庭に植えるシンボルツリーは何がいい?
今日は家づくりの中でも、庭づくり、とくに「シンボルツリー」についてのお話です。先日、若いお客さんから「森下さん、庭木を植えたいんですけど、よくシンボルツリーって言うじゃないですか。あれって、どんなふうに考えたらいいんですか」と質問を受けまして、これは一度ちゃんとお話ししておいた方がええなと思い、今日はそのテーマで解説してみたいと思います。僕は工務店のオヤジではありますけど、植木の専門家でも植物学者でもありません。ただ、これまでいろんな専門家の方に教えてもらいながらやってきました。その中で参考にしているのが、エクスナレッジ社さんから出ている「植栽大図鑑」という本で、著者は山崎聖子さん。公園やランドスケープを手がける植栽の専門家で、一級建築士でもある先生です。その考え方を少しお借りしながらお話ししますので、いつものように板書を見ているつもりで聞いてもらえたらと思います。
よくあるのが、「シンボルツリーは1本植えたらいいって聞いたので、アオダモがいいですかね、ヤマボウシですかね」と、人気の樹種から考えるケースです。もちろんそれも悪くないですし、今風でかっこいい庭になる木はたしかにあります。ただ、その前に「そもそも庭に木を植えるってどういうことか」を知っておいてほしいんです。まず大事なのが、庭木にはサイズの分類があるということ。シンボルツリーと聞くと、大きな木を想像すると思いますが、これは一般に高木と呼ばれて、だいたい高さ3m以上。次に中木があって、1.5mから2.5mくらい。低木は50cmから1.2m程度。そして地被、下草と呼ばれる10〜30cmほどの植物。この4つを組み合わせて庭はつくられます。高木を1本だけポンと植えると、どうしても唐突で、家や庭になじむまでに時間がかかることが多い。高木に中木、低木、下草を組み合わせた中で、その中心になる木がシンボルツリーなんです。
次に考えてほしいのがスペースです。広いお庭の大邸宅なら別ですが、限られたスペースに植える場合、植えられる本数には限界があります。目安としては2㎡、畳1畳半くらい。その中で、高木2本、高木1本+中木数本、高木・中木・低木の組み合わせ、中木中心、低木多め、そんなパターンが考えられます。価格も、高木は1本5万〜15万、中木で3万〜10万、低木は数万円程度。そうすると、おおよその予算感も見えてきます。大きな木は素人では扱えませんし、場所によっては建築中に入れておかないと難しい場合もある。どれくらい植えられるかを先にイメージしておくのは、とても大切です。
そして今日いちばん伝えたいのがここです。シンボルツリーを選ぶ方向性は、大きく3つあると言われています。ひとつ目は「樹木そのものの魅力」。花、紅葉、実、樹形です。桜のように花が一斉に咲く木、秋に紅葉する木、実がなって思わず眺めてしまう木、枝ぶりや葉の形が美しい木。松を植えれば和の雰囲気になるし、ヤシやガジュマルなら一気にトロピカル。モミの木はクリスマス文化と結びつく。こうしたイメージも魅力のひとつです。
ふたつ目は「用途や性質」。食べられるかどうかもそのひとつです。僕の子どもの頃は、庭や畑に茶の木があって、茶摘みをして番茶を作っていました。あれはどんな高級茶にも代えがたい味でした。月桂樹の葉、山椒、ハランなど、料理に使える木も楽しい。生垣に使える木、縁起物の千両万両、榊、ナンテン。管理のしやすさ、虫が来にくいかどうか、成長の早さなども大事な性質です。
みっつ目が「敷地の環境」。乾燥に強いか、湿気に耐えるか、日陰向きか日向向きか、潮風に強いか。たとえばモミジやカエデは、日向の良い場所だと水管理を誤って枯らしてしまうことも多い。北側や半日陰の方が向いている場合もあります。好きな木でも、環境に合わなければかわいそうな結果になることがある。ここはとても重要です。
その上で、植え方の順番と考え方があります。山崎先生がおっしゃるのは、配置は不規則に、ということ。等間隔で並べると、どうしても人工的になる。里山のように、大きな木があって小さな木があって、その下に下草がある、生態系を切り取ったようなイメージです。平面で見ても不等辺三角形、高さも急なところと緩やかなところが混ざる構図が美しい。常緑樹ばかりでなく、落葉樹や花や実のある木を混ぜると、季節のワクワク感が生まれます。
もうひとつが、成長を見越した間隔。高木は幹芯で2m以上、中木は1m程度、低木はもっと詰めても大丈夫。さらに大切なのが「どこから眺めたいか」。1階リビングからなら中木で十分なこともあるし、2階や吹き抜けからなら高木が映えることもある。見たい場所から逆算して考えることが大切です。
流行っているからアオダモ、ではなく、自分たちの暮らしに合うか、楽しみたい景色になるか。そこを考えて選んでほしいなと思います。年を重ねて思うのは、庭があると人生は楽しいということ。子どもや孫に、「この木はな、こんな実がなるんやで」と話せたら、それはきっといい時間になります。ぜひ、家づくりの大事な要素として、庭に木を1本、そしてその周りも含めて楽しむことを考えてみてください。


