無垢床の仕上げは何が良いのか?
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今日は、付加断熱をやった方がいいのかどうかの判断方法について、お話しします。
あるお客様から「断熱をしっかりやりたいんですけど、やっぱり付加断熱はやった方がいいですかね?」という質問を受けました。そのことについて解説していきたいと思います。
みなさん付加断熱ってご存知でしょうか。文字通りですが、付け加える断熱ということです。まず断熱には内断熱と外断熱があります。建物の柱とか梁のスペースに断熱を入れるのを、内断熱と言います。それに対して、柱とか梁の外側に断熱材を使うことを外断熱と呼んでいます。
簡単に言うと、付加断熱は内と外が一緒になったものみたいに捉えてもらってもいいんじゃないかなと思います。ベースは内断熱ですが、それに外断熱材を付加する。こういうことを付加断熱と言うのです。
付加断熱なんて専門的な言い回しなので、ダブル断熱と言う方がお客様にとってはピンと来るかもしれません。やる方が良いのか・悪いのかと言うと、それはやったに越したことはないです。断熱材が増えるわけですから。
また、いわゆる木地や柱とかの木材は、鉄とかアルミほどではありませんが、断熱材に比べると幾分かは熱を伝えやすいです。厳しい見方では、断熱に対してこういう所が熱橋になるとされます。
僕たちが思う熱橋は、耐震の金物なんかが貫通していて、その金属の所を熱が伝わってきてそこが結露しやすい、みたいなことを思います。しかし、こういう木材も熱橋になり得るとすると、外に断熱材を貼ってカバーするわけなので、熱の移動が防げるのです。
サーモグラフィーで見たら一目瞭然なんですけど、断熱材を貼る前に見たら、温度は厳密に言うと差があるので、柱の部分と断熱材の部分で色が変わる。でも外の付加断熱を付けると、これが途端に均一になります。なので、より良い。これは間違いがないんです。
冒頭の方の「やった方がいいですかね?」というのは、ただ良いか・悪いかという質問ではないと思います。例えば、付加断熱をやったらその分のお金が掛かりますよね。「お金をある程度掛けないと思う性能は出ないですか?」ということを心配されて、聞かれたのだと思うんです。
そうすると話は違ってきて、そもそも壁の評価はどうやってするのか、というところに戻らないといけません。壁の評価方法はいろいろあるんですけど、端的にわかるのは熱抵抗値だと思います。
例えばグラスウールよりネオマフォームの方が優秀だとか、セルロースファイバーと比べてグラスウールはどうだとか。こういうことを言う時、強弱を表すものに熱伝導率という言葉があります。これは文字通り、熱が伝わりやすい率を表わすものです。
それでいくと、物質のある厚さ単位あたりに対しては、グラスウールとネオマフォームを比べたら、ネオマフォームの方が優秀だということになります。また、セルロースファイバーとグラスウールの普通の16Kぐらいで比べたら、厳密に言うとちょっと差があるかもしれませんけど、ほぼ一緒みたいな評価になるのです。
でも、断熱の性能ということになると、熱伝導率ということだけでは評価ができないんです。なぜかと言うと、断熱材に厚みがあるからです。もちろん、薄いよりも分厚い方が良いに決まってますよね。
「◯◯という断熱材を使えば良い」と言うのは乱暴な話です。「何mmあるいは何cmの断熱材を使うんですか?」ということに左右されるからです。それを評価に置き換えたのが熱抵抗値という言葉になります。一般的に熱抵抗値は、断熱材の厚さを熱伝導率で割って出します。単位は㎡K/Wで、計算式は厚さ[m]÷熱伝導率[W/(m・K)]です。
例えば、一般的に使うことの多いグラスウール16Kの10cmだと、どうでしょう。10cmはmに置き換えたら0.1になりますから、0.1÷0.038(熱伝導率)で2.63ということになります。
また、さっき申し上げたネオマフォームはフェノール系断熱材です。外断熱に貼ってあるのは40mmのものが多い印象ですが、40mmだったら0.04÷0.02になります。グラスウールの熱伝導率0.038と比べたらネオマフォームは0.02だから、半分ぐらい熱が伝わりにくくて優秀ですよね。しかし、40mmしかなかったら1.18の熱抵抗値になります。
熱抵抗値というのは数が多いほど断熱性が高いことになるので、この比較で言うと、グラスウールがダメでフェノールがいいということにはなりません。もちろんフェノールを50mmにしたら2.5だから、ほぼ拮抗するんですけどね。
また、EPSという発泡スチロールみたいな物がありますが、我々の会社もこれを付加断熱で使っています。EPSにはいろいろ種類があるのですが、一応今回は熱伝導率0.038ということにしておきましょう。これが5cmだったら、熱抵抗値は1.31、2cm5mmだったら0.65になります。ということは、グラスウールの16Kを内断熱で使って、2cm5mmのEPSを使った場合、熱抵抗値は合計3.28になるのです。
例えば、内断熱でグラスウールを32Kタイプにして、柱の太さは大体105mmが多いので目一杯105mmを使うと、0.105から0.32になると3.28㎡K/Wになるんです。そうすると、先程の熱抵抗値と同じになりますよね。
こういう風に、内断熱にして付加断熱はなくてもいいという判断も、できないことはないです。もちろん厳密な外皮計算では、柱とか間柱の分の弱い部分のことも鑑みるから、完全に一緒にはなりません。ざっくり計算なので、あまり細かい話とは思わないでくださいね。
付加断熱をコストと両建てで、ある一定の性能を得たいと考えるなら、こういう風に熱抵抗値で押さえて、熱抵抗値あたりにコストがどうかというところで判断をしてほしいです。難しいかもしれませんが、プロの方に相談すればきちんと答えてくれると思うので、それを持ってご自分の家をどうするかを考えてみてください。
寒冷地では付加断熱をやっておいた方がいいかな、と僕も思います。しかし5地域・6地域なら、付加断熱をしなくてもある程度いけるという感触もあります。
熱抵抗値をはじめとする建物の断熱性能は大事ですが、もっと大事なことは窓の性能です。例えばEPSの50mmじゃなくて25mmで、HEAT20のG2と言われてるものをクリアしようとすると、窓は一部トリプルを使わないと難しいという印象があります。断熱性もそうですが、付加断熱したから全てがOKではなく、窓の性能も考えなければなりません。
外断熱みたいな話は、外付加と僕たちが呼んでいる、外に付加断熱をやるという方法が主流です。例えば、用途地域によって壁面後退の問題で付加断熱したら、1m取れないという問題があったりするじゃないですか。
それから、民法で言う50cmを切ってしまって、近隣の同意が必要になることもあります。隣の人と折り合いが悪くて取れない時であっても、付加断熱したい場合には、こういう方法もあります。内付加断熱と言われているものです。
建物は大体910mmのモジュールで割って構成されています。柱通りの外に外付加をやるんですけど、それが向かない時にはどうするかと言うと、内側に付加するんです。そういう方法もあります。
この時に1つ問題になるのが、部屋内が狭くなるという問題です。これは木造の建物に関する特権みたいなものですが、外側の外周に相当する所のグリッドだけ、少し広くするという面白いやり方があります。
そうすると、広くなった分が外に広がるので、内側に付加断熱してもトータルであまり部屋内の広さは変わらない。こうやると狭さから逃げられることもありますので、こんなことも設計の選択肢にはあるということを知っておいてください。
ここまで考えて僕が一番思うのは、お客様が本当に欲しいのは、冬は暖かくて夏は涼しい家ですよね。そう考えたら、付加断熱をやるかどうかより、日射コントロールをどうするかの方が、影響が大きいと思います。
冬場はしっかり日射取得をして、夏場はしっかり日射遮蔽をしないと、いくら断熱性能と言ったところであまり意味がないのです。これらの掛け算ということで、付加断熱は考えた方がいいと思います。これらは高度なバランスが必要です。何か端的に1つやったからいいとか、そういうことではありません。
大して知識がない住宅営業の営業マンが、会社のトレーニングで教えてもらったからといって、「付加断熱(ダブル断熱)をしてるからうちの家はいいですよ」と言い切っている人もいると思います。確かにそれでいい部分もあるけど、それより大事なこともあるということを覚えておかないと、画竜点睛を欠くという感じになる。そんな気もします。
加えて、僕は松尾先生の門下生なので、日射コントロールだけでなく空調法も掛け算に入ってきます。ここまで行って初めて快適な家で、コストバランスが良い家になるんじゃないかなと思います。付加断熱をやる時は、そんな視点を持っていただいて、判断いただけたらと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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今回は住宅ローンの頭金問題について解説します。
