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二世帯住宅で小屋裏エアコン・床下エアコンは可能か?

今日は、二世帯住宅を検討されている方から「森下さんたちが得意にされている床下エアコンや小屋裏エアコンは、二世帯住宅でも上手に使えますか?」というご質問をいただきましたので、そのことについて少し解説してみたいと思います。いつものように、私の板書を見ていただきながらお話を聞いてもらえたら嬉しいんですけど、正直なところ、答えは身も蓋もないかもしれませんが、やはりケースバイケースで考えざるを得ない、という感じなんですね。

というのも、二世帯住宅とひとくちに言っても、本当にいろいろなタイプがあるんです。まず大きく三つのタイプに分けられると思うんですが、一つ目は「一体型」と呼ばれるもので、これは玄関もお風呂もトイレも、個室以外はすべて共用するスタイルです。リビングも共有で使う、そんな二世帯住宅も実際にあります。このタイプの場合は、小屋裏エアコンも床下エアコンも、普通の大きな家と同じ扱いで全然問題なく使えるんですよね。家が大きくなるというだけで、空調の仕組み自体は変わりませんので、十分使っていただけます。

二つ目のタイプは「半分離型」、あるいは「一部共用型」と言ってもいいかもしれません。例えば、玄関は一つだけど水回りは別、または水回りの中でもキッチンと洗面所は別だけどお風呂だけは一緒、など、いろいろなパターンがあります。こういう場合には、床面積が一つ大きな要素になってきますね。家が大きい場合は、一台の床下エアコンと一台の小屋裏エアコンの運用でも十分にいけるケースが多いんですが、例えば2階部分が小さくて1階部分が広いなど、間取りによってはなかなか工夫が必要になることもあります。また、2階空間に吹き抜けがあるかどうかも大きなポイントです。床下エアコンや小屋裏エアコンは、1階・2階ともに暖気や冷気を共有するような運用が基本になるので、空間がしっかりとつながっているほうがうまくいきやすいんですね。

あと、二世帯住宅ならではの「プライバシー感覚」も大切なポイントです。たとえば、僕自身は子どもの声が聞こえてくるのが好きで、もし孫ができて2階で歩き回っている音がしたら、かわいいなあって思ったりするんですが、中にはその音が気になってしまうおじいちゃんもいらっしゃるんです。実際に「子どもの足音がうるさいから静かにさせろ」とお嫁さんに怒っているおじいちゃんも見てきましたし、そうなると感情的なすれ違いも起こりがちです。それから、若い子世帯の方も、自分たちの生活音や趣味の音楽が親世帯に聞こえるのが気になる、なんてこともありますよね。こうしたプライバシー感覚の違いによって、空調システムの選択肢や使い方も大きく変わってくるんじゃないかなと思います。

そして三つ目のタイプが「完全分離型」です。これは親世帯・子世帯がピシッと分かれているタイプで、多いのは「二層型」、つまり1階が親世帯、2階が子世帯のような構成です。この場合、小屋裏エアコンや床下エアコンを共用するのは難しいです。ただ、縦にポーンと分けてメゾネット型にする、いわば二軒の家のような構成でしたら、それぞれに空調を分けて運用することもできますし、敷地や面積によっては上手に1台でやりくりする方法も考えられます。ただ、やはり多くはピタッと分けるケースが多いですね。

二層型の場合は、例えば1階の親世帯は床下エアコンをしっかり使っていただいて、家の中を温かく保つ。特に親世帯はヒートショックなど心配なこともありますし、家で過ごす時間も長いので、冬場に床下エアコンはとてもおすすめです。冷房は普通のルームエアコンをリビングに設置して、間仕切りの少ないレイアウトにしておけば、難しい空調システムを考えなくても十分対応できる場合が多いです。

子世帯のほうは、小屋裏エアコンを夏場の冷房として使うことができますし、暖房については最近だとダイキンさんの据え置き型エアコンなど、下から温風を送ることができるタイプもあるので、床下エアコンがなくても足元が温かい暖房が実現できます。特にこの二層の完全分離型の場合は、音の問題が出てきますので、遮音性の高い床にして2階の足音などが1階に響かないように工夫することも大事です。ただ、その分、床に断熱材を入れることになるので、上下階の熱のやりとりがしにくくなります。ですから、熱の融通を上下で行うよりも、それぞれの階で空調を分けて考えた方がいいケースが多いです。そういうところをぜひ注意していただきたいなと思います。

ここで、ちょっとおせっかいかもしれませんが、二世帯住宅を計画される方には、親と子の関係性についてもじっくり時間をかけて、しっかりとコミュニケーションしていただきたいと思うんです。少し物騒な話かもしれませんが、二世帯住宅を建てて「これで幸せに暮らせる」と思っていたのに、しばらくして子世帯が引っ越してしまった、なんて話も実際に耳にします。住んでみたら「こんなはずじゃなかった」と感じることもあるんですね。

小屋裏エアコンや床下エアコンのお話をするときに、僕が一番大事だと思うのは、どんなふうに生活を共有し、お互いを尊重できるかということなんです。都市部など地価が高い場所では、親世帯の家が古くなったのを機に建て替えて、土地は親世帯が提供し、建物のプランは子世帯が主導する、というようなパターンが多いと思います。でもその時に大事なのは、関係性をどう持続していくかということ。将来は状況も変わっていきますから、その時どうするかまでよく考えて、二世帯住宅を建てていただきたいなと思います。

僕が個人的におすすめしたいのは、敷地が許せばメゾネットのような形、つまり小さなお家を2つ建てて、それぞれが独立しながらも適度に距離を保てるスタイルです。そうすることで、親世帯・子世帯間の衝突も和らぐことが多いんじゃないかと思っています。例えば、お嫁さんの立場であれば、親御さんの気配を常に感じて気を遣う…なんてこともありますから、別棟にしてリビングの方向をうまく分けるだけでも、ぐっと暮らしやすくなります。孫は「かすがい」とよく言いますが、みんなでワイワイ集まるときは集まり、それぞれの時間はしっかり確保できる、そんなバランスが理想かなと思います。

さらに年月が経てば、どうしても親世帯が先に亡くなったり、施設に入られるなどして空き家になることもあります。二世帯住宅を建てる時には、将来的な「出口戦略」も大事です。別棟や敷地分割ができるようにしておけば、いざという時に売ったり貸したりもしやすいですから、そういった点も考えていただければなと思います。ですから、まずどんな二世帯住宅のパターンにするかをしっかり選び、その上で小屋裏エアコンや床下エアコンのシステムを考えるのがいいかなと思います。

今回はテクニカルな空調機器の話を期待された方も多いかもしれませんが、ケースバイケースであるからこそ、親子の関係性にもぜひ目を向けていただきたい、そんな思いでお話ししました。

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