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トリプルガラスを使う基本を確認する

今回はトリプルガラスについて解説します。

多くの人がトリプルガラスの窓について説明されているので、今更それ以上に話があるの?という感じもあると思いますが、今回はあえて基本的なことをもう1回確認しておいた方がいいと思い、そういう視点で解説します。

今回この解説をしようと思ったきっかけがあって、それはあるお客様からの質問でした。ご夫婦のお客様で、窓の模型を並べながら解説していく中で、女性の方が「トリプルガラスはすごくいいと聞くけど、トリプルガラスにすると付随する壁の中で結露する可能性が高まるという話を聞いた」と言われたんです。

私にはちょっと何をおっしゃっているのか意味がわからなかったので、話を詳しく聞いて、解説すると安心していただけたことがありました。誰かの話を聞いて、疑問に思われたり不安になられた方もいると思うので、今回こんな話をしようと思いました。

トリプルガラスというのは、窓のガラスの組み合わせのことです。昔の窓ガラスは、文字通りガラス1枚でガラス障子ができていましたが、ガラスは断熱的に弱いので結露を起こすから、ペアガラスが世の中に出てきました。ガラスとガラスの間にスペーサーという突っ張りがあって、中には空気層があって、乾燥空気・〇〇ガスなどが入ったものです。

しかしペアガラスだけだと心許ないので、より高い性能を求めて出てきたのがトリプルガラスです。ガラスが3枚で、空気層・ガス層が2つできるものです。

トリプルガラスのメリットでよく言われているのは、まずは断熱性能が高いことです。1枚ガラスと比べたら素晴らしく高いです。そして、断熱性能が高くなった恩恵として、ガラス面の結露がとても少なくなりました。また、ガラスが3枚で空気層が2つになるから、音抜けも小さくなって遮音性が高まりました。さらに、1枚より2枚・2枚より3枚と、泥棒が割ろうとしても割り切れない・割れにくい・時間が掛かるようになり、防犯性が高いこともメリットとして言われています。

こんなメリットがある一方で、トリプルガラスを採用しないケースもあります。その一番のデメリットが、コストが高いことです。いろんな会社のいろんな考え、いろんな販売の仕方もありますが、ペアよりも40〜50万円高くなるとか、元の仕様が低かったら100万円ほど高くなることもあります。

次に、ガラスが重たいことです。特に大きい窓のガラスはとても重たいです。掃き出し窓と言われる、出入りができるような引き違いの大きい窓は、大人1人で持つのは怖いです。特に一軒半のような大きい開口の引き違い窓なら、4人ぐらいで持たないと危険です。素人が扱うとなると、ちょっと外して洗うこともしんどい重さだと思います。

なので、出入り口窓では開ける時に重たいから、力の弱いおばあちゃん・か弱い女性・子どもだったら開けにくかったり、全然開かなかったりすることがあります。

また、設計的判断でトリプルガラスを全部しないという判断もあります。それが「全ての窓をトリプルガラスにした方がいいですか?」という質問の答えになりますが、私たち設計者は「あなたが家を建てる場所の省エネ基準の地域区分にもよります」と言います。また同じ省エネ区分の地域でも、近隣の状況・地形によっても変わります。家がどんな風に建っているとか、山・大きな木があるとか、そういうことによって判断が分かれます。

まず省エネの基準の地域区分については、日本を8つの分類にして考えます。1・2は、北海道みたいなとても寒いところ、7・8は九州・沖縄など、暑いぐらいに暖かいところです。3・4は東北ぐらいで、長野は2・1とかの所もあるかもしれません。本州の多く人が住んでいるエリアは5地域・6地域と言われます。

すごく寒い・暑い所に関しては、1・2地域などの寒い所は基本的にトリプルにした方がいいと思っています。一方、5・6地域については地域によると思います。

5・6は温暖な所なので、基本的に太陽が冬場によく当たります。もちろん5・6区分でも太平洋側と日本海側で日照時間は異なりますが、太平洋側なら絶対に、南の窓にたくさんの太陽光を採った方が、家としては有利です。

例えば北海道で、外部が-10℃、室内が20℃ぐらいだったら、外気と室内では30℃の温度差があります。30℃も温度差があるなら、トリプルにしておく方がいいと思います。

本州の5・6地域だったら、外部の冬場の温度でもせいぜい0℃ぐらいです。0℃と20℃だったら温度差は20℃なので、これぐらいなら南にペアガラスでもいいと思います。

実際私が家づくりをさせていただくお客さんは、特別な事情がなければ、南をペアガラスにして十分な日射を獲得して、冬場の暖房費を節減していく方針にしています。

一方で「近隣住居の地形によって判断が変わる」というのは、例えば6地域で太平洋側でも、大きな建物の影になってほぼ冬の日射取得が期待できない時はトリプルの方がいい、などということです。日射取得が期待できないのなら、暖房した熱をなるべく外に逃さないように、断熱性能の高い窓を選んだ方がいいです。

冬期に日射利用ができるかどうかによって、全部トリプルでいくべきなのか、一部ペアでもいいのか、判断が分かれてくる感じです。

5・6地域でよく言うのは、南には大きな窓がくることが多いのでここをペアにして、東・西・北には比較的小さい窓をもってきて、これはトリプルにするようなことが多いです。

そして、さっきコストが50万・100万円するという例を出しましたが、価格を釣り上げるのは大きい開口の大きいガラスです。ですからそこをペアにして価格を押さえて、小さい窓はトリプルにすると、値段はボンとは上がりません。1軒の家で10万円ぐらいのアップでも、トリプルのいいとこ使いで利用できます。