家づくりを考える時に、住宅ローンを利用する方がとても多いですよね。その時に最初に頭に浮かぶ問題として、頭金に関することがあります。頭金はどのように考えたらいいですか?また、どれくらいの頭金が必要ですか?という質問を受けました。
この「頭金はどれくらい必要か」という質問をよくよく考えると、2つの意味で使われることあると思います。
まず1つ目に、頭金はどれくらいの額を用意すれば、借入に関して有利になるのか、あるいは不利になるのかという意味があります。これに関しては、そんなに難しいことではありません。
1つの見極めポイントとして、住宅ローン控除があります。以前よりは控除額が少なくなりましたが、現在は住宅ローンを借りる際に、年末の借入残高に対して上限0.7%を、その年に納めた税金から控除することができます。この控除は13年間続きます。
さまざまな所得パターンがあると思いますが、例えば税金(所得税+住民税)を年間20万円納付している人の場合を考えます。頭金を支払った後の借入額が3,000万円だとしたら、その0.7%なので、21万円が控除されることになります。
しかし、控除は納税額が上限なので20万円ということになり、1万円分の控除額を損することになります。それなら、20万円分の控除で済むような形にするために、借入金額を小さく、頭金をもう少し増やした方がいいのかもしれません。
また、この控除は13年間続きます。だんだん借入残高が減っていくことも考慮して、0.7%の控除がどの程度有効かという点も検討しなければなりません。このような考え方で、どれくらいの頭金を用意すべきかという大体の答えが出てくると思います。
2つ目の見極めポイントとして、金利優遇があります。例えばフラット35では、自己資金が借入額の10%以上ある場合、金利優遇が受けられる制度があります。これはフラット35だけでなく、他の銀行でも同様の制度がある場合があります。頭金の割合によって金利優遇の幅が決まるケースもあります。
頭金をどれくらい用意すると有利か・不利かを考える際には、まずライフプランを組んで試算してみることが大切です。重要なポイントは、住宅ローン控除を13年間しっかりと受けることです。
頭金をたくさん払った方がいいのではないかと考える人は、とても堅実で慎重なタイプです。しかし、お金の問題はきちんと計算すればわかるものです。ですから、あまり怖がらずに試算して金額を検討すれば、その方にとって適切な頭金の額がわかると思います。
次に、2つ目の意味合いを考えます。若いご夫婦が、とにかく家が欲しいという気持ちになったそうで「頭金はどれくらいないと建てられませんか?」と聞いてこられたケースがありました。もっと極端に言うと、「頭金がなくても建てられますよね?」という感じでした。
こういう方にお話しする1つの考え方として、まずは家を建てるためにかかるお金を知っていただくことが重要だと思います。
土地がすでにあって家を建てる人は別ですが、土地から探す人にとっては、土地代、家の建物代、そして諸経費がかかります。諸経費には、登記費用、住宅ローンを借りる際の銀行の保証料、土地の取引手数料、火災保険料などが含まれます。
一般的に、諸経費は土地がある方でも100~150万円ぐらい、土地がない方だと200~250万円ぐらいかかります。もちろん借入の内容によって変わりますが、目安としてそれぐらいは必要です。
土地・建物代をローンで払うのは当たり前ですが、このケースの質問をされる方は、諸経費分も住宅ローンで何とかならないだろうかという考えだと思います。
商品にもよりますが、住宅ローンに諸経費分も上乗せして払うことは可能です。しかしそれでも、完全に現金がゼロで家を建てるのは難しいです。これが結論です。
なぜかと言うと、例えば土地から探す方の場合、気に入った土地に申し込みをする際には手付金が必要になります。通常、土地代の1割が手付金となるので、現金がなければどうしようもありません。
また、住宅会社や工務店と契約する際に契約金が必要な場合もあります。これもすべてが始まる前に一度出さなければならないため、ここでも現金が必要になります。後からそれを住宅ローンに上乗せすることはできるかもしれませんが、当座は現金が必要になります。どうしてもお金がない場合は、親御さんなどに借りないといけないかもしれません。
さらに、家づくりが始まると、今住んでいる所から引っ越すので、引っ越し費用がかかります。また、工事中には祭祀があります。地鎮祭で神主さんにお礼を包んだり、上棟の際に大工さんに差し入れをするのにも、お金が必要です。これらはローンに関係なく現金が必要になるため、現金がなくては家を建てられないということになります。
2番目の質問をする方で「私の年収がこれぐらいなんですけど、建てられますか?」と聞かれたケースがあります。このような考え方も結構乱暴だと思います。例えば、若い方で年収600万円だったらそこそこ貰われている方かなと思いますが、子どもが1人のケースと3人のケースではやはり違います。ケースバイケースで、年収がいくらだからどう、という決め方はできません。別の尺度で考える必要があると思います。
このような質問をされる方には、私はちょっと危うさを感じます。60歳ジジイの説教がましい話になりますが、家が欲しいのはわかります。しかし、現在手元に貯金が全然ないのに家を建てたいと考えるのはちょっと待ってほしいと思います。その前に、果たして自分たちが今貯金ができているのかを確認してほしいのです。
住宅ローンを返す期間は長いです。35年ローンであれば、例えば現在30代前半の人であっても、65歳以上まで支払いが続く計算になります。仮に65歳定年の会社だとしても、定年後にまだ支払いが残っている状態は望ましくありません。年金からローンを払うなんて苦しいことはできません。
そうすると、どこかで繰り上げ返済をするべきなんです。少なくとも65歳で定年になった時には残債をなくして、そこからは年金で暮らすようでないと、危なっかしいですよね。
そのためには、住宅ローンを返しながらも同時に貯金をする必要があります。これは家を建てた後に考えればいいということではありません。私は、家計を適切にやりくりする基本的なスキルだと思います。厳しい言い方をしますが、貯金ができていないのに住宅ローンを借りて家を建てることは、時期尚早だと思います。
説教がましく言っている父ちゃんみたいに聞こえるかもしれませんが、まさにそうなんです。自分の娘のことを思えば、そういう気持ちです。
そして、最近の報道では年金だけで老後を暮らすのは厳しいと言われています。一説では2000万円程度の貯金が必要と言われていますから、ますます貯金が必要になります。今回はローンを返済することだけを考えた話ですが、老後の資金問題も別の尺度で考えなければなりません。
ですから、今回の質問を考える時は同時に、自分たちはどれくらいのペースで貯金できているか、貯金ができる家計のやりくりになっているか、ということも頭に置いていただいて、どのように頭金に取り組むかを考えていただくのが一番健全だと思います。
説教がましい話だと感じられた方がいらっしゃったらごめんなさい。しかし、「良薬は口に苦し」という言葉もあります。もしアイタタッと感じられた方がいらっしゃったら、この話を肴にゆっくりと家族で話し合い、作戦を練っていただければと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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今日は、「家づくりを本格的に始めようかな」と思っている方に向けて四方山話をお話ししたいと思います。
それは、この10年間ぐらいの間に、ずいぶん家づくりに対する考え方が変化したというところです。そういうことについて今日は喋っていきます。
昔話で恐縮ですが、30年以上前、日本の家づくりを考える時に呪いの言葉があったと思うんです。欧米の方が日本に来て、日本人の暮らしを見て揶揄した「うさぎ小屋」という言葉です。年長者の人は聞いたことがあると思いますが、最近の若い人はわからないですかね。「日本の家はうさぎ小屋みたいだね」とバカにされたような感じがありました。
ちょうど日本が怒涛のように成長していたから、世界から「Japan as No.1」とか「おお!」と言われていました。ただ一方で、「ちょっと変なんじゃない?」と思われる感じもあったんです。そうして揚げ足を取るような形で、そんなことを言われた時代がありました。
業界全体というか、日本人の意識の中で「くそー!」みたいな感じだったのでしょうか。僕は大手ハウスメーカーに勤めていたことがありますが、大学生の時もそうでした。
