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パッシブ設計の基本を解説します

今日のテーマはパッシブ設計についてです。

家づくりをしっかり勉強されてる方は、すでに知っている言葉だと思います。一方で、僕の先入観かもしれませんが、僕より年上のお客様に「パッシブ設計」のことをお話すると、興味をもってくださる方と、「そういう小難しい横文字の話はあとで…」となる方とで分かれるんですね。

でも、後者の方にこそ、僕はパッシブ設計のことを知っていただきたいんです。特にこれから家を新築されるとか、リノベーション、リフォームを考えている場合は、このパッシブ設計の要素をしっかり取り込むことで、その後の暮らしぶりがガラッと変わってきますので、ぜひ聞いていただきたいです。

パッシブ設計というのは設計手法の1つになります。「〇〇設計法」みたいな感じで、設計法には色々あるんですね。僕は「パッシブ設計」というのは、大体5つの要素を基にした設計法だと思っています。

まず1番目が断熱・気密に関してしっかり留意されていること。2番目が日射遮蔽。太陽のエネルギーというのは、夏場に強く感じますよね。直に受けると暑さが非常に厳しくなりますので、太陽の光を上手にカットするという要素になります。3つ目が自然風利用。自然に吹いている風を上手く利用することです。

4つ目が昼光利用。家の中を明るくするには照明器具も、もちろん重要です。でも、太陽がで出ているときは、それを利用して上手に取り込むのがいいです。5つ目が日射熱の利用暖房(日射取得)です。これは2番の日射遮蔽とは反対で、冬場の話です。太陽のエネルギーを上手に取り込むということ。これら5つの要素を含んだのが「パッシブ設計」と言われています。

ただ、今の話を聞いても、パッシブ設計について分かったような分からないような部分があると思います。その場合はパッシブとは逆の言葉である、アクティブという言葉を思い浮かべてみてください。「アクティブ=活動的」みたいな意味合いで使われることもありますが、今回のアクティブっていうのは積極的、というので捉えてください。そうすると「パッシブ」は受け身・受動的ということになります。利用するという感じですね。つまり「パッシブ設計」というのは自然の力を利用した設計法になります。

先に「アクティブ設計」の家を説明します。一定の断熱性と気密性がある家があるとします。その家に、太陽光発電とか太陽ヒーターみたいなものを取り付けます。太陽光発電を使って発電をしながら、HEMS(ヘムス)という機械を間に置いて、空調機や暖房機をコントロールする。機械で快適さをコントロールするイメージです。逆に「パッシブ設計」は自然の力を利用して快適さをコントロールするイメージです。

どちらも省エネルギー性が高くて、人間が快適に暮らせる家を目指していますが、アプローチが違います。機械でコントロールするのがベースか、自然の力を利用するのがベースなのかというのがあるので。

僕は個人的に「パッシブ設計」は、「敷地の方位の利用」という言葉で置き換えられると考えています。僕は社会人になって、30何年間と住宅業界にいますが、みんな驚くぐらい方位に関して、あまり意識をしないんですよね。「だいたい南」とか「だいたい東」という風に考える人が多いんです。住み手の方も「あっちが南です」という感じのケースが多いです。

古くから住んでいている場合なら、ある程度、感覚として分かる部分があると思いますが、新しい敷地を買うときは土地勘が無いですよね。そういう時にこそ、方位というのはよく確認して、それを利用したほうがいいと思います。方位の利用を忘れてしまうと、日射遮蔽とか自然風の利用とか昼光利用とか、日射熱の利用暖房を最大限にすることができないのでね。そういうことを考えるのがパッシブ設計のポイントになります。

太陽は高い位置から照りつけてきますよね。夏場はこれを上手にカットすることが必要です。代表的な仕様が庇(ひさし)になります。一定の長さを効かせることによって影ができて、さらにある程度の性能の窓であれば、強烈な日差しが家に入るのをカットできます。軒(のき)がないところに関しては、日除けを下げたり、昔で言う「よしず」とか「すだれ」とかを活用します。

南側に葉の茂る木を植えておくのもいいと思います。この場合は常緑樹ではなくて落葉樹。いわゆる広葉樹というやつを選んでください。夏場の陽が強い時は、葉が茂ってくれてる方がいいですからね。「グリーンカーテン」と言ってヘチマや朝顔、ゴーヤなどで日陰する方法もありますよね。そういうものを使って日差しをカットするということになります。あとは上手に空気の通り道を考えるのも必要になります。

断熱・気密のポイントとしては、まず屋根の断熱材の厚みに注目してください。20cmくらいの厚みがあるといいです。夏場は屋根に太陽の光が当たって家を暑くするので、これをなるべく抑えます。

また、パッシブ設計の5つの要素にはありませんでしたが、空調を上手な利用するのも重要だと思います。夏場はなるべく高い位置で冷房を使う。そうするとエアコンによって冷やされた空気がどんどん下がっていきます。上を冷やすと、下も冷えて非常に合理的です。一方、冬場に関しては、太陽高度がすごく低くなります。なので、夏場より日差しが入りにくくなりますので、日除けは捲っておきます。

先程、南に木を植えるなら落葉樹、広葉樹という話をしました。この種類の木なら、冬は葉が落ちて枝だけになりますよね。そうすると陽の通り道ができるので、そういう点でも落葉樹、広葉樹が良いです。陽を取り込めれば、昼間の日射熱の利用をして暖房することが可能です。他の動画やコラムでも、良く言われていますが、一間ぐらいの幅で2mぐらいの高さの窓の場合、こたつ1個分ぐらいの熱が取れると言われています。なので、4面とか6面という形で窓が取れると、晴天時にはこたつ数個分の暖房が取れますよね。太陽の光はタダですから、ぜひ活用してください。

暖房に関しては冷房と逆でなるべく下側に置いて使ってください。暖まった空気はどんどん上に上がっていきますから、下を暖房していれば必然的に2階も暖かくなります。こういうような形の設計がパッシブ設計と言われてるものです。

パッシブ設計と聞くと、「何か特殊なもので難しくて…」と思われるかもしれません。でも中身はね、昔から言われている“日当たりの良い家”をつくるための要素だったり、“縁側に長い庇を付けた方がいい”というような知恵と同じなんです。なのでパッシブ設計というのは、家づくりに関しての全ての基本だと思ってください。これらを土台にする。そのうえで太陽光発電とかHEMSといった、アクティブと呼ばれる電子制御が活きてきます。いきなりアクティブでやるのは本末転倒です。

例えば、お金持ちになりたいと思った時、「とにかくお金稼いだらお金持ちになれる」と思っている方がいますが、実は稼ぐことより、しっかり貯金できることの方がお金持ちになる道のりは近くなります。

家づくりも同じです。太陽光発電をたくさんのせたり、床暖房を導入して快適な家を目指すより、パッシブ設計の基本をちゃんとやるほうが、本当の意味で経済的な家、快適な家ができます。ちなみに、ゼロエネルギーハウス(ZEH)というのは、パッシブ設計でもアクティブでも、どちらでも実現可能です。でも、アクティブのほうは機械で無理やり実現するような要素が大きいです。なので、「メカメカゼッチ」と呼ばれたりしています。パッシブ設計は経済的な家、快適な家をつくるのための唯一の方法と言ってもいいと思っています。アクティブとパッシブは似てるけど違うというのを、知っておいてほしいです。

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