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地震対策:家具の転倒防止はどこに付けたらいいの?

今回は家具の転倒防止について解説します。

今日も、2024年元日に発生した能登地方の大地震を受けて佐藤先生が提言してくださっている内容から、その中で多くの人に知っておいてもらいたいと思うことについてお話しします。

まずはこの写真を見てください。地震の被害では、家の食器棚・タンスなど、背の高い家具が倒れたり、中身が散乱したり、中にはタンスの下敷きになるようなこともあります。また、震源からは幾分か離れていてあまり被害は大きくなかったけど、お家の中の物が散らばってぐちゃぐちゃになったという人もいると思います。

家具の転倒防止については、甘く考えている方がいるのではないかと思います。実際に地震があったら甚大な被害に遭うと思い、今回は家具の転倒防止について、どこに・どういう風につけたらいいのか解説をしていきます。

まず、家具の転倒を考える時に、高校生頃の物理の時間を思い出してください。モーメントという言葉を覚えていますか?物理が苦手だった人は、聞くだけで嫌かもしれません。

これは典型的なモーメントを表した図です。重りがついていて、下に下がろうとします。その時に、支点から落ちないように力で抑えるということを考えた時に、どういう力を加えたらいいのかを表したものが、このモーメント図と言われているものです。

力がかかって下がろうとすると、それを受けて支点に回転の力がかかります。この力のモーメントMは、上から抑える力Fと距離rで、M=Frという公式で求めることができます。

この概念がある前提で、家具の転倒とはどういうメカニズムなのかを解説した図を示します。床・壁・天井があって、タンス・食器棚などの背の高い家具があります。その時に、地震の力によって転倒するモーメントはどのように作用するかということです。

まず、地震力はどこでも地震力が働くのではなくて、タンスや食器棚の重心にかかります。そして、支点をもって回転しようとします。この場合は、タンスや食器棚の前側の角が支点となり、支点から重心点までの距離をrとして、転倒モーメントMが、地震力F×重心からの距離rの式で発生します。

この時に、家具を倒さないためには、赤線で描いた力のモーメントをゼロにするモーメントが働けば、理論上タンスや食器棚などは倒れないということになります。

では、みなさんの家はどんな固定をしているか、考えてみてください。固定していない家は論外です。絶対気を付けてください。対策を打っている場合には、大体3つのパターンがあります。

まず1つ目に、家具の前側の天井に固定しているパターンがあります。突っ張りポールのようなものを使っていると思います。よく通販や百均で売っています。本棚なども、本を多く入れると重くなって転倒が恐いから、突っ張り棒で補強したりしますよね。その突っ張り棒が、家具の比較的前側で突っ張っているケースです。

一方で、家具の後ろ側で突っ張っているケースもあります。同じ突っ張り棒を使うパターンでも、2つ方法があるんです。

ここまで聞いて、ドキドキしてきた人もいると思います。私は、常識ってあまり浸透していないなと思います。

もう1つのパターンは、家具の頭の壁側にL型金具などを取り付けているケースです。

前側天井・後側天井・壁側固定。この3つのうちどれがいいのか、モーメント図から見ていきます。つまり、転倒モーメントを阻止する逆向きのモーメントはどのように効けばいいのかということです。図で描いた、グリーンの矢印が転倒を阻止する力だと思ってください。

前側天井の場合は、転倒モーメントを消すための力は家具の上部の前側の角に力がかかっています。この時に、支点は家具の下部の角ですから、真下ということになります。回転という観点では、距離はゼロということになります。ですから、どんなに突っ張っても倒れます。

次に、後側天井の場合です。支点は変わりませんが、力のかかる場所は家具の上部の後側になりますから、距離が生まれ、安定モーメントが発生します。ただ、あまり距離はないので、安定モーメントは小さいです。

最後に、壁側固定の場合です。安定モーメントを発生させる力は壁に向かって発生します。そうすると、支点からの距離は家具の高さということになり、非常に距離が長くなります。同じ力であっても、安定モーメントは非常に大きくなります。

つまり、固定は壁にするのが一番いいということです。

しかし、突っ張りポールはビス止めや柱頭柱脚のようにしっかり固定されているわけではありません。突っ張っているだけで、ブラブラです。ということは、弾みがついたらポコンと外れてしまいます。外れた瞬間に、この力はゼロになります。

転倒モーメントを消すための力は、固定がしっかりされてこそ働くわけなので、しっかり止めないと効果はありません。今回の地震まではいかないまでも、かなり大きい震度5~6の地震があれば、恐ろしいことが起きてしまいます。

それから、転倒モーメントは重心に対して力がかかります。重たいものを家具の下に置くと重心は下がります。だるまのような状態になるわけです。重たいものはなるべく家具の下側に入れることも重要です。

例えば本棚なら、百科事典のような大きくて重たい本は下側に入れて、小さい文庫本は上側に入れるという感じです。のべつなく本を入れるのは危険ですし、ましてやそれが止まっていないのは超危険です。

まさかで地震はやってきます。転ばぬ先の杖ではないですが、この動画を見ていただいた方はぜひ、今度の日曜日あたりに固定をつけてください。1~2時間で済みますから。買い物のついでに百均で探したり、ホームセンターに行ったついでに金具だけでも買ってきて、対策してください。

おじいちゃん・おばあちゃんの家ほど、ガラス戸の食器棚・大きいタンスが置いてあることも多いと思います。お孫さんたちも、正月休みが終わってしばらくおじいちゃん・おばあちゃんと会えない、で終わるのではなく、つい最近地震があったのだから、早い段階で言って対策してほしいと思います。

また、借家暮らしだからビスなどでは止められないという人もいると思います。これは困りました。しかし、命には代えられませんから、大家さんに相談してみてください。

固定をする時に、石膏ボードの壁の場合はスポスポで効かない時があります。住宅の間仕切りには大体45cm置きに下地が入っているので、そういう時にはそれを探して刺してください。下地探しという商品で探すのもいいですし、耳がいい人だったら金槌でコンコンと叩いて音が違うところを探す方法もあります。

突っ張りポールをつける人は、少なくとも根元はビスで止めてください。もしくは超強烈な両面テープを貼ってください。それをやっていないと意味がないです。

今家具の前で固定をしている人は、即刻やめてください。僕の記憶だけかもしれませんが、前で固定している人は意外とよく見ます。知人に「家具の固定はどんな感じにしている?」と聞いたところ、「前の方が効くと思って前につけていました」「女房が後ろにつけていたから僕が前にしたぐらいです」という、とんでもない人もいました。ぜひ固定の仕方も気にしてチェックしてください。

本当に切実な話なので、ぜひこれを機会に取り組んでみてください。

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