しかし同時に、南の窓は日没したら寒くなって、家の中で暖房しても熱が逃げます。その時は、雨戸・シャッターを閉めるとか、厚手のカーテンを引くなどして対応します。私がよく勧めるのはハニカムスクリーンを使うことです。提灯みたいにビヨンビヨンと伸びて、中が筒状で空気層の塊が連続した感じのものです。それでガラス1枚分ぐらいは十分補えます。

また、Low-Eガラスと言って、表面に特殊な金属膜があるものがあり、今のものはほぼそうなっています。この金属膜を、ペアガラス・トリプルガラスのどの位置に使うかによって、種類が分かれます。

例えば、日射取得型と言って南の方で積極的に日射を取りたい時は、ダブル・ペアなら外側が普通のガラスで、室内側のガラスの内側に金属膜を作るのがいいとされます。これによって、日射はある程度取り込むけど、室内側のガラスは温度を逃がさないようになります。

一方、日射遮蔽型もあります。例えば西日が嫌とか、北から熱が逃げていくのも嫌な場合は、外側のガラスに金属膜を作って、外からの太陽熱は反射する感じです。

大体この2つのパターンで、日射取得型を断熱タイプなんて言い方をするところもあります。メーカーによって呼称は変わりますが、機能は一緒です。

トリプルガラスの場合は、メーカーによっていろんな組み合わせがありますが、例えばクリアタイプという名称のところもあったりして、トリプルの両端のガラス両方に金属膜がついている日射取得型があります。日射遮蔽型はグリーンタイプ・ブラウンタイプと言って、カット・跳ね返しが強烈なものを使っているものがあります。

「トリプルガラスばかりにするしかないんですかね?」という問いに対しては、あなたの住んでいる地域と近隣状況によって効率解が変わるという事だけは、覚えておいてください。これは設計のプロに相談して決めてもらうといいと思います。

最後に、冒頭の話に戻りますが、人から聞いたその論理について「どんな風に言っていましたか?」と聞いたところ、このような理論でした。

例えばシングルガラスで結露しまくっていた家で、寒いから窓を入れ替えてトリプルにしたら、窓の性能は上がり、結露はある程度止まります。しかし、窓で結露して水に変わって下に落ちてくれていたものが、目に見えない壁の中で起きる危険があるから、トリプルは安易に使ったらいけない、という話をされたそうです。

それを聞いた時に「それってただ怖がらせるだけかな」という印象がありました。

例えば、壁に全く断熱が入っていない昔の家で、窓だけトリプルにしたらそういうことが起こる可能性はあります。壁の断熱が全然ない場合は、壁の中で結露が起きる可能性はあります。大体そういう家は、気流止めみたいな下からの冷たい空気が入らないようにする栓がないことがあるので、確かに結露が起こる可能性はあります。

しかし冷たい風が壁の中に入っていくので結構すぐ乾くし、そもそも外気と壁の中の温度差がほぼないので、結露の起きようがないと思います。中途半端な断熱材が入っていることを想定しているのかなと私は思いました。

ここで、U値とR値という考え方を知ってほしいのです。

U値とは熱貫流率で、単位はW/㎡・Kです。1つの面積あたりで1℃上げるため・下げるために、どういう熱の移動があるかを表したものです。これは数値が小さければ小さいほど断熱性能が高いと思ってください。

一方で、U値の逆数をとったもの(1/U)で、R値、熱抵抗値という指標もあります。これは文字通り断熱の強さで、数値が大きい方が断熱性能が高いです。

例えば樹脂枠でトリプルガラスだと、U値は大体1.0で、R値に換算すると1です。樹脂枠でペアガラスだと、U値は1.7ぐらい、R値が0.59です。アルミ樹脂複合枠のペアガラスでは、U値2.4、R値0.42ぐらいで、アルミ枠とペアガラスだとU値は4.6ぐらいです。

1とか0.5とか言うけど、それがどんな感じなのかを簡単に説明します。「R値が0.59」と言って「あぁそんな感じですか」とわかるのはプロだけですから。おそらくいつも考えていない技術者でも、検算せなアカンぐらいのレベルだと思います。普通の人が頭に入っているわけないと思います。

それを直感的にわかっていただくために私が書いてみたのは、グラスウールとの比較です。一番汎用的に使われる断熱材の、16Kという結構密実でいいやつで比較します。これを10cmの厚みで使った時のR値は、2.6と言われています。

これで比較すると、壁が10cmの厚みだった時にトリプルガラスは何mm分なのかというと、38.4mm、3cm8mmぐらいのグラスウール換算になります。「最強の断熱窓でグレートだぜ」と思っていた人は、「意外とそんなものなのか」と思いませんでしたか?私が昔グラスウール換算した時にも、トリプルでもやっぱり窓って逆転なんだと思いました。

これが樹脂枠でペアガラスだと、22.6mmぐらいです。アルミ枠でペアガラスでは、ペアガラスでも8.4mmで、1cmを切るんです。ペラペラの夏布団みたいなものですよね。

そう考えた時に、「中途半端な断熱しかしていない」と言っても、38.4mmぐらいはないですか?それは突き詰めたら人生いろんなことがあるし、現場では起きているから絶対とは言いませんが、トリプルガラスはそんな使い方でめちゃくちゃ注意喚起せなアカンほどでもないのかな、というのが私の主観です。もっとカチッとした話だったらそれは議論がありますが、あんまり現実的ではないとも思います。

トリプルなら断熱性能があるから、ごちゃごちゃ思うんだったらつけたらいいと思うんですけど、ただせっかく南に大きい窓があるのなら、それも使い方だけはちゃんと考えないと損するというか、居心地が薄れることもあるから注意してね、ぐらいな感じで聞いてもらえたらと思います。

このことを知っておいてもらったら、トリプルガラスにすべきか、一部ペアでコストを下げてもいいのかというのは、ある程度の指標になってくると思います。ぜひ参考にしてください。

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