タダの収納じゃ、つまらない。機能もデザインも妥協しない収納アイデア。
今日は収納についてお話をしていきたいと思います。
後ろにある収納はどういった役割があるんですか、ということなんですが、ここはまず1階で、リビングの空間になります。なかなかこういう場所にこんな収納を作ることは少ないんですけど、今回はコンパクトなお家ということで設計していますので、どうしてもここに1つ作りたかったというか、必要だったんです。僕たちは「デイリークローゼット」と呼んでいて、2階建てだろうが平屋だろうが、必ず1階に毎日着る服を置きましょうというコンセプトでやっています。だからこのモデルハウスにも、どうしてもそのデイリークローゼットを作りたかったんです。
場所はいろいろ考えるんですけど、今回はリビングの空間の中にあってもいいかなということで、チャレンジの1つとしてここに作っています。中を開けてみるとすごくシンプルで、ハンガーを掛けられるようになっています。ここに服を掛けて、下には収納ケースや引き出しを置いてもらうイメージですね。下着類はそっちに入れることが多いですし、小物とかTシャツなんかも下に収納できます。そこまで大きな収納ではないんですけど、毎日着る服って、実はそんなにパターンが多くないですよね。もちろんお洒落な方は別ですけど、お仕事に行くための服という感じなら、そこまで数が必要じゃない場合も多いかなと思います。なので、ご家族分の毎日着る服を1階に置いてあげるという考え方もすごくいいと思うんです。
洗濯機や乾燥機も1階にありますから、同じフロアで洗って、干して、しまうという流れができます。あまり着ないものは2階に置いておくという形でもいいと思いますし、干す場所も大事なんですけど、しまう場所って実はすごく重要なんです。その距離をなるべく短くしてあげることで、洗濯の時間を5分でも10分でも短縮させる。そういう考え方なんですね。
今回はリビングの中にある収納なので、デザインはかなり悩みました。その中で特徴的なのが、この「吊り押入れ」にしていることです。普通なら床まで収納を作った方が、深さも高さも取れるので収納量は増えるんですけど、ここはあえて吊りにしています。下まで収納にしてしまうと、どうしても圧迫感が出てくるかなと思ったんですね。でも、下が浮いているだけで空間って少し広く感じるんです。だから今回は、少しでも広く見えるようにという狙いで、この形にしています。
それと、下にスペースを作ることで、ここをルンバ基地としても使えるようにしています。奥にはコンセントも設置してあるので、ルンバをここに収納できるんですね。最近のルンバってドックがかなり大きいので、使う機種によって高さを変えることもできます。設計段階で調整できるので、「どの型を使いますか」というところまで考えて寸法を決めています。そうすることで、見えない場所に家電をきれいに収納できますし、例えば猫を飼われている方なら、もう少し高さを取って猫ちゃんのトイレスペースにすることもできます。匂いが気になる方は、裏側に換気扇を付けておけば、トイレの匂いを外に直接排気することもできます。こういうスペースって、実はすごく使い勝手がいいんです。
あと、今は少し分かりづらいかもしれませんが、下には間接照明も入っています。夜になると、向こう側からこちらを見た時に、光が空間の抜け感を演出してくれるんですね。少しでも広く見せる工夫として、今回はそういうことも取り入れています。
吊り押入れにすることで、いろんなメリットがあるんです。結局、何をどれくらい収納するのか、どこに設置するのかによって、収納のデザインや形って決まってくるんですね。そういうところまで考えてあげることで、小さく建てても広く暮らすことは十分可能なんじゃないかなと思っています。
それから、吊り押入れの左側に「押入れの弱点を克服しました」と書いてあるんですけど、それはどういうことですか、という話なんですが、押入れって昔から湿気がこもりやすいイメージがありますよね。今回はそのデメリットを解消したいと思って、有孔ボードを使っています。これは単なるデザインだけじゃないんです。もちろん見た目もかわいらしい雰囲気になるんですけど、穴が空いていて空気が通るので、湿気が溜まりにくいんですね。開けた時にフックを掛けたりもできますし、空気がちゃんと通ることで機能性も良くなっています。しかも見た目も軽やかでかわいい。
これは、リオタデザインの関本先生という有名な方がいらっしゃるんですが、うちの影山がその先生のお家を見学させてもらった時に、このデザインを採用されていたんです。それがすごくかわいくて、なおかつ機能性も良かったので、「ぜひ取り入れたい」ということで参考にさせていただきました。
収納1つ取っても、本当にいろんな役割がありますし、もしこれが普通の白い扉だったら、もっと壁っぽく見えて圧迫感が出ると思うんです。でも、有孔ボードを使うことで、抜け感というか軽やかさが生まれるんですね。ちょっとした工夫なんですけど、そういう積み重ねで空間の感じ方って変わってきます。いろんなアイデアを取り入れることで、家の風合いや印象も変わるんですよということです。
収納1つだけでも、こんなふうに細かいこだわりがたくさん詰まっているんですね。だから僕たちも、いろんなところを見て勉強させてもらっていますし、「これいいな」と思ったものは積極的に取り入れるようにしています。そういう経験を重ねていくことで、新しい発想もどんどん出てきますし、本当に扉1つ、形1つ取っても決まりがないというか、それが設計の面白いところかなと思っています。