住宅設計するにあたって、1人あたりに必要な面積の目安を先輩から教えてもらえるんです。その先輩たちが言っていたのは、1家族のうち1人あたり9〜10坪ぐらいの広さを見ると、「うさぎ小屋」みたいにバカにされない家になると。それを頭に置いて、プランニングの全体のボリューム感を出してください、みたいな話がありました。
1人9坪ぐらいだと、4人家族だったら36〜40坪で計画する感じです。40坪と聞いたら結構大きいですよね。5人家族に至っては、お子さんが3人いらっしゃる家なら45〜50坪ぐらいの家がいいと僕たちは若い頃に解釈していました。
実際に約30年前、現場の最前線にいたハウスメーカーの営業マンさんが「お客様にウケたプラン」と言っていたのは、4人家族で36坪のプランが多かったです。
一方で、30年ぐらい前の日本の家には、高気密・高断熱の家もありました(パッシブ設計のOMソーラーさんとかも学生の頃に憧れました)。しかし、ああいうものは一部の尖ったマニアの人が好むもの、みたいな感じがその頃の家づくりにはあったのです。
考えてみると、ローコスト住宅が登場したのは1995〜2000年ぐらいでした。ローコスト住宅には売りがあったものの、営業現場では「同じ値段なら大手のハウスメーカーさんより大きな家ができますよ」とか、「同じ面積だったらコストが安くなる」というフレーズが使われていました。
ローコスト住宅時代もうさぎ小屋への反発があったのかわかりませんが、「家はある程度規模が必要だ」と言って、大手ハウスメーカーさんはどんどん仕様が良くなって装備が充実して、高くなっていったようです。彼らは上場企業ですから、売上を右肩上がりに上げていかなければならないのもあったと思いますが、それがスタンダードで実に良いものだという空気感がありました。
翻って言うと、うさぎ小屋以前の日本の家屋に対する考え方は極端でした。昔の長屋に暮らしていた人たちは、玄関を開けたらすぐ土間があって奥には一間があって、そこで家族が寝たり起きたりして、炊事場は共同の井戸でした。井戸端会議なんて言葉がありますが、炊事場を長屋の中の一角に中央に寄せて作っていた頃からの風習ではないかと思います。
その頃の暮らしはある面は超合理的で、その一間で家族が起きたり寝たりして、朝ごはんを食べたらちゃぶ台を畳んで、休みの日はゴロゴロするような感じでした。小さいけど結構すごい叡智だったと思います。
話は変わりますが、2009年に「シンプル族の反乱/三浦展」という本が出版されました。副題は「モノを買わない消費者の登場」です。この本によると、物を消費しない若い人たちが増え、手仕事や自然素材に回帰する傾向があるということです。
ちょうど僕もその頃から、家づくりをお手伝いするお客様の意識がガラッと変わったような印象を受けていました。例えば、小さな家で豊かに暮らそうという潮流です。もっと言うと、うさぎ小屋に反発して大きくしたけど、小ささの中に豊かさがあるんだということに気づいた瞬間でした。
小さな家にすると何がいいかと言うと、小さくした分コストが減るじゃないですか。総額を抑えるという意味もありますが、ちょっと絞れた分だけ質の良いものにできますよね。断熱性能や省エネ性能を高めて、光熱費を抑えながら人間も快適に、冬は暖かく夏は涼しく住む。こんなことを考える人が多くなってきました。
ローコスト住宅を支えたものに新建材の発達があったのですが、これが自然素材に回帰していきました。また、同じ敷地でも小さい家にしたら、スペースが空くから庭が作れます。家自体が小さくなるので、壁・屋根の面積も小さくなり、メンテナンス費用も抑えられますよね。
何より一番は、面積が小さいと物が広がらないから掃除とか片付けがラクだということです。こういう風に家づくりが変わっていきました。
具体的には、例えば同じ約8.5mぐらいの宅地でも、間口が狭い場合は小さな家を建てて、庭を作るスペースを確保するなどの工夫ができます。小さな家であっても、光を取り込みやすく、植栽やウッドデッキを取り入れることで、豊かな空間を実現できます。
先ほど36坪と言いましたが、比較的面積を絞れば、今の4人家族なら最大32坪でも十分だと思うぐらいの広さはあると思います。もっと言うと、断捨離に絞った感じでやれば、26坪や22坪ぐらいまで絞ることもできるはずです。
面積を絞る時、大胆に言えば玄関が必要かどうか、ということも考えられます。一般的に「いきなりリビング」と言って、外国の家のようにドアを開けたらリビングが現れるというものがあります。
みなさんが一番好むのは、廊下をなくすことです。廊下がない家では、廊下分だけ家を小さくできますよね。また、昔は空調設備が効きにくかったため、家を小さく区切って採暖する方法がありました。ワンルーム使いで広々と、家中どこでも温度を一定で使うことができました。
最近は、囲まれた空間のウッドデッキや植栽などを使って、家と庭の中間領域みたいなものを作ることがよくあります。これとコンパクトにすることを組み合わせて、吹き抜けやロフトを使って、床面積を減らせます。いつも使わないロフトや吹き抜けを使って光を取り入れるなど、小さくなる中でも工夫次第で家を豊かにできます。
最初は、あまり考えずに広い方が良いという考え方が広がっていたのかもしれません。それに対して、アンチとして家が小さくなることに取り組むようになったのでしょうか。もしかすると、これは一種の集団無意識なのかもしれませんね。
最近はウッドショックがあったり、コンクリートや住設機器の値段が上がったりしていますが、家を小さくすることで総コストを抑え、それが安上がりにつながることもあります。総額が変わらなくても、なんとか手に入る値段を粘り強く維持できるというイメージもあります。
この10年で一番変わったことは、本質的な価値に回帰し、家を小さく考えることに取り組むことです。ただし、ちょっと田舎の方や郊外に行ったり、2世帯住宅などでシニアの方が絡んでくると、未だに家を大きくすることが美徳だとか、夢の実現だとかいう考え方があるようです。
法事をやるために二間続きの広い和室など、今は必要ではないスペースが必要だと言う人もいるようですが、実際にはどうでしょうか。法事などは家で行うのでしょうか。昔はお葬式も家で行うところが多かったですが、今は葬儀会館で行うことが一般的になってきました。つまり、広いスペースは必須ではなく、自分たちが本当に豊かに暮らすために間取りを考えればいいと思います。
今日は四方山話として、このような話をご紹介させていただきました。若い人には釈迦に説法かもしれませんが、まだこの考え方に慣れていない人もいるかもしれません。これからの家づくりを考える上で、このような視点を持っていただけると嬉しいです。ぜひ参考にしてみてください。
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今回は、窓の可変断熱ができるハニカムスクリーンについてご紹介します。
窓の断熱を調整できる部材があることを知っていますか?あまりピンと来ていない方や、知らない方もいらっしゃるので、今日はそのことについて紹介していきたいと思います。
それは何かと言うと、ハニカムスクリーンというものです。ハニカムスクリーンとか、ハニカムブラインドとか、言い方は会社や個人によって多少異なります。これによって窓の可変断熱ができます。
ハニカムスクリーンは、蜂の巣のような六角形の空気層で作られたスクリーン、ブラインドです。実物を見ていただくと、アコーディオンのように伸縮する構造がわかります。六角形の空気層が伸びたり縮んだりすることで、畳むとコンパクトになります。また、ものによっては、大小の六角形が合わさって二重になっているようなデザインもあります。
ハニカムスクリーンの特徴は、空気層があるので断熱性能をある程度作ることができる点です。空気層がなぜ断熱性になるのか疑問に思う方もいらっしゃると思うので説明します。
「熱伝導率」という、熱の伝わりやすさを表す尺度があります。例えば、ガラスの熱伝導率は0.55~0.75W/m・Kとなっており、数値が大きいほど断熱性は低くなります。和紙などの紙の熱伝導率は約0.06W/m・Kです。ガラスと比較すると、いかにガラスが熱を通しにくいかがわかります。
また、ガラスにはダブルガラスやペアガラスというものがあります。これは、ガラスとガラスの間に乾燥した空気やアルゴンガスが封入されているものです。アルゴンガスの熱伝導率は0.0164W/m・Kで、非常に低いですから、ダブル・トリプルガラスの性能が向上するのもわかりますよね。さらに高性能なものだと、クリプトンガスを使ったものもあります。
一方で、空気の熱伝導率は0.0241W/m・Kです。アルゴンガスほどではないものの、紙と比べても半分~3分の1で、ガラスと比べても優れた断熱性能を持っています。
熱伝導率だけでなく、断熱材の厚みから見ても、ハニカムスクリーンの厚みはペアガラスやトリプルガラスよりも大きいです。つまり熱抵抗値で考えても、とても優秀な断熱材だと言うことです。
これを上げ下げすることで、断熱性能を調節できるということです。すべて閉じれば断熱性能が向上し、すべて開ければ元の窓の状態に戻ります。この可変性が、ハニカムスクリーンの大きなメリット・付加価値なのです。
