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ウクライナ危機が家づくりに与える影響とは?

今日のテーマは「ウクライナ危機が家づくりに与える影響」です。重いテーマですし、僕ごときの説明になりますが、今の時点での考えをお伝えしようと思います。

僕たちのいる住宅業界、工務店業界は、今、木材や資材が値上がりしています。
この1週間 だけでも、あらゆる資材屋さん・メーカーさんからの「○○の値段が○月から何%上がります」というFAXやメールがたくさん届いています。

2021年はウッドショックがありました。今も構造材・端柄材と言われている物の価格は上がり続けています。倍以上になったということもありました。ウクライナ危機による影響はこれから本格化すると思っています。

スケッチに書いたグラフを見てください。木材関係のシンクタンクが出していたものです。木材の輸入相手国を書いています。日本が仕入れている相手国の比率はこうなっています。
筆頭はカナダ (北米)が26%、次にロシアが16%、スウェーデンが15%、フィンランドが15%、チリが4%、 その他になります。

2021年のウッドショックは北米やヨーロッパの原産の木材の金額が高くなりました。
その中で言うとロシアは比較的優等生でした。北米やヨーロッパに比べると、そこまで値段は上がっていません。ところが今は、16%も輸入していたロシア材が現在取引停止になっています。

特にロシアの中のカラマツという木材は構造用合板の原料であることが多いです。
日本の市場の話をすると、今の家には構造用合板が使われています。ベニヤ板とかですね。厚みはいろいろですが、構造用合板なしでは家は建てられないです。今は少し前のクルーで入ってきた時のものをなんとか使っている状況です。これが段々なくなってきて「これからどうする?」という段階になっています。

建て売りの日本一の供給量を誇っている会社で、飯田産業さんという会社があります。年間1万棟以上と言われています。飯田産業さんは昨年「ウッドショックは我が社に影響はない」とおっしゃっていました。おそらくロシアとの間に強いパイプがあったのだと思います。これは戦争前の話ですね。ロシアの木材の会社も買って、ロシアの材料をガッツリ仕入れて「ウッドショックなんか関係ないように供給できる」と言っていたら、世界がこんな状況になってしまいました。

それ以外にも、いろんなフランチャイズのグループでロシア材を使っているところは、たくさん聞きます。少なくとも年間4万棟以上の取り扱いがある建て売りの業界は、これからかなりの影響を受けると思います。特にローコスト住宅のパワービルダーは影響が大きいと思っています。

加構造材などの値段が上がっている背景には、ウクライナ危機以外の要素もあります。2年ぐらい前からコロナウイルスによって、世の中が大きく変わっていますよね。このウクライナの危機は、そのスピードをより加速させていると思います。

不安をあおるつもりではないですが、今考える要素をざっと書いてみました。
まずインフレになりましたよね。数年前の日本の話になりますが、当時総理だった安倍晋三さんや日銀総裁の黒田さんは、日本をインフレに持っていきたいと考えていました。狙い通りにインフレになりました。その結果、今どんな状況かというと悪いインフレになっていると言われています。

物の値段は上がったけど、それにつれて給料はまだ上がっていません。こういうのはスタグフレーションと表現されます。当面デフレに戻る見込みはなくて、悪いインフレが定着しそうという状況です。その結果、金利の上昇が顕著になっています。

アメリカ政府は金融の引き締めで金利を上げていて、それにつれてヨーロッパも金利を上げています。低金利というのが15年以上続きましたが、このあたりで金利は上がっていくのかなという気がしています。

実際日本でも変動金利と言われている、短期のプライムレートで動いているものに関しては、金利は相変わらず低いです。一方で長プラと言われている20年超の借り入れに関しては金利が上がっています。 2%台になりました。1%とか1%切る時代が長く続いていました。ということは、今、日本からはお金がどんどん逃げているということになります。
金利のいい国に行くのは当たり前ですよね。なので、日本もどこかのタイミングで金利を上げざるを得ないと思います。

もう1つ大きな影響だと思うのが働き方改革です。改革自体は悪いことではありませんが、これが起きた背景には人手不足と高齢化があります。特に僕たちの現場では、職人さんの高齢化がすごい勢いで加速しています。

また、今までも言ってきた内容ですが、円安が加速していますよね。つまり輸入のコストが上がるということです。

最近の日本は輸入国です。生産は中国や東南アジアが中心になっていますよね。円安となると仕入れる方には不利になる内容です。ウクライナ危機によってさらに加速しました。

この15〜20年間、日本の国は家を安く買えた期間だったということです。逆を言うと、これから家はもう安く買えないということになります。

安く買える状況を牽引したのはローコストのパワービルダーさんでした。素材や性能はそこそこの物だけど、その分、価格を抑えて買いやすくしたのがポイントだったと思います。ここも今は省エネ性の高い家をやろうということで取り組んでいますが、ZEHや長期優良住宅ほどでもないというお家が多いです。性能はそこそこなので。となると、これからの時代に、いままでの供給スタイルが合わなくなってきています。

