります。
逆に言えば、断熱性能はそれほど高くなくても、高効率設備や太陽光発電を導入することで、等級6や7になるケースもあります。でも数字は良くても、実際に住んでみたら寒い家ということもゼロではありません。だから、この指標の扱いは少し難しいんです。
そこで僕たちがよく使う、分かりやすい指標がHEAT20です。HEAT20は、冬にどれだけ暖かく暮らせるかを重視しています。UA値だけではなく、冬に太陽の熱をどれだけ取り込めるかという日射取得、夏にどれだけ日差しを遮るかという日射遮蔽、それから地域ごとの気候も考慮します。全国一律ではなく、兵庫県でも5地域や6地域がありますし、長野県のような寒冷地では4・3・2地域となっていきます。そういった条件を踏まえ、1日の室温シミュレーションを行い、本当に寒くないかを厳しく評価するのがHEAT20です。
そしてZEHですが、この10年くらいでいろいろな基準が次々と出てきたので、「もう何が何だか分からない」という方も多いと思います。ZEHはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で、年間のエネルギー収支を重視します。つまり、使うエネルギーだけではなく、作るエネルギーも評価するんです。年間で使うエネルギーから作るエネルギーを差し引いてゼロになれば、ZEHになります。だから個人住宅では、太陽光発電の影響が非常に大きいんです。太陽光発電を載せないと、ZEHを達成するのはなかなか難しいと言えます。
ただ、断熱性能や快適性は普通でも、太陽光発電をたくさん載せたからZEHでOKという考え方になると、本末転倒かなと思います。本当に住む人にとって有益なのかという視点は、ぜひ持っていただきたいです。
つまり、消費者の方に知っておいていただきたい本質は、「燃費の良い家」と「快適な家」は完全には一致しないということです。少し違うものなんだということを知っておいてください。
住宅会社によっては、高効率設備や太陽光発電で数字を作っているケースもあります。だから単純に一次エネルギー消費等級やZEHだけを比較するのではなく、その家が実際にどんな室温になって、快適性まで確認された設計になっているのかということを、ぜひ確認していただきたいと思います。
その上で、僕がお施主さんにおすすめする実務的な優先順位をお伝えします。
まず一番最初は断熱です。外皮性能と断熱性能がしっかりしていることが大前提です。ただし地域性がありますので、とにかく高ければいいというものではありません。6地域や7・8地域なのにパッシブハウス並みの性能が必要なのかというと、そこは議論が分かれるところです。ですので、地域に合った最適な断熱性能を目指してください。
次がHEAT20的な快適設計の考え方です。断熱性能さえ良ければいいという会社もありますが、HEAT20の考え方からすると、「全然そこまで考えてないやん」と思ってしまう家もゼロではありません。特に大事なのが日射計画です。冬は太陽の熱をしっかり取り込み、夏は窓から入る強い日差しを上手に遮る。この設計ができるだけで、家の快適性は大きく変わります。
そして、断熱等級や一次エネルギー、ZEHではあまり強く語られませんが、本当に重要なのが気密です。HEAT20でも気密性能について基準がありますし、施工ディテールまで含めて大切にしています。気密が取れていないと、冬は暖房が効きませんし、夏も同じです。
ですから、2番目はHEAT20的な快適設計です。その上で、今回の一次エネルギー消費等級で評価される高効率設備を考えます。そして最後に、太陽光発電や蓄電池を活用した創エネを考える。この順番で設計していくのが一番いいと思います。
つまり、建物そのものの基本性能で8~9割を解決して、足りない部分を設備で補うという考え方が理想だと思います。
さらに、本当に大切な視点があります。それは災害や事故で停電になった時です。僕自身の経験から言っても、設備性能だけではないなと思っています。地域によって復旧スピードも違いますし、災害時はみんな動転します。それに、一番設備に詳しいお父さんが出張中で帰って来られず、立派な設備があっても誰も使い方が分からないということも実際にあります。
そんな時に助けてくれるのが、家そのものの基本性能です。高気密・高断熱で、日射コントロールや通風までしっかり考えられ、建物自体の蓄熱性能も高ければ、設備が止まっても室温は急激には変わりません。室温の振れ幅が小さくなり、家族を守ってくれるんです。
だから最後にお伝えしたいのは、一次エネルギー消費等級について知りたいと思われた方には、単に等級を見るだけではなく、「実際に快適な家なのか」「長期的に安心して暮らせるのか」「停電時でも家が粘って家族を守ってくれるのか」という視点を持っていただきたいということです。その上で、こうした指標を活用していただければ、きっと家づくりはうまくいくと思います。