ハニカムスクリーンを使うと、冬場だけでなく夏場にも快適に暮らせます。ハニカムスクリーンには、うっすら光を通す採光タイプと、光を通さない遮光タイプがあります。
例えば遮光タイプは、寝室などでうっすらと朝日が入って目が覚めてしまうことを防ぐことができます。家庭用プロジェクターで大画面の迫力がある映画を見たい人にも向いていたり、応用がきく窓のアクセサリーということになります。
ハニカムスクリーンを勧める理由は、パッシブ設計において、窓の性能や熱収支が重要であるからです。窓は、トリプルガラスにした方が性能が良いですが、日射取得で冬の光を効果的に取り込む際には、ダブルガラス窓の方が熱収支がいい場合があるんです。
ダブルガラスでは熱を損失しますが、太陽光からのプラスがあるんです。プラスとマイナスの熱収支で言うと、プラスの方が少しお得なことが、計算上わかっています。このため、ダブルガラスを南の窓に持ってくることが多いのです。
しかし、太陽が陰ると、ダブルガラス窓はトリプルガラス窓に比べて熱損失が大きくなります。そこでハニカムスクリーンを使うと、断熱性能を上げることができます。断熱性能が可変になるんです。日が昇っている時はしっかり太陽光を取り込んで、日が落ちたらハニカムスクリーンを下ろす。こうすることで、弱点をカバーできるんです。これを知ってもらいたいのです。
ハニカムスクリーンは新築時だけでなく、既存の建物の開口部のアクセサリーとしても効果的です。これを取り入れることで、非常にプラスになる点があるので、知ってもらいたかったんです。
ハニカムスクリーンを使う時のポイントの2つ目が、取り付け方です。
大抵窓には枠みたいなものが入っていて、少し奥行きがあります。ハニカムスクリーンは、このスペースにスポッときれいに入るんです。このようにハニカムスクリーンの上側を付ける方法を「天付」と言います。また、例えばカーテンがそうですが、窓の枠の中ではなく外側に付ける方法があります。それと同じ方式で「壁付」という方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあります。
天付は、窓のフレームや枠の中にハニカムスクリーンがすっぽり入るので、すっきりと見えます。また、隙間も最小限に抑えられるので、断熱性能も比較的担保しやすいです。
一方、例えば窓の取っ手が大きい場合や、レバー型など窓の枠に結構出ている場合は、壁付でないと付けられません。取っ手とハニカムスクリーンが干渉してしまうからです。ただし、窓にぴったりと取り付けられないため、少しサイズが大きくなることがあります。
このような条件によって、ハニカムスクリーンをどのように選ぶかも重要です。
最後に、3つ目の重要なポイントは、ハニカムスクリーンの操作方法です。操作方法にはいくつかのタイプがあります。
1つ目が電動タイプです。これは便利です。ボタン一つで簡単に上げ下げができます。しかし、工事費用が掛かったり、制御盤も必要になります。また、後付けするのは難しいので新築時に取り付けるのが望ましいです。
2つ目が手動タイプです。一番よく使われるポピュラーなタイプです。手動タイプは4つのタイプにわかれます。今これを聞いて「ハニカムスクリーンちょっとええやん」と思っている人は、これをぜひ知ってほしいです。
1つ目に、コードレスタイプがあります。ブラインドと同じような操作するための紐がなく、両側にレールが付いているタイプです。レールを滑らせて上げたり下げたりできるタイプです。価格はやや高めですが、ぶら下がるものがないので見た目がすっきりしています。
2つ目が、コードタイプです。一般的なブラインドのように、紐を引くことで上げ下げするタイプです。操作が速くて簡単なのが特徴です。
3つ目が、上下コードタイプです。両側に2本の紐があり、窓の上側と下側をそれぞれ開けることができるタイプです。普通は上げるか下げるかだけだと思いますが、これは途中で止めることができるのです。窓の上側を開けたり、下側を開けたりすることができます。
この素晴らしさを教えてくれたのが、僕の朋友の小暮さんです。「なるほど、だから価値があるのか」と、とても勉強になりました。
最後に、ループコードタイプです。紐がループ状になっており、これを引いて回して閉めたり開けたりするタイプです。欠点は、ワンタッチで開くことはできない点です。井戸のつるべみたいに引くので、手間がかかります。しかし、例えば吹き抜けの高い窓や人が手が届かない位置の窓に便利です。ループを長くして操作できるんです。
吹き抜けのあるお家でスクリーンを閉めたい時は、1階に降りて、1階を閉めて、次に2階という感じじゃないですか。2階に上がる手間がかかります。しかし、ループが長ければガラガラと引いて一気に閉められます。ただ、ループをうまく下ろせない場合には、うるさく感じたり、これが気になって仕方ないという人もいます。
このようなタイプがあることを知ってもらうと、ハニカムスクリーンの持つ力を最大限に活用できるんじゃないかなと思います。
最後に、上下コードタイプを今回おすすめしたかった理由をご説明します。
大きい窓は南側に付いていることが多いと思うのですが、道路と窓の離隔距離が近い場合、通行人の視線が気になる問題がありますよね。しかし、カーテンとかスクリーンを閉めてしまうと、せっかくの日当たりが台無しになってしまいます。
ここで、上下コードタイプのハニカムスクリーンを使うと、上だけ開けたり、下だけ開けたり、あるいは上下両方を開けることができます。特に、上から降り注ぐ光はすごく明るく感じます。これを使えば、スクリーンを半分ほど閉めても、通行人の視線をカットしながら室内に光を取り込むことが可能になります。
私たちがお手伝いするお客様も、共働きの方々が多いです。せっかく南側に大きい窓を作っても、日中家を出る時にはスクリーンを閉めてしまう方がいらっしゃいます。
日中に日射取得をすると、家が一定の断熱性能であれば、室内が熱を蓄えてくれます。つまり、帰ってきてから暖房を付けても、その暖房費を削減できます。しかし、カーテンやスクリーンを閉めてしまうと、せっかく日射取得をしっかり考えた窓であっても効果が半減してしまいます。
少し上下を開けて家を出るのであれば、抵抗がない方も多いです。また、2階でも向かいの家の窓からの視線が気になるようなら、これを付けたらいいと思います。
人間の視線は、特定の高さに集中することが一般的です。そのため、全ての窓に目隠しを設置する必要はありません。人間の視線が集中するであろう部分だけにスクリーンを下ろせば、プライバシーを守りつつ、適度な日射取得を行うことができます。この方法であれば、日射取得も叶うし、それによって家の蓄熱も促進され、冬場はより快適になります。
もう1つ、これはなかなかマニアックな話ですが、夏にエアコンをかけて除湿をする場合、最近のエアコンは優秀になりすぎて、温度が一定になったら除湿を止めてしまうケースがあるんです。温度は低くなっても湿度がまだ低くなっていない時、それでもエアコンを働かせたいという場合に、裏技で少しだけ太陽の熱を入れるということがあります。
家全体で再熱除湿型のエアコンに近い働きをさせるようなイメージです。実験でやってみると、光を入れると暑いのか思っていましたが、温度は上がっても快適になるということがわかります。そこを意識してもらえるといいのかなと思います。
ハニカムスクリーンは多くのポテンシャルを持っています。既築の方やリフォーム・リノベーションを検討している方にも知っておいてほしいアイテムです。窓の改修の補助金が流行っている現在、窓だけでなくハニカムスクリーンも含めて考えてもらうと、より満足度が上がると思います。ぜひ参考にしてみてください。
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今回は、生活防衛のための太陽光発電についてお話ししたいと思います。
最近、電気代がすごく高くなりましたよね。そんな時代に入ったので、今日は生活防衛という視点で太陽光発電について一緒に考えていきたいと思います。
これまでも太陽光発電がアリかナシか、損か得か、といった話をしてきました。私は、師匠である松尾先生の教えもありますし、自分でも実体験の中で太陽光発電の有益性を感じています。でも、相変わらず世の中ではそういう議論を未だに繰り返している人もいらっしゃるじゃないですか。
以前、ひろゆきさんという論客の方が、個人の家の太陽光と国のエネルギー政策みたいなものを1つの土俵で議論しているような形で、「太陽光なんかダメだよね」という論調の動画でした。半年以上前のものらしいですが、未だに観られます。
ひろゆきさんには申し訳ないですが、そのことに関してはミスリードされていると思いましたので、ここはもう1回みなさんと情報を分かち合った方がいいなと思い、今回のテーマにしました。
私の友人に、九州のエコワークスさんという素晴らしい工務店さんがいます。先日、そこの小山社長からいい情報を教えていただいたので、まずはそのことを切り口に解説していけたらと思います。
