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【50年先も魅力がある家】中間領域法で家の外観を考える

今日は50年先も魅力がある家をつくるにあたって、大事な話をしていきたいと思います。それは「中間領域法」というものです。家の外観を考える際に取り入れるものです。

この「中間領域法」は僕の師匠である飯塚豊先生は常々おっしゃっていることです。この設計の手法で家の外観を決められています。「中間領域法」にはいくつかバリエーションがあるので、解説をしていきます。難しく聞こえるかもしれませんが、僕は大事な話と捉えているので、しっかり聞いていただけたらうれしいです。

まず、飯塚先生はこんな風におっしゃっています。「魅力のある建物・建築には、ほぼ間違いなく内部と外部の間に内と外を関係付ける魅力的な仕組みというものがある。その魅力的な仕組みというのが中間領域なんだ」と。

一回聞いただけで理解するのはなかなか難しいと思います。僕も初めて聞いた時は、大学生になって教授の授業を聞いているような気持ちでした。僕が難しい顔をしていたので、飯塚先生は違う言い方で解説してくださいました。

「建物にはそれぞれ内部という性格、外部という性格があるんだけど、両方の性格を併せ持っている空間がある。例えば日本の家だったら縁側がそうです。あるいは町を歩いているとオープンカフェというのがありますよね。ああいう空間が代表的な中間領域ですよ」ということを言われてようやく、僕は「あぁ確かに」と思いました。

僕は子どもの頃、夏休みに田舎のおばあちゃんの家に行っていました。今でも「夏になったら帰りたい」「また行きたい」と思うのには、あの縁側に座ってすごしたいという気持ちも含まれています。

また、僕の場合、街を歩いている途中で喫茶店に入ったりすることは少ないですが、気持ちのいい日に散歩していて、オープンカフェで楽しそうにお茶を飲んでいる人の姿を見ると「自分もあのお店でお茶したいな」となります。

飯塚先生は、この中間領域というものを家の外観に取り込めるとおっしゃいます。それを「中間領域法」と呼んでいて、強く提唱されているんですね。

ここのところ、ウクライナ危機とか、いろんな世情のインフレや金利の上昇で、家づくりに対する意欲が落ちている人が多いんじゃないかなという印象もあるので、豊かな空間をつくる話として、今回改めて解説したいなと思って話をしている次第です。

これまで日本というのは、50年住める家を目指してきました。でも、これからは50年住めるのは当たり前で、50年先にも魅力のある家というのを考えていく段階なのだと僕は思っています。

みなさん想像してみてください。今の日本とヨーロッパの古い街並みを見て、どんな印象を持ちますか?ヨーロッパの古い街並みには100年、200年以上建っている建物がたくさんありますよね。でもそれを見て「古くて貧乏だ」とは思わないですよね。むしろ「豊かで美しい風景だな」と感じる人が多いはずです。

これからの日本の家づくりが同じようになれば、今の家づくりの状況が変わるかもしれないし、「こういうことがあったから日本の家づくりは変わったんだ」ということになると思います。みなさんにも豊かな家をつくってほしいので、中間領域法というのを知っていただきたいんですね。

この中間領域、飯塚先生は現実の設計に落とすには9つのパターンがあるとおっしゃっています。スケッチに説明モデルを描いてみました。

代表的なものの1つが「中庭型」です。四角の空間の中にポコッと中庭みたいな形で開けると、外にあるものだけど、内側の要素もある曖昧な空間ができます。

2つ目が「分島型」です。群島という言い方もします。中庭型の発展のような感じで、1個1個のくくりが織りなす細い空間みたいなところです。今でも下町に行くと入り組んだ道があって細い空間がある、みたいなことないですか?古い街中で「なんだかいいな」と感じる空間は分島型の空間であるケースがあります。「分島型」は1軒の家でもできるし、隣近所の家全体で作ることもできるものになります。

3つ目が「フレーム型」です。これも割と典型的なパターンで骨組みだけあるようなものになります。外にある空間だけれど、フレームという、ある種の結界みたいなものが組んであることによって、その中にいると守られているような気分になります。

4つ目が「格子型」です。床と壁はあるけれど、壁が格子になっていて筒抜けになってるというものです。

5つ目が「らせん型」です。迷路とかも該当します。入り組んだ中に入っていくものです。僕が描いた絵は屋根がなくて全部オープンになっていますよね。オープンですが、緩やかに囲みが作られているものです。飯塚先生は「こういう空間も中間領域になりますよ」とおっしゃっています。

