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リビングにつくるワークスペースを考える

今日は最近よく設えられるワークスペースに関して、一緒に考察をしていきたいと思います。

藤山和久さんという方が「建築家は住まいの何を設計しているのか」という素晴らしいエッセイを書かれています。これを尊敬する方からご紹介いただいて読ませていただいて、本当にそうだなと思うことがありました。今回はその本を参照しながら、私の持論というか思いも入れながら解説をしていきたいと思います。

まず、そもそもなぜリビングにワークスペースが必要なのか。2つの理由があると思います。最近多いのが、スタディコーナーです。子どもさんが宿題をするところを見てあげたいお母さんはたくさんいらっしゃいますよね。そういう家庭では、ダイニングテーブルではないテーブルを別に設えて、そこで子どもに学習とか宿題をさせるというお家が増えています。

子どもが勉強するだけじゃなく、お母さんも仕事に使うし、場合によっては旦那さんが仕事をする時に使ったりすることもあります。スタディコーナーが転じて、ワークスペースになることもあるということです。

ワークスペースを考えるにあたって、藤山さんはこうご指摘されています。「リビングテーブルって一体何のためにあるのかな?」という考察です。私たち住宅設計の世界にいると、多くのお客様から判で押したように「広いリビングが欲しい」と言われます。なぜ広いリビングがいいのか聞くと「広い方がゴロゴロできる」「ゆっくりできる」からだとおっしゃいますが、本当にそうなのかなと私は思うのです。

広いリビングを望む人は、大きなソファ・テレビ・リビングテーブルを置きますよね。この3点セットを実現するために、広いリビングが必要なのかなと思います。畳などを設置しない限り、今の3点セットを使う人が床でゴロゴロしているのはあまり見たことがありません。

藤山さんはこうおっしゃっています。「リビングテーブルの上はゴチャゴチャになる宿命だ」と。リビングテーブルでよく見る光景は、こうです。コーヒーカップが置いてあり、テレビのリモコンがあり、ノートパソコンを広げてあり、充電中のスマホがあり、ハサミやティッシュボックスなど、ありとあらゆるものがあると思います。

また、デザイナーの吉田美穂さんは、こうおっしゃっています。「リビングなんてリビングテーブルとテレビを除くと美しくなるんだ」と。その2つを取った瞬間、本当にこんな広さが必要なのか、もっと他を充実させた方がいいのではないか、という疑問が生まれると思います。

藤山さんのアイデアは、リビングテーブルを止めてサイドテーブルにすることです。横にテレビのリモコンがあったら便利ですよね。コーヒーカップも横にある方が飲みやすいじゃないですか。

時々紹介していますが、大阪に大西憲司先生という住宅設計の巨匠がいらっしゃいます。御年70代ですが、未だにすごい情熱で素晴らしい住宅設計をされている方です。先生の建てられた建物を、先日機会があって見に行かせていただきました。

多くのお家はダイニングとリビングが連続していますが、そのお家はリビングとダイニングの境界に15〜20cmぐらいの段差があって、しかもその段差の上にワークスペースが設けてありました。

長いテーブルからリビングとソファを見下ろす感じで、斜め向こうにテレビが見えるようになっていました。真正面には大きな窓があって、外に綺麗な樹木が見えます。しかもワークスペースの右を向くと中庭があり、そこには印象的なシンボルツリーがあって、すごく素晴らしい囲み空間になっているのです。

本当にお恥ずかしい話、リビングとダイニングを寸断するような場所にワークスペースを持ってくるという発想が全くなくて、とても驚きました。アリだなと。ここだったら自分もノートパソコンを置いて仕事したいし、子どもも勉強するだろうなと感じました。

ワークスペースをリビングに持ってくることによって、リビングテーブルのゴチャゴチャ問題が解決するかもしれません。そもそもリビングは、物の置き場だとはあまり考えていないですよね。みんな広さは求めるけど、リビングの物をどこに置くかを考えている人は少ないと思います。

人間が生きている以上いろんな物がありますから、いくら断捨離と言ったってティッシュペーパーやカバンや子どものプリントを置く所も必要になるわけじゃないですか。そう考えた時、ワークスペースを拠点にして物の置き場を作ることはいいと思います。

吉田美穂さんのアイデアで、こういうものも提案されていました。リビングソファの後ろに
ワークテーブルを持ってくることです。そしてその横に、側面収納を持ってくるのです。これもあまり見ませんよね。リビングソファの後ろは壁かもしくは空間で、ワークスペースを背にするという発想はあまりないと思います。これは大西先生の設計と相通じるものがあるなと思いました。

要は、ゴチャゴチャと物を置きたくないのです。ゴチャゴチャした物は横の側面収納に収めるようにすると、見事なまでに綺麗でスッキリして、しかも使いやすい機能的なリビング・ダイニングの空間になります。

リビングテーブルを退けることによって、例えばヨガマットを広げてテレビを観ながらYouTubeを観てヨガができるぐらいのスペースがあったりするじゃないですか。そうなると空間の使い方としてはすごくいいなと思います。

さらに藤山さんの、もう1つのアイデアをご紹介します。あえて見えないワークスペースを作ることです。リビングの一角に、目隠しというかちょっとした敷居を立てます。敷居の内側はゴチャゴチャと物を置いて、パソコンも書類も広げっぱなしでいいし、子どもの物がひっくり返っていてもいいという感じでやるということです。このように見えないワークスペースをリビング空間に持ってくるのも、1つの方策じゃないかなと思います。

私がよくお手伝いしてきたワークスペースは、オープンなワークスペースです。それはそれでいいのですが、物を収める所が脇にないと、ワークスペースもきっとリビングテーブルの代わりにゴチャゴチャになりかねません。

藤山さんは、「リビング・ダイニングが舞台だったらワークスペースは楽屋だ」とおっしゃいます。うまい表現ですよね。こういう考えもあるということを知っておいていただいて、本当にその広さが必要なのか、テレビもリビングテーブルも必要だという固定観念に縛られていないかということを、再考してみてください。

以上のことを考えていただいたら、本当の意味で使えるリビング空間になるのかなと強く感じました。これから家づくりを設計される方は、こういう視点も持っていただいて取り組んでいただくと面白いと思います。ぜひ参考にしてみてください。

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