小山社長は京大を出られた方で、すごく頭のいい方です。社会活動にもとても熱心で、太陽光発電を古くから研究されているし、政府の諮問機関の委員会に近い所にもいらっしゃって、ちゃんと正しい情報を集められています。僕もとても大事な情報源というか、師匠の1人だと思っています。
その小山さんが、「2024年の太陽光の買い取り金額が決まりましたよ」と教えてくれました。今年は16円ですが、引き続き16円ということになって、据え置かれましたねと。毎年どんどん下がると思っていたので、朗報だと思いました。しかし、実はそれだけじゃないということを教えていただいたので、そのことからお話ししていきたいと思います。
そもそも同じ16円であっても、太陽光を載せるお客様にとっての便益に関しては、インパクトが変わってくるのです。そもそも、太陽光発電はアリかナシか・損か得かという議論の前提が、実は変わっているという現実をまず覚えていってください。
これまでの議論では、損か得かということでシミュレーションをしてきましたが、電気代は27〜28円/kWhみたいな形で試算をしていることが一般的です。でも今、例えば東京電力さんのエリアではなんと約40円、関西電力さんのエリアでも約32円になっているのです。
議論の前提となる電気代が、東京だったら1.5倍弱、関西でも1.2倍弱も上がっています。少ない金額での16円と、電気代が実質上がった時の16円って、ありがたみが違いますよね。昔は売電して売電収入で得・損と言っていたけど、今は違うのです。売ることじゃなくて発電して、それをどうやって自家消費するかということに焦点が変わってきています。
以前、おひさまエコキュートについてお話ししました。まだ観ていない人は、観てみてください。「蓄電池がもてはやされているけど、おひさまエコキュートで昼間の太陽光発電の電力でお湯を沸かした方が得」という話をしています。
▼蓄電池よりすごい”おひさまエコキュート”について解説します
https://www.m-athome.co.jp/movie/chikudenchi_ohisama_eco
エコキュートはみなさんも知っていますよね。夜の安い深夜電力で沸かすから得だと言っていましたが、今は深夜電力がとても高くなっています。昼間に太陽光でダイレクトに沸かす方がずっと得だから、自家消費が大事という風に論点が変わってきているのです。
小山さんいわく、国が16円と決める時にどうやって決めているかというと、国の委託先である調達価格等算定委員会があります。ここは諮問機関で、令和5年以降の調達価格等に関する意見書を出しています。
・令和5年度以降の調達価格等に関する意見
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/20230208_1.pdf
・資源エネルギー庁のHPより
https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230324004/20230324004.html
この意見書はA4サイズで125枚もある立派な資料で、国に「16円でいったらどうですか?」と提案し、資源エネルギー庁が来年も16円でいくことを決めたのです。
その話だけを聞くと、何が得なのかと思うでしょう。国は太陽光発電を持っている人の自家消費分の利益について基準を設けていて、その基準の電気代を26円ぐらいで試算しているらしいです。でも実際は27〜28円だし、もっと高いとも言えます。
元々の議論よりもベースの電気代が高くなっていて、その上で厳しくしていかないといけないという背景がある中で、それでも26円で見て16円に決まった。つまり、16円は個人の太陽光を載せる人にとってすごく得な条件になっているんです。
太陽光の取得コストは年々下がってきていて、絶対に来年はもっと安くなります。同じ16円でもリターンが大きいということになります。もちろん、自家消費することを前提にしています。ポイントは、来年16円と決めたらそれが向こう10年間据え置かれるということです。
今年はいきなり30%ぐらい電気代が上がったと言われていますが、それをベースにしてこれから年2%ずつ累進でどんどん上がっていきます。例えば、今年100円だったものが来年は102円になり、その次の年は102円の102%と、累進で上がっていくわけです。10年経ったら電気代がかなり上がっているはずです。
しかし、太陽光の自家消費という特権を10年間固定できます。電気代が上がっていくという変化があっても、太陽光発電は10年間を先買いするようなもので、安いままで固定するため10年間安心して過ごせるのです。これで見通しが立ったなと思えるし、生活防衛のためにはますますいいと思います。
さらに、師匠の松尾先生が先日、新建ハウジング新聞という厳しい目を持ったプロが読む新聞に、太陽光発電に関する記事を掲載されていました。それも最後に紹介したいと思います。
この記事では、建物の断熱性能と太陽光発電を考慮した暮らしのトータルコストの相関性を細かく分析されています。分析されているのは、断熱性能が平成28年度基準(最低基準)の家と、HEAT20のG1基準、今スタンダードになりつつあるG2基準、さらにG3基準、あるいはG3だと高すぎるのでG2.5(造語)という基準も含まれています。
こうした断熱性能の強弱が、電気代の上下のあり・なし、太陽光発電のあり・なしでどう変わっていくのか、ホームズくんというシミュレーションソフトを使った結果が出ています。
結果としては、電気代が一定で上がらず、太陽光発電を載せないケースでは、平成28年度基準の断熱性能では27年まで得だけど、それを過ぎるとG2基準が得になることがわかりました。
また、電気代が年々2%上昇し、太陽光発電を載せないケースでは、22年まで低い断熱性能の方が得だけど、23年を過ぎたらG2基準、39年を過ぎたらG2.5基準が得になることがわかりました。
さらに、電気代が一定で上がらず、太陽光発電を載せているケースでは、32年まで平成28年度基準がいいが、それ以降はG2基準が得になることが分かりました。最後に、電気代が2%ずつ上昇し、太陽光発電を載せているケースでは、25年まで平成28年度基準が有利だが、25年以上40~45年までG2基準より高い断熱性能が有利で、45~50年まではG2.5基準が有利になることが分かりました。
これらの結果から、太陽光発電が載っていないケースでは、当然ながらトータルコストが右肩上がりに増えることがわかります。これは家を建てる際のコストがある上に、電気代がどんどん変わっていくためです。
しかし、太陽光発電が載っているケースでは、電気代が一定でも上がっていっても、25~50年という時間軸で考えると、トータルコストが右肩下がりになっているのがわかります。これはとても驚きですよね。違いがこんなに明確に見えるのに、なぜ太陽光発電を載せない方がいいと思う人がいるのか、不思議です。
これから家を建てる方や既築の方でも、太陽光発電を載せておひさまエコキュートに切り替えることがおすすめです。ウクライナ危機やエネルギー危機が叫ばれている中で、日本の国力が相対的に低下し、円安になると輸入はますます不利になります。そんな背景がリアルに目の前に広がっている中で、太陽光発電で上手にヘッジすることは大切です。変なミスリードに惑わされないようにしましょう。
ひろゆきさんのことを揶揄したみたいに聞こえたかもしれませんけど、前提が違ったらシミュレーションも変わるのです。さっきの松尾先生のシミュレーションは、小屋裏エアコンと床下エアコンです。個別のエアコンでやると、また数値が変わると思います。
シミュレーションは、お住まいの地域・契約している電力会社、さらに言うと電力契約のパターン、冷暖房のやり方、エアコンの容量の設定の仕方・太陽光発電の有無、何kW載せているか、自分たちがどれくらい自家消費するか、電気代の今後の上昇のリスク、断熱性能など複合的なもので、結果も変わってきます。
だから、「太陽光は絶対損だ」と言う人は、何も物事がわかってない人か、意図してお金儲けしたい人だと僕は思います。あなたの地域にとって、あなたの家の求めるものにとっての太陽光発電を、最後はプロに頼んでシミュレーションしてもらわなければ実際のところはわかりません。
結構必死に話しましたが、「納得できない」「自分の家は違うんじゃない?」と心配な人は、条件をきちんと入れたシミュレーションができる方に相談してください。全体感として太陽光は絶対プラスになると思います。
生活防衛は大事なので、頑張ってしっかり知識を吸収して家づくりをやっていただけたらと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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今日のテーマは「注文住宅はどこまで注文できるのか?」です。
