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家を建てる時に考えておく水害対策

今日は家づくりにおける水害対策について解説します。

嫌な梅雨がすぐ先まで近づいてきました。梅雨シーズンを迎えると、だいたい2つのことが頭に浮かびます。湿気が増えるな・洗濯物が乾かないなということと、大雨が来た時に水害が怖いという2つの問題です。今日は、大雨シーズンの前に、改めてお家の水害対策を一緒に確認していきたいと思います。

水害対策には順番があります。まず一番最初にすることは、自宅が万が一大雨や氾濫の被害にあった時に、どれほどの被害を受ける可能性があるかを確認することです。

「治水」という言葉をご存知ですか?水をちゃんと治める・治まるという言葉です。日本という国は、この治水を、私が子どもの頃からすごく本気でやりました。河川に堤防・水門を作ったり、氾濫しないように人工の川を作ったり、いろいろなことをしてきました。

その結果、水害のリスクはかなり減りました。しかし、それでもリスクが0ではないということを周知するために国が作ったのが、ハザードマップです。

ハザードマップを知らない人は、今はいないと思います。しかし「自分の家はハザードマップでどういう状態なの?」と聞くと、すごくわかっている人と、「ん?大丈夫だと思うけど…」という人と、半分ぐらいの割合なのが現状です。

まずは、自分の住んでいる地区がハザードマップでどういう評価を受けているか、水に浸かる可能性があるかどうかを確認してください。水害のリスクが全くないエリアであれば「いい所の土地を求められてよかったですね」ということで終わります。しかし、ハザードマップに色が付いていて、例えば「50cmぐらいは浸かるかも」「1mぐらい浸かるかも」などという場合もあります。

50cmぐらい浸かると聞くと、穏やかではないというか、ドキドキしますよね。床下浸水の可能性も大いにあります。1mであれば、床上浸水は避けられません。もっと酷いと、エリアによっては3~5mの浸水の可能性という所もあります。

「でもこの30年氾濫していないから」などと言う人もいますが、ハザードマップに記載があるということは、日本の国の歴史の記録の中で氾濫があったということです。

私は兵庫県姫路市に住んでいますが、お隣の岡山県の真備町という所では、数年前に大きい氾濫がありました。2階建ての家が、屋根しか見えないほど水に浸かったお家もありました。そういう水害の可能性が、そのエリアにあったということです。

開発や治水がしっかりされているから、大丈夫じゃないかというご判断でその土地に住まれた方も多かったと思います。それでも、結果的に頑張って作った堤防を越えて、水が押し寄せてきました。

ですから、やはりハザードマップを侮ってはいけません。しっかりチェックする必要があります。

また、土地探しの動画の中でも言いましたが、ハザードマップに載らないぐらいの小規模の農業用水路は要注意です。

昔田んぼだった場所が埋め立てられて、宅地になった土地がありますよね。こういう所では「なぜこんなところに用水路があるのかな?いつも水は全然通っていないけど」と思う場所があることがあります。

それは、かつて田畑や水田があった時期に意味があるものだったということです。つまり、そこに水が集まってくる可能性は0ではない、ということです。

近年ゲリラ豪雨という、亜熱帯の方で起きるスコールのようなものが、日本でも結構降りますよね。短時間に集中した雨が水はけの弱い農業用水路の氾濫を生むこともありますから、注意が必要です。

古い歴史の中で幸いなことに被害がないと、40〜50年経てば人間は風化して忘れてしまいます。ですから、ぜひ近所のお年寄りの方に、「おばあちゃん、昔そんなことがあったんですか?」と聞いてみてください。「昔はここまで水が浸かったよ」「小学校に避難したことがあるんだよ」などと教えてくださると思います。ハザードマップで概ねの状況は把握できますが、周囲で気になるところがあれば、チェックしてください。

こうして被害の可能性をある程度見越せたら、それに対する対策をしていきます。ベタですけど効果がある対策が、自分の家の宅地の地盤を高くすることです。

例えば50cm水に浸かる可能性があるのなら、今ある敷地を50cm上げればいいという考え方です。もちろんこれを造成したら擁壁も盛土も必要ですから、それなりの費用がかかります。それでも、そういう方法をとることが良い場合もあります。

2つ目が、類似の話ですが、家を高床式で建てることです。一般的に多いのはピロティと高基礎です。1階部分に駐車場があるような、柱があって1層浮いたような形で建っている建物をピロティと言います。

ただ、1995年の阪神淡路大震災では、ピロティの柱が座屈して家が倒れてしまったり、酷い場合はその下に挟まれて亡くなった方もいらっしゃいました。気分的に遠ざかったこともありますが、これはきちんと構造検討をした上であれば敷地の有効活用にもなります。特に地価が高い所では有効だと思います。

その土地で祖先から住んでいるなどの事情や愛着もあってそこに住むのなら、こういう対策も非常に有効です。お金はかかっても、ものすごく安心剤になると思います。

また、ピロティは水害以外にも有効です。新潟の方の豪雪地帯で、山間の町でピロティが多い地域がありました。なぜかと思ったら、雪が5m以上積もる地域だからだそうです。雪が積もっても人が出られるようにという理由でやっているそうです。

基礎は一般的に40〜50cmほど上がっていることが多いと思います。しかし、もし50cm浸かる可能性があるとなると、少々心配です。その場合、ピロティとまではいかなくても、「20cmだけ基礎を上げておこう」という風に考えるのも一つです。これならそれほどコストもかからず、安心も得られて非常に良い方法だと思います。

