コストを抑えた全館空調「ホールエアコン」を実例で紹介
今回はすごく暑くなってきましたので、全館空調のお話をしたいなと思います。今、いろんな会社さんが取り組んでいる空調です。全館空調というのも種類がたくさんあって、ほとんどの会社さんが今はやってるのかなと思うんですけど、やり方も初期費用もそれぞれなんです。多いのは200万円ぐらいの大きな空調の機械をズボンと、たぶんこういうところに扉をつけて入れて、その機械で運用するハウスメーカーさんですね。僕たちが昔から取り組んでいるのは、なるべく初期費用とランニングコストを考えて、こういう家庭用の普通のエアコンでやりましょうという方法です。多いのは小屋裏エアコンと床下エアコンで、2階建てなら小屋裏空間を作って、そこにエアコンをポンと置き、換気扇で各部屋に送る方法をよくやっています。ただ今回ご紹介したいのは「ホールエアコン」です。名前の通り、ここは2階のホールじゃないですか。そこに普通の14畳用エアコンを1台つけて、この1台で家中を全部涼しくしましょうというやり方です。
小屋裏エアコンの場合は、小屋裏の空間を冷やして各部屋にダクトで送りますが、ホールエアコンの一番いいところは、送るための換気扇やダクト工事がすごく少なくて済むことです。ここはホールのど真ん中、家の中心に持ってきています。ここから冷たい空気が出て、正面は1階に行くので、1階のLDKには直接ずっと空気を送ることができます。さらに、この下に2つ換気扇をつけています。ここで空気を吸って、このモデルハウスなら下の寝室とウォークスルークローゼットに落とし、チャンバーで各部屋に送っています。もう1つはトイレとランドリールームに落としています。そして横についている換気扇は、例えばこの6畳の部屋を壁で区切って子ども部屋にした時のためです。思春期になったら、開けっぱなしというのもなかなか嫌ですよね。扉を閉めると冷たい空気が入りにくくなるので、洋室のスイッチを押してもらうと換気扇が動き、冷やした空気を直接部屋に送れます。万が一個室になっても、そんなに暑くならず涼しい空間になります。
これだけでは弱いかもしれないので、あまりされているところは少ないですけど、ここにも換気の穴を設けています。これは穴が開いているだけで、逆にここから空気を吸っています。扉の下はだいたい1〜2cmぐらい開いているので、そこから空気が中に入り、ここへ出てくる。つまり、この部屋にも冷たい空気を吸い込むための吸い込み口なんです。これがあることで、換気扇で空気を送るだけでなく、それ以上の量を部屋に持ってくることができます。だから、このホールエアコンは間取りがすごく難しいです。階段のところがホールになるので、なるべく階段を真ん中に持ってきて、直接LDKへ落とせるようにする。さらに各部屋へどう送るかというところが、設計上すごく難しいんです。ただ、仕組みを分かって設計するとコストが全然違ってきます。ダクトも最低限ですごく短く、ここも下にポーンと落としているだけなので、たぶん2mもありません。この換気扇を外せばダクトを入れ替えられるようにもしています。ダクトが気になる方は少ない方が安心されると思うので、経路を確保し、長さを短くするためにも設計が重要なんです。
そして、特に難しいのが空気をどう循環させるかです。冷たい空気は下に落ちますよね。その空気を今度は下を通して、ランドリールームの方へ集めるようにします。ランドリールームや脱衣室はすごく湿気が多いので、そこの天井に穴を開けて、ここにつなげています。この上に穴が開いてるでしょ。ここへ湿気の多い空気がずっと集まり、そこから出てくる。こういうエアコンは上から空気を吸うので、一番湿った空気をここから出してエアコンに吸わせ、除湿した空気をまたここから出すように設計してあげると、家の中で空気が循環するんです。あとはエアコン1台でできることに加えて、小屋裏エアコンと違うのがメンテナンス性です。小屋裏だと、いちいち上がってフィルターを掃除しないといけませんが、ここならその場でできます。埃が溜まったら取れるので、メンテナンスも楽です。
もし故障しても、ハウスメーカーさん専用の機械ではないので、この場所ならヤマダ電機さんやジョーシンさんなど、普通の電気屋さんにお願いして交換できます。同じ機種でもいろんなところで値段を比べて一番安いものを選べますし、職人さんも作業しやすいので交換しやすい。特別な機械を入れると専門業者を呼ばないといけませんし、高いイメージもあります。壊れた時に同じ部品がなければ、全部さらに替えないといけなくなって、200〜300万円のお金がかかってしまうこともあります。だから先のことを考えると、なるべく単純な仕組みでできる方がいいかなということで、ここでは1つの例としてホールエアコンを採用しています。
1階に降りてきました。先ほど上で説明したところなんですけど、ここの上がすぐ、さっきの換気扇です。ここまでダクトが入っているだけなので、すごく短いでしょ。こういう箱を作って、こちら側に空気が出る。向こう側はトイレなので、トイレにも風が落ちて、両方に落ちる感じです。もう一方はウォークスルークローゼットと寝室に冷たい空気を落としています。そして、さっき言った肝というか、空気を循環させるために必要なのがこの開口です。ここはランドリールームで、その横がウォークスルークローゼットです。天井を高く上げているのは、湿気には天井の高いところへ寄っていく性質があるからです。なおかつ、ここを高くすることで、???ということです。ここに湿気を集めて上へ上げると、この上に穴が開いてるでしょ。ウォークスルークローゼットの上にも同じように穴が開いていて、そこから先ほど見たエアコンの上につながっています。エアコンが吸う力を利用して、ここから上へ空気を吸わせ、循環させているんです。水回りをどこに配置するか、どこからエアコンへ吸わせるかというのはなかなか難しいです。僕たちもいろんな失敗をしながら、ここに行き着いて分かってきたところなので、この辺は工夫が必要かなと思います。
ここまでホールエアコンのメリットをお話ししてきましたけど、もちろんデメリットもあると思います。それは、なるべくオープンに暮らすということです。このモデルハウスも空気の循環を良くするために、結構2階とつながってるでしょ。家族だけなら、なるべくずっと開けておいて、お客さんが来た時だけ閉めるというような、オープンに暮らす生活スタイルが好ましくなります。ですから、プライバシーを重視したい方には、ホールエアコンは工夫していかないといけない部分が出てきます。例えば声についても、間取りなどである程度工夫はできますけど、一定は聞こえてしまうところがあります。その辺をご注意いただいて、こういうオープンな暮らしでいいよ、家族を常に感じながら暮らしたいという方には、ぜひホールエアコンをおすすめします。一方で、ある程度区切ってプライバシーに重きを置いた設計にしたい方は、私たちがよくしている小屋裏エアコン、小屋裏にエアコンを置いて、ダクトは増えますけど各部屋に送るという仕組みも検討していただければと思います。


