Q&A:玄関で壁をへこませたり切り欠いたデザインのメリット・デメリットとは?
今日も私どもの方に視聴いただいている方からの質問を肴に、お話をしていきたいと思います。どういう質問かと言いますと、「玄関の壁を凹ませたり、切り欠くんですか。削いだようなデザインが最近とても多いんですけど、こういうデザインを取った時のメリットとデメリットは何だろう」という質問になります。
正確にその質問者の方の言葉をそのまま再現すると、「玄関デザインで疑問があります。最近よく壁面を少し凹ませたり、建物の角を切り欠いたような場所に玄関を設置するケースをよく目にします。あれって表面積が増えたり、構造が複雑になって大変じゃないかと思うんですが、プロから見たメリットとデメリットを教えてください」という質問になります。
まず一般的に回答すると、僕、パパッと書いてみたんですけど、こんな感じで入り隅の玄関とか、建物の一部にインナー玄関とか、アルコーブ玄関といった、へこませた玄関のことをおっしゃるんだと思うんですけど、メリットとしては、玄関が入り隅なので雨に濡れにくいとか、ドアがストレートに開いて道路から丸出しにならないとか、高級感が出るとか陰影が出るとか、宅配時にも使いやすいことが大体言われます。
デメリットは、この質問者がおっしゃっているように、外壁の面積が増えるし、入り隅、出隅という言葉があるんですけど、建物って入り隅の隅とか、出っ張った角は増えれば増えるほどコストが増えるし、現場は納まりが難しくなるので、雨仕舞いという防水も難しくなります。当然、それを加工するための構造も複雑になるということで、必然的にコストアップになるのは、おっしゃるようにデメリットになると思います。
今回、その質問者の方はプロから見た視点を期待して聞かれているので、プロから見た視点になるかどうか分かりませんが、森下的な視点で言うと、まずは玄関を目立たせないということだろうと僕は思うんです。目立たせないようにして目立たせるという、逆説的なことを言ってもいいかもしれません。奥の立派な建物って、玄関にポーチがあって、屋根が出ていて、玄関扉が豪華な建物があると思うので、そこに目立たせるという概念が強いと思うんですけど、逆にへこませることによって玄関ドアが見えなくなり、ちょっと謎めいて見えるというんですかね。その結果、家が自己主張の強い派手な感じより、落ち着いた感じに見えることはあると思います。
なので、豪華絢爛で外に開かれた玄関が迎えるデザインであるとすれば、こういうようにへこませたり切り欠いた玄関は、迎えるは迎えるんですけど、お客様をゆっくりこちらへ誘っていく、そのような意図が盛り込まれているのが一つ大きいのかなと思っています。人はいろいろ、リッチな感じとか高級な感じとか、味わい深さを感じる一つの物差しの中に、陰影というのが結構ありますよね。陰影がしっかりあると、質の高さとか奥行きとかを感じるんです。
例えば、人の写真もポートレートとか、よく写真を撮るじゃないですか。その時、例えば白黒の写真で光をいっぱい当てて、つるっとした感じで撮っている写真より、男性はシワの陰影が出ている方が、その人の深みとか、持っている強さとか、あたたかさが分かったりすると思うので、そういう陰影がすごく大きいんです。のっぺり見えず、影が生まれることで、美しい写真はその影を生かして表現する。つまり、デザインをしている。人としての人格をデザインしているところがあるように、美しい家も陰影によってデザインされています。これが2つ目の着眼点にあると思います。
それから、玄関は家の機能としては境目なんです。境界線の境目です。だから玄関は、外と内をつなぐところで、外でも内でもない境界線になります。よく言う中間的な境界線の部分になるでしょうし、そういう玄関は倉庫のシャッターとは違います。来る人や家族が、心が整うというか、落ち着くような心理的作用もあるので、そういう空間をうまくつくることです。4つ目ですが、この動画は今、夏に撮っています。とにかく暑い夏の日差しが、玄関ドアが剥き出しになっていたら、玄関ドアは結構焼けます。
特に夕方の西日による玄関ドアの暑さは、夏はたまらないんです。これをへこませることによって和らげる効果もあります。それから、へこませるので当然、庇と組み合わせてやっていくんですけど、これは雨除けにもなりますし、同時に庇と周りの壁の空間で風よけにもなるんです。風の強い日にドアを開けて、いきなり風が入ってくる経験があると思うんですけど、これを和らげることがあるから、例えば風の強い日に外から帰ってきたり、雨風が強い日に帰ってきた時に、そういう空間なら入りやすい。
玄関の中がべちゃべちゃになるとか、風で落ち葉が入りまくることはありません。そういう面もあると思います。それから、防犯にも効きます。ストレートに見えるものより、正面からずれていることで丸見えにならないし、何より人が入ってこないような安心感が住み手の方にはあると思います。
それから僕もそうですけど、自分の買い物のおそらく7割ぐらいが通販です。ネットで買っています。欲しいものがあったらネットで検索して、それで買わないと買いに行く暇がないので、そうすると置き配や宅配ポストは、こういうへこんだ空間なら置き配してもらいやすいし、安心感もあるし、宅配ポストも置きやすくなると思います。
最後に、昔にご紹介した話ですけど、飯塚先生の『間取りの方程式』という、僕たちプロの中でもすごく素晴らしい本があります。この本の中で、建物を美しくデザインする手法として、豆腐をこうする、豆腐を一つの塊として扱うという例からご紹介すると、こんな感じです。これの中にいろいろあるんです。例えば、穴を開けるとか、面をずらすとか、分けるとか足すとか、面を取るとか切り取るとか、今日の質問者の方がおっしゃった通りのことを飯塚先生がおっしゃっています。これが実は、今の建物や都市部の限られた敷地で、大体、総2階のシルエットになると、一つ間違ったら倉庫みたいな家になるじゃないですか。
キューブ型の建物がいいという人もいますけど、それでどうなんかなって思うので、この総2階のシルエットとか、この矩形のスクエアなものは個性を出しにくいし、内と外との曖昧な空間を一箇所、家に持つことを考えると、この手法で切り取ったり、へこんだりしたところに、そういう空間を生じさせやすいので、そのメリットにつながっていくということです。これも非常に面白いです。いつも体系的に教えてくださるので、本当に心地よい光とか風とかを、いかに家のデザインに取り込むかということの、本当の基本中の基本で、かつ最も奥義というかコツというか、そういうことにもなっていくと思います。
なので、プロから見たメリットとデメリットは、そうすることによって、玄関は単なる出入り口ではなく、家と社会や外との境界線になるという視点で考えると、その意味がもっと立ち上がってくるということかなと思います。なので、ぜひご自分たちのお家を計画する時に、間取りから考えるのではなく、コストを考えたら何坪ぐらいの面積に納めなアカンなというのがあったら、建物の形ができた時に、次に大体こんなシルエット、こんな縦、横、高さを想定したら、次はこの空間をちょっとずらしてみたり、削ってみたらどうなるかというのをやってみてください。
飯塚先生によると、これを2箇所ぐらいまでやると、複雑にならず、コストアップもせず、非常に豊かな空間になるという教えがありますので、ぜひそういう視点で、このデザインのメリットとデメリットを考えていただきたいと思います。