防水壁で家を囲む方法もあります。例えば家に水路が隣接しているような時、前面道路の兼ね合いで高基礎などの対策はやりにくいという時に、水路側にきちっとした塀を作って水が来ないようにします。完全に0にはならないかもしれませんが、一定以上は水が入らずに被害を軽減できます。

例えば外構で塀を作らなければならない時には、防水壁と兼ねることもできます。コストの増大も吸収できて、良い方法だと思います。

また、最近ではあまり使われないかもしれませんが、陸閘(りくこう)という言葉もあります。

水害は突然起こります。明日から集中豪雨が来るという時には、待ったなしで対策をする必要があります。その際、水の進入路となる場所に簡単に組み立てられる防水壁として、陸閘を設置します。多くは金属製のものですが、昔は木で作られていたこともあります。

神戸の海岸方面では高潮問題があり、湾岸近くのおしゃれなビルが建っている所では、今でも陸閘がさりげなく設置されています。

このように防水壁を設置し、さらに陸閘を立てておけば、水害をシャットアウトできます。若干の費用は必要ですが、こういう手法もあります。

「そうは言っても高いから」という時にリスクを軽減する方法として、まずは自宅を耐水化することが挙げられます。

水に浸かるのは仕方ないとして、その時に被害を最小限に抑える策で、例えば壁や床の耐水化があります。特に壁の中に隠れている断熱材は要注意です。断熱材が繊維系のものだと水が染み込んでしまって、復旧時にまるまる剥がして取り除かなければなりません。

そこで、断熱材に板状の樹脂系の水を吸わない種類のものを選べば、水が引いた後に交換しなくても断熱性能も保てます。

また、浸水の時に心配な要素として、電気があります。もし1階が浸水した場合でも、2階に緊急避難して電気を確保できるように、1階と2階の回路を分けておく対策も考えられます。このような手段が、家を建てる時の基本的な水害対策だと思います。

最近では、基礎の換気口にダンパーを装備して水が入らないようにする、陸閘を兼ねた玄関扉を設置するなど、水害対策を講じているハウスメーカーもあります。もし水害リスクが高いと思われるのであれば、このような準備があるハウスメーカー・工務店で家を建てるというのも、有効な水害対策だと思います。

最後に、すでに家を建てているけど水害対策をしていなかった、リスク認識があまりなかったという方向けの対策を3つご紹介します。

1つ目が、排水路のチェックです。例えばベランダで雨漏りが起こる場合、その原因はベランダのドレン(排水口)に枯れ葉などが詰まって、水が流れなくなっていたため、ということがあります。同様に、家の周りの排水溝も詰まっていることが意外とありますから、排水路のチェックは定期的に行っておきましょう。

特に雨が多い季節に入る前には、自治会などで水路の確認を行うこともあると思います。その際に一緒に排水路のチェックをすると良いと思います。

また、土嚢(どのう)も準備してください。陸閘は費用が高いし大袈裟だと感じるのであれば、手軽な対策として良いと思います。ホームセンターに行けば、土嚢袋が売っています。ちょっといいしっかりしたものに砂を入れて、土嚢を作ります。

袋に入れる砂は自分の力で持てる程度、最大でも20kg程度がおすすめです。20kgでも重いと感じる場合は、もっと小さくして、その分数を増やしてください。作った土嚢は邪魔にならない所に積んでおいて、いざ水が浸入してきたら玄関先などにを積むなどして対策することも有効です。

2つ目に、これは土嚢と類似ですが、堰(せき)の設置があります。具体的には、玄関や出入り口に、板を差し込めるようなレールをあらかじめ設置しておきます。そのレールに分厚い板を数枚重ねて設置すると、堰ができます。

水田では水路に堰を設け、水位を上げて自分の田んぼへと水を引き込む、いわゆる「我田引水」の手法があります。この堰は水のコントロールをすると同時に、水を押し返す機能もあります。

陸閘のような大きな設備を設けるのは難しくても、堰ぐらいであれば日曜大工レベルでもできないことはありません。こういう対策もやっておくと良いと思います。

最後に、下水逆流への備えがあります。水害で氾濫する・被害が起きる前に、地域によっては下水が逆流することがあります。一番困るのは汚水です。トイレの排水が逆流してきたら嫌ですよね。

こういう所には、水嚢(すいのう)が有効です。しっかりしたビニール袋に水を入れて作るもので、普段から作っておく必要はありませんが、水害が予想される際に用意します。

例えば、「今日の夜危ないかも」という時、寝ている間に逆流が起きてしまうのは嫌ですよね。こういう時に水嚢を、お風呂・台所・洗面所などの各排水口に置いておくだけで、その圧力が下水の逆流を防ぎます。

また、万が一軽度の床下浸水が起きた時、床下収納から水が吹きあがってくることがあります。今の家の多くは、構造用合板のようなパネルで床面を押さえています。これにより気密性も高まり、水もガードしてくれます。しかし、床下収納は弱点となることがあります。

もしそのような危険がある場合は、床下収納に重しを乗せたり、ガムテープで目張りすることも有効です。

最後に紹介したものは住んでからの対策です。家を建てる前であれば、今回ご紹介した手順で対策を進めてください。まずは自分の家が、最大でどういう被害の可能性があるかのチェックから始まり、これらの方法で自分たちが一番選択しやすいものを選んでください。

家づくりの計画が進んでしまって、今更後戻りできないタイミングでこの動画を見て、不安になっている人もいらっしゃると思います。そういう方は、防水壁を後付けできないか検討する・土嚢準備のスペースを考えておくなどして、凌いでください。

災害は忘れた頃にやってきますので、今日お話しした内容を頭に置いてもらえたらと思います。

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