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家を「間取り」から考えてはいけない理由

今日のテーマは、家を「間取り」から考えてはいけない理由です。意外な感じがされるかもしれません。その理由について解説をしていきたいと思います。

これまでもお話ししてきた内容ですが、最近ますます、改めてお話しした方がいいかなと思った理由があります。それはロシアとウクライナの戦争でインフレ・値上がり・金利の上昇に拍車がかかったからです。家づくりというものに、ものすごくお金が掛かるようになりました。

これから家づくりを考える際、最初に頭に置いておいてほしいこととして、今回のテーマがあります。

家を建てるのには、いろいろな選択肢があります。例えば、私たちのような工務店に設計・施工を依頼される人もいらっしゃれば、ハウスメーカーさん・パワービルダーさんみたいなところで営業という人が窓口になって進められることもあります。

営業の人たちが窓口になった場合、営業さんがよく口にする話があります。
「こんにちは〜」って仲良くなって、いろいろな話をしていくうちに「じゃあ、どういう間取りができるか1回提案させてもらいます」という内容です。お客様の方から「家の間取りって考えてもらえますか?」と聞かれることもありますよね。こういった話をきっかけにして、家づくりが始まることってすごく多いです。

このやりとりは営業さんの立場としても、すごく良いんですよね。お客様と話がしやすくなります。

じゃあ、営業さんが次にやることを言うと、「提案をさせていただくために少しお客様のご希望をお伺いしていいですか?」とヒアリングをしていきます。営業の手法の世界の中で、“満足条件を聞く”という表現があります。お客様が家づくりに満足するための条件をヒアリングするということです。営業がうまい人というのは、ここのトレーニングをめちゃくちゃしている人です。ヒアリングを楽しくできる人が、いわゆるトップセールスマンであることが多いです。

いろんなことを聞くんですが、どういう風に聞くことが多いかと言うと、1つの例で「リビングはどれぐらいの大きさが欲しいですか?」というのがあります。そうするとお客様からは「10畳ぐらい欲しいかな?」とか「8畳はいるなぁ」と返ってきますよね。「この前見せてもらったモデルハウスのリビングは何畳ですか?」というのもあると思います。

特に女性が気になる内容でいうと「収納量が欲しい」というのもあります。そうすると営業の方は「じゃあ収納はたっぷり取りましょう!」と提案してくれたり、他にも「せっかく家を建てるんですから、どんなことをやりたいですか?」と夢について聞いたりもします。

では、その結果どうなるかと言うと、建物が大きくなっていく傾向があります。

設計をされたことがある方ならわかると思いますが、いい間取りというのは面積を大きくすれば実現しやすいです。

営業の用語で“プラン勝負”と言いますが、作成するからにはお客さんに気に入ってほしいので、建物がどんどん大きくなっていく傾向にあります。僕の経験では、人のいい営業さんほどそうなる傾向があります。

建物がどんどん大きくなるとどうなるかというと、金額も上がっていきます。「家の大きさ=予算」です。

小さい家より、大きい家を建てる方がお金が掛かるのは、誰でもわかりますよね。ということは、夢を叶えようとして、どんどん家を大きくすると、金額が高くなっていくという現実が目の前に現れてきます。

満足条件を聞いてプランに入る前に、資金計画をされているケースが多いと思います。営業の方にお願いされる人もいらっしゃれば、どこかのFPさんと相談して決めたりすることもあると思います。きちんとしている人ほど、家づくりに掛けてもいい上限金額を設定されています。

一方で夢を叶えるためにリクエストをたくさん出して、作成してもらった間取りを見た時、予算と合わないからプランを縮小したり振り出しに戻るということが結構あります。

そうすると、せっかく良い感じで家づくりがいい感じで始まったのに、叶えられないプランだから「じゃあ別のを…」と代替プランを出したとしても、そのプランは最初のプランと比べたら必ず見劣りします。前のプランより良くなっているということはほぼないです。

お客さんの夢を叶えたくて「こうしたらいい」「ああしたらいい」と考えて間取りを優先するアプローチをすると、家の外観にも影響してきます。

「こういう間取りになったから」という理由で、窓の取り方を考えると、窓がとんちんかんな並びになることがあります。なので、外観がカッコ悪くなったりすることもよくあります。

また間取りを優先すると、建物の配置や車の停め方もおかしくなってしまいます。なので、間取りから考え始める、間取りを優先するというのは、とても危険があるなと感じます。

現在の厳しい環境下でも、いろいろ乗り越えて家づくりをしようと思われる方には、こういう順番で進めていただきたいです。

全部で6つのステップがあります。

まず1つ目が予算です。予算を考えたら、建物の大きさや形を決めます。これには鉄則があって、なるべく小さく考える、小さいシルエットで考えます。

凸凹したシルエットじゃなくて、真四角とか長方形のようなシンプルな形を考えるのもポイントです。カッコいい家にしたい!という気持ちが強くて、「ここで凸凹した方がカッコいいですよね」とか「斜めにしましょう」ということを言うような人もいますが、原則としては、シンプルな基本的な四角のシルエットをまず決めるのが大切だと思います。