先日、他社でご検討されていたお客様から、こんなことを言われました。◯◯社さんは注文住宅が対応可能ということで打ち合わせをしたのに、「これをやりたい」と言ったら「それはできないです」と言われたと。それでそのお客様は憤慨されていました。
そういう風に思う人も多いと思います。こういう失敗は時間の大きなロスになるので、今回はそのあたりの予備知識に関してお話ししていきます。
まず、注文住宅とは一体どういうことか。お施主さん自身がこういう間取りにしたい・設備はこれをつけたい・◯◯メーカーのキッチンにしたい・外壁はこれを塗りたい・内部はこれを貼り付けたいと言って、注文していくことです。
要は、家の隅々まで自分のこだわりを詰め込んで、言わばフルオーダーでできること。そう定義しても、多分みんな文句はないと思います。
それでは冒頭の話がなぜ起きるかと言うと、この注文住宅というものの定義が、個人の方はもちろん業者さんにすら幅があってあやふやだからです。
一方、自由設計という言葉も聞きますよね。最近はコストの関係で、「この規格で気に入っていただけたら価格はここまで頑張ります」という、規格住宅と呼ばれる家がたくさん作られています。それに対して、本当に自由にやりたいなら自由設計という形もありますよ、というものです。
注文住宅と自由設計は、似ていますよね。定義は法律で定まっているわけではありませんが、多くの大手ハウスメーカーさんは自由設計と言っています。大体のプランは間取りだけでなく仕様も決まっていて、間取りの変更だけできることが多いです。
キッチン等の設備を選ぶことはできても、2社のメーカーの中から・3パターンの中からという感じで、内・外装の仕様も含めて非常に選択肢が限定されています。言い換えれば、自由設計はハウスメーカーさんの場合セミオーダーということです。
洋服でフルオーダーだと、きちんと全部測ってくれてぴったりに作ってくれます。セミオーダーは、A体・B体・AB体みたいに分けてあって、比較的体型に近いものを持ってきて「ちょっと襟を詰めます」みたいな感じじゃないですか。
冒頭のお客さんは、業者さんが自由設計という意味で注文住宅と言っているところに、お客さんはフルオーダーだと思って行ってしまったことの齟齬で起きた問題だと思うのです。
注文住宅にしたいと言うと、実はお客様が細かいオーダーをしなければいけません。どういうものを注文するか、ざっくり説明します。
まず工法です。木造なのか鉄骨なのか、鉄筋コンクリートなのか。木造でも在来工法なのか、ツーバイフォーあるいはツーバイシックスなのか、木造大断面ラーメン構造というのもあります。鉄骨造も、実は重量鉄骨というタイプと軽量鉄骨というものに分かれるのです。
RC造は鉄筋コンクリートの1種ですが、柱梁ラーメン構造と壁式という工法があります。これらのうちどれを選びますかと聞かれて、急に選べるでしょうか。
断熱・気密も、内断熱もあれば外断熱もあります。外の付加断熱・内の付加断熱、天井断熱、屋根断熱、床断熱なのか基礎断熱なのか。断熱のやり方や場所だけでもこれだけのバリエーションがあるのです。
もっと細かく言うと、断熱材もグラスウール、フェノール系、ロックウールなどいっぱい種類があります。それも全部注文しようと思えばできます。逆に、どれにしたいですか?と問われるということです。
外装もサイディング、モルタル塗り、漆喰塗りもあります。ガルバリウム鋼板でやる時もあるし、ALC造というものもあります。
さらにもっと根本的なのがモジュールです。1軒のお家って何畳とかで表わすことが多いじゃないですか。ざっくり90cm×180cmが一般的な畳の寸法で、サイズの基準になります。私たちが尺と呼ぶものは、1つのマス目が910mm×910mmのものが多いです。915という寸法でやる変則の家もあります。
お歳を召している方は、よく「本間(ほんけん)じゃないとアカン」とおっしゃいます。あれは955mm角です。今は鳴りを潜めましたが、一世を風靡したメーターモジュールという1m真四角のものもあります。
このモジュールをどう取るかによって、家はまるっきり変わります。同じ6畳と言っても、尺の6畳とメーターモジュールの6畳は広さが違うのです。
ちなみに私は尺を勧めることが多いですが、なぜかと言うとメーターモジュールはマスが大きすぎて、面積の割に間取りが面白くないしやりにくいからです。
どんどん専門的になっていきますが、階高・天井高も決める必要があります。建物は柱と梁で構成されていて、横架材と言われる梁の寸法の所を階高と言います。これを何m何cmにしますかと聞かれても、普通は答えられないですよね。
天井高はさらに内側の区切りで、一般的には2.4mが多いです。建築基準法的には2.1m以上と言われているから2.1mでもいいし、勾配天井であれば一番低い所が2mでも別にやれます。
カッコいい外観の家が欲しい、と言う人が時々いらっしゃいます。階高はみんな気にしていませんが、実は家の外観には階高が影響するのです。
一般的には、階高が低い方が建物はカッコよく見えます。少し低めで重心が下がっている方が、美的です。一方で天井高が十分欲しい、2.4mあるいはもっと高い2.7mにしたいとなると、外観を綺麗にするのはプロでもしんどいバランスになります。
屋根の形状も、ハウスメーカーさんはほとんど寄せ棟ですが、切妻・片流れの方が太陽光発電を載せるのに有利なので、多く選ばれています。
もっと言うと、空調方法もあります。大手ハウスメーカーさんはこれまで、エアコンはお客様でどうぞでした。ヤマダ電機さんとか量販店さんに行って、自分で普通のエアコンを買っていました。
今や全館空調が当たり前になりつつある中で言うと、空調室を作る全館空調もあれば、アメニティエアコンでダクティングするものもあります。
私たちが得意としている床下エアコンとか小屋裏エアコンとか、人によっては階間エアコンという1階と2階の間を利用するエアコン方法もあります。
床下エアコンは、寒い地方だとFF式のストーブを使うやり方もあります。こうしてちょっと言っただけでも、これほど多くの選択肢があるのです。
冒頭に怒っていらっしゃった方が注文住宅をしたいとなると、工法・断熱・気密・モジュールなどを1個1個理解して決めていかなければいけません。でも事実上、それを素人の方が決めてプロの方に「こういう内容で注文住宅を検討してほしい」とは言いにくいですよね。
注文住宅という言葉の持つ意味に憧れるのはよくわかります。本当に望むなら、自分がそこまでの判断ができるかを考える必要があるということです。しかし実情は、全てを決めたいわけじゃなくて、こだわりを実現したいだけなんだというケースが多いと思います。
だから注文住宅を利用する時は、現実的には自由設計という形で、たくさんある選択肢の中で自分がこだわりを実現したいところを明確にしてください。
例えば屋根断熱にしたいなら、屋根断熱ができる業者さんなのか確認が必要です。あとのことはよくわからないので、逆にプロの立場から「これが今いいですよ」というのがあったら教えてほしいというスタンスの方が、一番スムーズにいきます。
これがないと、実は階高を抑えたいということになったりします。もっと怖いのはモジュールです。尺のモジュールとメーターモジュールを複合でやりたい時も稀にあるからです。
こだわりを絞れば会社さんは一定数絞られます。もっと言うと、木造は得意だけど鉄骨はそこまで得意じゃないとか、サイディングを張るのは得意だけど塗りは得意じゃないとかもあります。注文住宅・自由設計と謳っていても、そこが何なのか見極めが必要です。
最後に注文住宅の欠点を言うと、当たり前ですがプランニングする時間が長くなります。設計検討も工期の一部なので、工期はゆったりしてもらわなければなりません。プランニング検討と同時に構造検討もいるので、ある程度の余裕が必要です。
自分の要望を盛り込んでいくので、予算がオーバーしてしまう傾向もあります。その反対に良いこととしては、プランニングが自由にできたり階高が自由にできたりしますよね。
草原の一軒家なんかはあまり関係ありませんが、都市部で建て込んでいる所に建てる時は、うまく敷地の中を縫って太陽に素直な家(冬はしっかり日を取り込んで夏はしっかりカットする家)が作りやすいです。
あとはいろんなことが選べるので、引き算の家づくりができます。理想の家をやろうと思うとあれもこれもとなりますが、本当に必要なものは意外と少なくて、実は引き算がしっかりできる家づくりをする方が最終的に結構いい家になります。
有名な伊礼先生なんかは、引き算の設計ですよね。あらゆるムダが排除されていて、純粋に大事なものだけ残ると素晴らしい設計になります。
自分はある程度こだわりもあるけど時間も短縮したいとか、決められないことはプロに決めてほしいなら、標準化がしっかりしている会社さんがいいです。あるいは大手ハウスメーカーさんもいいと思います。
大手ハウスメーカーさんは工業化認定を受けているので、やることをすごく制限しています。一番の理由は、より安全に間違いがないようにということです。それ故に、ギリギリを攻めて本当に欲しいものをやることはちょっと苦手みたいな構造もあります。
