Q&A:北陸地方で高性能住宅を建てたけど「夏カラっと涼しくない」何とかなりませんか?
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私の動画をいつもありがたいことに見ていただいている北陸のある方から質問をいただきました。たまたまタイミングが合ったので少しやり取りをさせていただいたんですが、答えになったかどうかはわかりません。ただ、同じようなことで悩んでいる方も多いんじゃないかなと思いましたので、そのやり取りをテーマに今日はお話をしたいと思います。
ご相談の内容は、日本海側の北陸地方で高性能住宅を建てたんだけど「夏にカラッと涼しくならない。これ、何とかならないですか?」というものでした。みなさんの家づくりや暮らし方にとって少しでもプラスになればと思います。メールでのやり取りなので詳しくはわからないんですけど、素敵なご夫婦が今年の春に家を完成されたようです。地域は僕たちが住む温暖な6地域ではなく、4または5地域ということなので、少し寒いところというイメージですね。5地域だったら僕たちとあまり変わらないかなと思います。建てられた家の性能はUA値0.45、C値0.1。断熱等級でいえば5等級、HEAT20でいうとG1くらいでしょうか。数字だけ見るとしっかり性能を確保されていて、快適に過ごせる家なんじゃないかと感じます。換気は第一種で熱交換率80%くらい。1階リビングには200Vの18畳用エアコン、ダイニングには2坪強の大きな吹き抜けがドーンとあるという作りです。
ただ、この方はエアコンの冷たい風が直接当たるのがあまり得意じゃないみたいで、温度設定は27.5〜28℃にして運用されているそうです。それでも相対湿度が70%を切らないとのこと。絶対湿度に換算すると16gくらいです。一般的に絶対湿度が13gを超えると除湿をしないと暑い、11〜12gくらいになるとカラッとして快適に感じる方が多いです。僕のような暑がりのおじさんでも12gくらいになるとカラッとしてるなと感じますから、寒いのが苦手なスマートな方なら余計に不快に感じられるんじゃないでしょうか。工務店さんも相談には乗ってくれているそうですが「他の家ではそんな話は出ないんですが…」と難しさをにじませつつ、それでも解決したいと僕に「何か知恵はないですか?」と聞いてくださったわけです。
工務店さんから「1台で運用していたけどもう1台つけましょう」と言われて増設されたそうですが、それでも湿度は70%を切らず「せっかく2台回したのに」と思っておられるそうです。「もっと強力なエアコンにした方がいいんでしょうか?」とも。図面をいただいたわけではないので僕の想像ですが、リビング・ダイニングに吹き抜けがあって、2階には子供部屋と寝室。寝室は建具を開けると吹き抜けホールにつながっている。1階の南側に18畳用エアコン、補助のエアコンはその辺りにつけられているのかなとイメージしました。
このお施主さんは勉強熱心な方で「再熱除湿型のエアコンなら除湿した後に空気を少し暖めて出せるので、冷風が強すぎず湿気も落ちやすいんじゃないですか?」という質問もいただきました。それに対して僕は「今時の優秀なエアコンほど、温度が達したらすぐ止まってしまうのでこういう現象が起きやすいんです」とお伝えしました。27.5〜28℃に設定すると、その温度になった時点で止まります。湿気が十分に取れないまま止まってしまうので、湿度が高く感じられるわけです。
さらに、このお家は第一種換気で熱交換率80%あるので、仮に低めに見積もっても50〜60%の湿気を取って室内に入れているはず。それでも湿度が下がらないのは、日本海側という地域性もあるのかなと思います。冬は雪深く、夏も湿気が多い。だからエアコンを2台回しても湿度が残ってしまうんでしょうね。そこで僕が提案したのは少し荒技なんですが、2台のうち1台を冷房、もう1台を暖房にしてみるという方法です。熱を加えることで冷房側のエアコンが「まだ熱がある」と判断して動き続ける。冬に暖房すると空気が乾燥しますよね?あれと同じで、結果的に湿気を飛ばしてくれるんじゃないかなと思うんです。
もうひとつは「南の窓からあえて熱を入れる」という方法。リビングの大きな掃き出し窓は日射遮蔽が効いていて日が入りにくいけど、吹き抜けのFIX窓からは熱が入る。そこからの熱をどうにかして利用するという考え方です。大切なのは「エアコンが湿気を取り続けるためには、止めないこと」。そのためにはある程度の顕熱、つまり熱が必要なんです。熱が入らないとエアコンは休んでしまう。だから何らかの形で熱を加えて、動き続ける状況を作るのがポイントです。
現実的には「もう1台のエアコンを少し暖房で動かしてみる」とか「2階の熱を下に引っ張る工夫をしてみる」とか、そんな実験からでもいいと思います。もしそれでもうまくいかなければ、再熱除湿タイプのエアコンを導入するか、ダイキンさんの「カライエ」という除湿専用機をプラスするのも選択肢です。カライエは相対湿度センサーを持っていて、50%設定にすればそこまで動き続けてくれます。相対湿度を基準に制御するので、しっかり除湿してくれるんです。
さらにお金をかけてもいいなら、2階の寝室のエアコンを活用する方法もあります。寝室には熱がたまりやすいので、そこでエアコンを動かせば除湿された空気が2階ホールにたまっていくかもしれません。ただし吹き抜けの手すりが腰壁タイプだと空気が落ちにくいので、格子にするとか開口を広げる工夫も有効です。最終的には「上にもう1台つける」方が除湿の効率はいいと思います。
結果的にこのお施主さんは「再熱除湿タイプを導入して、必要ならカライエも検討しようかな」とおっしゃっていました。僕もこれから改善に取り組まれる中で勉強させてもらえたらと思いますし、また情報交換させてもらえたら嬉しいです。
これから新築を建てられる方にお伝えしたいのは、エアコンの設置場所をよく考えてほしいということ。上につけると冷房は効きやすいですが、暖房には工夫が必要です。下向きに吹き出せば1階の快適性に貢献しますが、基本的には夏向き。だから「湿気をしっかり取るためにはエアコンを止めない工夫が必要」なんだということを覚えておいてください。ルームエアコンは止まるとフィンにたまった結露水を再放出してしまうので、いたちごっこになります。だから止めないで動かす。そのための熱の入れ方を考えると、きっと解が見つかると思います。
秋口になってきたので「もう夏の湿気の話はいいわ」と思う方もいるかもしれませんが、もし「来年に向けてエアコンをプラスしようかな」と思っている方は、秋の新モデル切り替え時期に買っておくのもいい方法です。安く手に入れられれば、来年慌てずに済みますから。
最後に、僕も毎回しゃべるネタに悩んでいるので質問をいただけるのは本当にありがたいです。概要欄に会社の問い合わせURLを貼っておきますので、何か聞いてみたいことがあればぜひ入れてください。個人情報はきちんと管理しますので安心してください。YouTubeコメント欄でもいいですが、個人情報や長文にはメールの方が向いていると思います。当事者同士のトラブルには答えられないこともありますが、できる範囲でやり取りさせてもらいます。
これからQ\&A形式も積極的にやっていきたいなと思っています。素朴な疑問でもマニアックなことでもかまいませんので、ぜひぶつけていただけたら嬉しいです。そんな感じで、いつも家づくりについて解説していますので、よかったらチャンネル登録をしてみてください。