金利についても考える必要があります。この十何年というのは金利が本当に安かったです。僕たちの孫やそれより未来の世代は、おそらく歴史の本か何かで「そんな金利の時代があったんですか?」と勉強すると思います

そこそこの性能で安い値段、そして金利も高くなく、経済的に過ごせた時代が完全に終わるというのが、今回のウクライナ危機が家づくりに与える最も大きな影響だと思います。

こういう話を若い子たちにすると「じゃあローンを借りてまで家なんか建てなくていいですよね。僕は一生賃貸暮らしをします」と言われます。

若ければそう考えるよなぁと感じます。でも僕の知り合いの60歳以上の夫婦で、ずっと借家暮らしをしてこられた方の話で驚いたことがあります。「次の更新の時は退去してもらえませんか?」と言われたことがあるようです。

賃貸と言うと日本では、若い夫婦が、子どもが生まれるまでに住む場所というイメージが強いです。オーナーさんたちもそういった方々をターゲットにしています。シニアの方が一度住まれると、なかなか引っ越しする機会ってないですよね。

「それがどうして悪いんですか?」と思うかもしれませんが、借家経営で立地の良い所だったら人が回転する方がいいという側面があるんです。

本当に悲しい話ですが、老夫婦が住んでいる場合、入居中にどちらかの方が亡くなられるということがありますよね。病院に行って亡くなられるケースも多いとは思いますが、大家さんの気持ちになると、自分の貸している家で人が亡くなったとなれば、そのことを気にして次の入居者が決まらない可能性もゼロではないですよね。

なので「一生賃貸暮らしができるのかな?」「自分の思い描いた通りに生きられるのかな?」と考える必要があります。

僕はお金を上手にコントロールできるのであれば、家を持つということは、自分たちの老後を守っていくための手段になると考えています。僕が工務店の親父だから言っているのではありません。その上で絶対の解決策ではありませんが、こんな方針を1つ立てることはできると思います。

何度かお伝えしてきた話ですが、50年以上住めるのは当たり前です。その上で、50年後、誰かに譲ることができる、価値が大きく落ちない家を建てることが重要だと考えています。

素材や性能はそこそこの家でも50年は持つかもしれません。ですが、それ以降の時代だと、まだ住めたとしても価値ある家として売却できる、住み継いでもらえるかで言うと、これからの時代はかなり吟味が必要だと思います。

また今までは大きめの家に関する憧れが強かったですが、今後は小さくても暮らしやすい家がいいと言う人が増える気がします。

僕の子どもの頃、日本の家はウサギ小屋とか言ってバカにされていました。それを当時の人が発奮して脱していきました。ウサギ小屋に戻るということではなく、小さくても暮らしやすい家について、今は、もう1度考えるタイミングなのだと思います。

省エネ性の高い家ということで、断熱性・気密性を高めて光熱費をなるべく抑えることも大事です。こうした環境のいい家に住んでいると病気になるリスクも減るので、医療費も抑えられるというデータがあります。

リノベーションも活発になってくると思います。日本の家は時間が経つと価値がなくなると言われていますが、構造とか断熱を担保できれば住み継いでいくこともできます。

お金のリスクヘッジについては、2世帯住宅を建てて、親子間でコストの負担を分けるというのもありますし、都市部の狭小地を活用する手もあります。小さくて暮らしやすい家を希望されるなら、決して悪くない選択です。

これまでは郊外の造成地に、ローコストパワービルダー家を建てて、そこに住むというのがトレンドでした。でも国力が相対的に減っていくので行政のサービスも手薄になります。コンパクトシティという言葉は、外に広がった街を中心に戻していくという概念です。その中心で賢く住むことに対して意欲的になるというのが、これからの家づくりのトレンドになると思います。

まとめると4つのキーワードが出てきます。
まず高性能であること。地震に強く、冬は暖かくて夏は涼しく過ごせるのは当たり前ということです。
2つ目が素材と庭。50年経っても古びない、劣化しないものには使う素材が関係しています。コストは結構掛かりますが、長い時間を経ても価値が落ちにくいということにつながります。また庭を無視した家で魅力を作るのは、なかなかむずかしいところがあります。(ここでも素材が関わってきます)
3つ目がプレーンなプランであること。自分のこだわり満載でもいいですが、これからは他の人が見たら魅力的かどうかという視点も必要です。
4つ目がコンパクトであること。大きくすることより、いかに小さくまとめていくかを考えるということです。

長期的な視点で言うと、ローコスト住宅も決して安いとは言えなくなっています。ただ単に予算がないからという理由で、家を安く建てるよりも、ひょっとしたらある程度の素材をしっかり使って価値あるものにすることの方が、自分の資産としては目減りがないという結果につながるかもしれません。

家づくりというのは複雑になっていきます。そのとき僕たち工務店の人間は、どうやって形にするのか統合させていく作業というのが一番の仕事になってくるのではと思います。

偉そうで難しい話だったと思いますが、これからの家づくりに必要な視点として聞いていただければと思いながら話をさせていただきました。

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