大手に対して注文住宅というスタンスで望むなら、そこを理解していないと時間のムダになったり、思った家にならないことがあります。
本当のフルオーダーになると、設計事務所さんとかゼネコンさんの施工でやっていくと思いますが、その時は予算がオーバーしやすくなります。
工務店もそうですが、設計事務所さんでも標準化がある程度取り組まれているところを選んで、本当の意味で自分にフィットする家を望んでいくのが正しい道ではないでしょうか。
注文住宅という言葉は誰でも使うけど、非常に広い意味があって、ポイントは意外と狭いんだということだけ理解してもらえたらいいと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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先日、他社でご検討されていたお客様から、こんなことを言われました。◯◯社さんは注文住宅が対応可能ということで打ち合わせをしたのに、「これをやりたい」と言ったら「それはできないです」と言われたと。それでそのお客様は憤慨されていました。
そういう風に思う人も多いと思います。こういう失敗は時間の大きなロスになるので、今回はそのあたりの予備知識に関してお話ししていきます。
まず、注文住宅とは一体どういうことか。お施主さん自身がこういう間取りにしたい・設備はこれをつけたい・◯◯メーカーのキッチンにしたい・外壁はこれを塗りたい・内部はこれを貼り付けたいと言って、注文していくことです。
要は、家の隅々まで自分のこだわりを詰め込んで、言わばフルオーダーでできること。そう定義しても、多分みんな文句はないと思います。
それでは冒頭の話がなぜ起きるかと言うと、この注文住宅というものの定義が、個人の方はもちろん業者さんにすら幅があってあやふやだからです。
一方、自由設計という言葉も聞きますよね。最近はコストの関係で、「この規格で気に入っていただけたら価格はここまで頑張ります」という、規格住宅と呼ばれる家がたくさん作られています。それに対して、本当に自由にやりたいなら自由設計という形もありますよ、というものです。
注文住宅と自由設計は、似ていますよね。定義は法律で定まっているわけではありませんが、多くの大手ハウスメーカーさんは自由設計と言っています。大体のプランは間取りだけでなく仕様も決まっていて、間取りの変更だけできることが多いです。
キッチン等の設備を選ぶことはできても、2社のメーカーの中から・3パターンの中からという感じで、内・外装の仕様も含めて非常に選択肢が限定されています。言い換えれば、自由設計はハウスメーカーさんの場合セミオーダーということです。
洋服でフルオーダーだと、きちんと全部測ってくれてぴったりに作ってくれます。セミオーダーは、A体・B体・AB体みたいに分けてあって、比較的体型に近いものを持ってきて「ちょっと襟を詰めます」みたいな感じじゃないですか。
冒頭のお客さんは、業者さんが自由設計という意味で注文住宅と言っているところに、お客さんはフルオーダーだと思って行ってしまったことの齟齬で起きた問題だと思うのです。
注文住宅にしたいと言うと、実はお客様が細かいオーダーをしなければいけません。どういうものを注文するか、ざっくり説明します。
まず工法です。木造なのか鉄骨なのか、鉄筋コンクリートなのか。木造でも在来工法なのか、ツーバイフォーあるいはツーバイシックスなのか、木造大断面ラーメン構造というのもあります。鉄骨造も、実は重量鉄骨というタイプと軽量鉄骨というものに分かれるのです。
RC造は鉄筋コンクリートの1種ですが、柱梁ラーメン構造と壁式という工法があります。これらのうちどれを選びますかと聞かれて、急に選べるでしょうか。
断熱・気密も、内断熱もあれば外断熱もあります。外の付加断熱・内の付加断熱、天井断熱、屋根断熱、床断熱なのか基礎断熱なのか。断熱のやり方や場所だけでもこれだけのバリエーションがあるのです。
もっと細かく言うと、断熱材もグラスウール、フェノール系、ロックウールなどいっぱい種類があります。それも全部注文しようと思えばできます。逆に、どれにしたいですか?と問われるということです。
外装もサイディング、モルタル塗り、漆喰塗りもあります。ガルバリウム鋼板でやる時もあるし、ALC造というものもあります。
さらにもっと根本的なのがモジュールです。1軒のお家って何畳とかで表わすことが多いじゃないですか。ざっくり90cm×180cmが一般的な畳の寸法で、サイズの基準になります。私たちが尺と呼ぶものは、1つのマス目が910mm×910mmのものが多いです。915という寸法でやる変則の家もあります。
お歳を召している方は、よく「本間(ほんけん)じゃないとアカン」とおっしゃいます。あれは955mm角です。今は鳴りを潜めましたが、一世を風靡したメーターモジュールという1m真四角のものもあります。
このモジュールをどう取るかによって、家はまるっきり変わります。同じ6畳と言っても、尺の6畳とメーターモジュールの6畳は広さが違うのです。
ちなみに私は尺を勧めることが多いですが、なぜかと言うとメーターモジュールはマスが大きすぎて、面積の割に間取りが面白くないしやりにくいからです。
どんどん専門的になっていきますが、階高・天井高も決める必要があります。建物は柱と梁で構成されていて、横架材と言われる梁の寸法の所を階高と言います。これを何m何cmにしますかと聞かれても、普通は答えられないですよね。
天井高はさらに内側の区切りで、一般的には2.4mが多いです。建築基準法的には2.1m以上と言われているから2.1mでもいいし、勾配天井であれば一番低い所が2mでも別にやれます。
カッコいい外観の家が欲しい、と言う人が時々いらっしゃいます。階高はみんな気にしていませんが、実は家の外観には階高が影響するのです。
一般的には、階高が低い方が建物はカッコよく見えます。少し低めで重心が下がっている方が、美的です。一方で天井高が十分欲しい、2.4mあるいはもっと高い2.7mにしたいとなると、外観を綺麗にするのはプロでもしんどいバランスになります。
屋根の形状も、ハウスメーカーさんはほとんど寄せ棟ですが、切妻・片流れの方が太陽光発電を載せるのに有利なので、多く選ばれています。
もっと言うと、空調方法もあります。大手ハウスメーカーさんはこれまで、エアコンはお客様でどうぞでした。ヤマダ電機さんとか量販店さんに行って、自分で普通のエアコンを買っていました。
今や全館空調が当たり前になりつつある中で言うと、空調室を作る全館空調もあれば、アメニティエアコンでダクティングするものもあります。
私たちが得意としている床下エアコンとか小屋裏エアコンとか、人によっては階間エアコンという1階と2階の間を利用するエアコン方法もあります。
床下エアコンは、寒い地方だとFF式のストーブを使うやり方もあります。こうしてちょっと言っただけでも、これほど多くの選択肢があるのです。
冒頭に怒っていらっしゃった方が注文住宅をしたいとなると、工法・断熱・気密・モジュールなどを1個1個理解して決めていかなければいけません。でも事実上、それを素人の方が決めてプロの方に「こういう内容で注文住宅を検討してほしい」とは言いにくいですよね。
注文住宅という言葉の持つ意味に憧れるのはよくわかります。本当に望むなら、自分がそこまでの判断ができるかを考える必要があるということです。しかし実情は、全てを決めたいわけじゃなくて、こだわりを実現したいだけなんだというケースが多いと思います。
だから注文住宅を利用する時は、現実的には自由設計という形で、たくさんある選択肢の中で自分がこだわりを実現したいところを明確にしてください。
例えば屋根断熱にしたいなら、屋根断熱ができる業者さんなのか確認が必要です。あとのことはよくわからないので、逆にプロの立場から「これが今いいですよ」というのがあったら教えてほしいというスタンスの方が、一番スムーズにいきます。
これがないと、実は階高を抑えたいということになったりします。もっと怖いのはモジュールです。尺のモジュールとメーターモジュールを複合でやりたい時も稀にあるからです。
こだわりを絞れば会社さんは一定数絞られます。もっと言うと、木造は得意だけど鉄骨はそこまで得意じゃないとか、サイディングを張るのは得意だけど塗りは得意じゃないとかもあります。注文住宅・自由設計と謳っていても、そこが何なのか見極めが必要です。
最後に注文住宅の欠点を言うと、当たり前ですがプランニングする時間が長くなります。設計検討も工期の一部なので、工期はゆったりしてもらわなければなりません。プランニング検討と同時に構造検討もいるので、ある程度の余裕が必要です。
自分の要望を盛り込んでいくので、予算がオーバーしてしまう傾向もあります。その反対に良いこととしては、プランニングが自由にできたり階高が自由にできたりしますよね。