大きさや形が決まったら、次に考えることが車の置き方です。
都市部の家で車を置かない人はスルーしていいと思いますが、地方にいると1家族でも2台ぐらい車を持つのは当たり前かと思います。特に共働きでは、それぞれに車がないと通勤しにくいケースもありますよね。そうすると、駐車スペースを後から考えて配置するのは、すごく使いにくいものになる可能性があります。車は停められるけど、玄関までカニ歩きしないといけない、とかですね。

また、車の出入りを安易に考えたが故にリビングから見える景色が車のお尻だったみたいなケースもあります。車の置き方、そして建物のシルエットをどう配置するかをパズルのように考える、これが2番目のステップになります。そうすると自ずと、この建物の一番の勝負面がわかってきますので、それに伴って屋根の形も決めていきます。

3つ目は窓の配置です。先程言いました勝負面に、勝負の窓を作ることを考えます。窓を作らないのであれば、窓に変わる、そのお家の顔になる部分を作っていく必要があります。

ここでも、間取りはまだ考えません。窓をどこに配置したら外から見たときに一番美しいのか、「ここに窓を切ったら隣の家から見えてしまう」とか「せっかく向こう側にいい景色があるのに、そこに窓がないのはもったいない」という問題も出てきますので、状況に合わせて窓の配置を考えていきます。

僕の師匠である飯塚豊先生は、窓は視覚や風の抜け道とおっしゃいます。この内容も意識しながら配置を考えていきます。

ここから高度な話になっていきます。家の大きさやシルエット、配置、駐車スペース、窓の配置が決まったら4つ目です。この建物の外部のどこかに、内でも外でもないような曖昧な領域、つまり中間領域を作ります。中間領域があるとすごくリッチな空間になるんですね。

家の面積は小さいけれど、広がりがある家というものになります。つまり、そういった広がりのある家というのは、中の間仕切りだけじゃなくて、外との繋がりが初期段階で意識された家が多いです。

ここまで固まった段階で、次に考えるのが構造です。これが5つ目です。「この建物を一番少ない柱の数で、一番シンプルにバランス良く構造のフレームを組むとしたらどうなるか?」というのを考えます。

このことを行き着くと、スケルトン・インフィルと言って、外枠とかそれを支える根本の構造は揺るぎないものにするけど、間仕切りは自由自在にできるということになっていくと僕は思っています。これを考えられると、そこまで多くのコストを掛けずに丈夫な家を作ることができるはずです。

そして6つ目です。ここでようやく間取りが出てきます。
間取りから考えると、窓がどうしても変えられなくなったりします。窓の位置を先に決めて、最後に間取りの順で進めると、非常にスッキリとしたプランができてよかった、ということが多いです。(家づくりを経験された方でないと実感しにくいことかと思いますが。)

間取りが先で、あとから窓という逆の順番しか経験したことのない方だと「窓から先に決めたら、間取りがすごく使いにくいものになりそう」と思いがちです。でも、これが意外や意外、そんなことはないんですね。ぜひ知っていただきたいです。

そして間取りを作る時には、コルビュジエがおっしゃっているように「家とは住むための場所だけではない」というのが大切になってきます。機能がないといけないです。

モリシタの場合は、空調が合理的に考えられることと、家事がしやすいこと、この2つの機能を大事にしています。

快適な空間の中心には、夏涼しく過ごせるとか冬暖かく過ごせるということがあると考えているからです。家が寒かったり暑かったら、家事はやりにくいですよね。なので、まずは快適な空間というのがあって、その上で自分の暮らしを支えるものとして家事が出てきます。

家事がきちんと回ることで、毎日の生活が持続できるし、家でゆっくりするのも、家事が終わらないうちにゆっくりしたら、家は荒んでしまいますよね。

僕の師匠の飯塚先生も、松尾和也先生も間取りを考えるときには、押さえるべき項目をまとめたチェックシートを作られています。飯塚先生は書籍で、そういったものをたくさん紹介しています。僕自身も間取りを考えるときは、毎回、松尾先生式のチェックシートを見ながら確認していきます。

そうすると抜けているところがないかきちんと確認できますし、漠然と作ってしまうことも避けられます。また、僕がチェックシートを使っていていいなと思う一番の理由は、何を削るのかを考えられることです。

最初に間取りを考えてしまうと、盛り込みたいことがどんどん出てきますよね。でも今回の6つのステップだと、面積を削るところからスタートします。この順番で進めていくと、これからのインフレや資源高、金利がアップする環境下であっても、長く住めて、かつ、小さくてカッコいい家を建てることに繋がっていきます。

今回は短い時間でしたので概論だけのお伝えになりました。現実では、いろいろ細かいことが出てきます。ですが、家を間取りから考えることをやめるだけで、いろいろなことからずいぶん自由になるという事実がありますので、知っていただくと、家づくりが面白くなります。ぜひ参考にしてみてください。

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