6つ目が「スロープ型」です。絵を見ると「これがなんで中間領域なの?」と思われる人もいらっしゃると思います。スロープ型の例が、僕が住んでいる姫路市にあります。姫路城です。

姫路城は、お城そのものも素敵ですが、お城を囲むもの内堀という堀も魅力的です。堀があって、お城側の方には石垣が積んであります。単なる壁ではなく、しっかりとした面積があって、ここに上がると「スロープ型」の中間領域の意味が感じられます。

お城の中って、1段低い平地みたいなのがよく見られます。階段やスロープで石垣の一番上に上がると、完全に外なんですが、なぜか守られた空間のように感じられるんですね。穏やかに過ごせる空間になっていて、姫路城の石垣の上だと、場所によっては花見シーズンにシートを敷いて家族とかがご飯を食べている光景を見ます。これがスロープ型の例になります。

同じく兵庫県に竹田城というお城があります。マチュピチュの日本版みたいな所で、雲海の上に石垣だけがあってステージのようになっているんですね。竹田城もそういう意味で言うと、スロープ型の中間領域が成立してる所だと思います。

7つ目が「ピロティ型」です。僕の大好きな巨匠ル・コルビュジエがよく使っていたもので、細い柱のような物で建物が浮かせてあるんです。この中の空間が、外でも内でもない空間として成立しています。

8つ目が「入れ子型」です。イメージがしにくいと思います。この「入れ子型」も姫路城がいい例になります。先程の話のとおり、姫路城というのは内堀があって、石垣という囲みがあって、その中にお城が建っています。石垣という物の中に、入れ子としてお城があるんですね。シンボルなので背は高いですが、その姫路城の石垣の中には三の丸広場と言って広い広場があります。ここはすごくいい場所です。

外にある空間ですが、石垣で守られた安全な空間になっています。さらに、そこにある建物は入れ子型として成立しているので、とても豊かなものなんです。「さすがお殿様が住んでいた所だな」「国宝だな」と感じます。石垣に囲まれているのは、最後の砦という意味もありますが、空間としても非常に豊かなものになっています。

今はお城を例に例えたので大袈裟かもしれませんが、これと同じ要素を持ったものが、個人のお家でも作れるということです。

そして9つ目が「庇型」です。これは最も多いパターンだと思います。日本の縁側は、まさに「庇型」の中間領域です。縁下があって、上に丸太の大きい桁が掛かっているんですが、柱は全くなくてスカ−ンと開いた空間になっています。上に庇が被せてあるような空間です。

この話を聞いて、「家の間取りも決まって、ほかの内容も進んで、大体のことが決まったら、この設計をもとにどれかの中間領域をくっ付けるのいいな」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。でも、その進め方はおすすめしません。

中間領域というのは、間取りを考える前に計画しないと、今お伝えした豊かさが損なわれてしまいます。あとからくっ付けるとなると、単にウッドデッキを作るようなものになってしまいます。

僕は最近よく思うことがあります。うちの近所でも家がたくさん建っていて、ウッドデッキをつくられているお家が多いです。でも、ウッドデッキで楽しく過ごされている姿というのは、あまり見ません。カンカン照りの夏の日にウッドデッキで汗をかきながらバーベキューをやっている家族は時々見ますが「毎年やりたい」という気持ちにはなりにくいですよね。

最初は物珍しさでトライするけど、数年のうちにやらなくなってしまったというケースは多いです。そして、その空間はおそらく中間領域ではないな、と思います。

この中間領域は、なかなか難しい概念なのでわかりにくいと思います。僕もまだ飯塚先生のように上手に解説できません。

でも中間領域というのは、これから50年の暮らしはもちろん、50年先であっても魅力的に映るものの1つです。今回のパターンを知っておく、そしてそのことを頭に入れた上で家の外観を決めていただくと、格好良くて、今も50年後も、誰が見ても「この家は魅力的とだなぁ」ということに繋がっていと僕は思っています。

中間領域は知恵次第で、そこまでコストを掛けずに取り入れることができます。豊かな空間づくりに必要な方法ですので、ぜひ頭に置いて、家づくりに取り組んでいただけたらと思います。

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