草原の一軒家なんかはあまり関係ありませんが、都市部で建て込んでいる所に建てる時は、うまく敷地の中を縫って太陽に素直な家(冬はしっかり日を取り込んで夏はしっかりカットする家)が作りやすいです。
あとはいろんなことが選べるので、引き算の家づくりができます。理想の家をやろうと思うとあれもこれもとなりますが、本当に必要なものは意外と少なくて、実は引き算がしっかりできる家づくりをする方が最終的に結構いい家になります。
有名な伊礼先生なんかは、引き算の設計ですよね。あらゆるムダが排除されていて、純粋に大事なものだけ残ると素晴らしい設計になります。
自分はある程度こだわりもあるけど時間も短縮したいとか、決められないことはプロに決めてほしいなら、標準化がしっかりしている会社さんがいいです。あるいは大手ハウスメーカーさんもいいと思います。
大手ハウスメーカーさんは工業化認定を受けているので、やることをすごく制限しています。一番の理由は、より安全に間違いがないようにということです。それ故に、ギリギリを攻めて本当に欲しいものをやることはちょっと苦手みたいな構造もあります。
大手に対して注文住宅というスタンスで望むなら、そこを理解していないと時間のムダになったり、思った家にならないことがあります。
本当のフルオーダーになると、設計事務所さんとかゼネコンさんの施工でやっていくと思いますが、その時は予算がオーバーしやすくなります。
工務店もそうですが、設計事務所さんでも標準化がある程度取り組まれているところを選んで、本当の意味で自分にフィットする家を望んでいくのが正しい道ではないでしょうか。
注文住宅という言葉は誰でも使うけど、非常に広い意味があって、ポイントは意外と狭いんだということだけ理解してもらえたらいいと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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今日は、住宅業者や工務店さんを選ぶ際の基準の1つとして、社長さんのタイプについて紹介します。題しまして、社長のタイプで変わる住宅業者・工務店の傾向と対策です。
世の中にはいろんなタイプの社長さんがいらっしゃいます。こんな風に類別してはいけないのかもしれませんが、今日は僕の独断と偏見で類別していきます。
まず1つ目に、営業系の社長さんがいらっしゃいます。元トップセールスマンの人や、大手ハウスメーカー出身、パワービルダーさんなどで成績を上げた営業マンの人が、住宅会社の社長として創業されるケースです。
この方たちは営業上がりなので、口八丁手八丁と言う感じです。コミュニケーション能力が高くて話しやすい人や、人との関係性、話し合いを重視する方が多い印象です。売りが強い、押しが強い面もあるので、時に思い切った値引きもしてくれる方もいらっしゃいます。
家の商品を選ぶ時に、「この家は売れるのか?」という視点で家を考える印象もあります。また、ちょっと失礼な言い方ですが、お客さんを見る時に「このお客さんは家を買えるのか?」という点に割とシビア・敏感な印象があります。
さらに、イケイケの営業だった人に時々いらっしゃる印象ですが、商談の中で言った・言わないという話があるケースもあります。社長がそういう方であれば、その会社の全員がそういうカラーになっていく、ということもあります。
また、少々悪口みたいになりますが、技術に関して疎い点もあります。いい意味でこだわりがないと言ってもいいかもしれません。しかし何と言っても話しやすいという点があると思います。
営業系の方と似たタイプで少し違うのが、不動産系社長です。このケースも、元不動産屋さんのトップセールスマンの方が多いです。デベロッパーという言葉がありますが、そのように土地の開発・土地の入手情報・中古住宅の情報に関して強い印象があります。
営業系の方と同じように、そのお客さんが家を買える・買えないということにはすごく敏感です。営業系の人を熱血漢と言うならば、不動産系の人はドライな印象もあるかもしれません。
しかし、例えば集合住宅を建てる場合となると、これは一種の投資案件になります。その場合、常に利回りを考えるという点では、不動産系の方は非常にいいパートナーになると思います。いい土地を探して家を建てたい人にとっては、このような社長が率いている会社は頼りになる印象があります。
3つ目が、技術系社長です。これは設計系・工務系の2つに分かれると思います。両方を兼任する場合もあります。かく言う私もこの1人かなと自分では分析しています。ベテランの設計マンや工務マンの人が会社を立ち上げるパターンが多い印象です。
このタイプの方は技術者なので、すごく話が上手かと言うとそうではありません。頑固、飾り気がない、朴訥(ぼくとつ)といった人が多い印象があります。
一方で、こだわりが結構ある面もあります。安請け合いはしない、でもきっちり仕事をする、という感じの人が多いです。特に私が思うのは、家づくりがものすごく好きな人が多い印象です。
4つ目に、技術系の1つの派生で大工さん系の社長さんがいらっしゃいます。このパターンの方は元大工さんですから、現場に強いです。施工の何たるかをよく知っています。
一方で、職人さんと言うと話しにくい、無口な人が多いのも事実です。喋りやすい職人さんもいらっしゃいますから一概に言えませんが、人によってはコミュニケーションが下手なのかな、という印象もあります。
また、これは意外かもしれませんが、痒い所に手が届くような設計はちょっと苦手と言う方もいらっしゃいます。さらに、古手の方は断熱・気密に関して疎い方が多い印象もあります。
丈夫な家を作ることができるという自負はあります。しかし、例えば耐震性では、大工さんが丈夫に作るという要件以外のポイントも関わってきます。そういう点を勘で埋めてしまっている場合もあるので、その人が大工の時代、あるいは工務店の社長になってから、どのように勉強されたのかも含めて見る必要もあるように思います。
しかし、大工さんとして工務店や住宅業者をしている方は、何より家づくりが好きな人が多いです。自分が手をかけて仕事をしてきた方ですから、手仕事に対するこだわりもあります。材料選びにも目が利いたりするという良さもあります。
5つ目に、リフォーム系の方がいらっしゃいます。これは最近出てきた方々です。異業種から参入してきた人がリフォーム業を立ち上げて、さらにリフォーム業の売り上げアップを狙って、新築やリノベーションを手掛けているケースです。
やはりそういう方は、人の懐に飛び込んでいくような思いきりの良さがありますから、話しやすい方が多いです。優柔不断なタイプのお客さんなら、「決めましょう」と言ってくれるので、物事が前に進みやすいという良さがあります。スピード感も、とてもあるように思います。
一方で、一言にリノベーションと言ってもくくりがあります。お客さんから最近特に要望されるものは、高性能リノベだと思います。しかし、高性能リノベ・高性能新築のようなものに関しては少々苦手であったり、知識が不足している人もいらっしゃる印象もあります。
しかし、スピード感や小回りの利くリフォームをなさっている方なので、アフターケアなどは細やかにやってくれそうな印象があります。
6つ目に総務系社長という方がいらっしゃいます。総務・企画・経理などの経験が多くて社長になった、管理型の社長さんです。
最近、工務店業界や住宅業界ではM&Aというものが流行っています。親会社から経営出向という形で社長さんを派遣されるようなケースでは、総務型の管理者のような人がいらっしゃることもあります。
きっちり・かっちりしていますが、あまり家づくりの矢面には出てこないタイプの方も多い印象です。一方で、ご自分がその専門性には弱いということをわかっていらっしゃいます。ですから、技術系や営業系の責任者の方をきちんと理解して、部下の力を上手に生かしています。チーム力がある社長さんだと思います。
一口に住宅会社・工務店と言っても、社長さんの成り立ちというのは結構大きなポイントです。こんな視点も持っていただいて業者さん選びをしていただくのも、面白いと思います。
それ以外感じることとして、社長さんの趣味・道楽があります。例えば車好きとか、スポーツが好きだとか、そういうものです。キャンプがものすごく好きな方、格闘技が好きな方、農業をやっている方、花・植物が好きな方、華道・茶道に精通している方、旅行が好きな方、読書がものすごく好きな方など、たくさんありますが、そういう点もお施主さんにとっては重要だと思います。
なぜかと言うと、お施主さんの好きなベクトルと社長さんの好きなベクトルが似ていると、話が弾んでいいアイデアが出たりするケースがあるからです。
車好きと言っても、一概には言えません。例えば、ベンツやマセラッティのようなスーパーカーみたいな車が好きな人もいらっしゃいます。お金儲けして人生成功したからという、トロフィーのような所有で持ちたい車好きの人です。
一方で、純粋に車が好きなんだという人もいらっしゃいます。私の友人の小暮さんも、とても車好きです。子供のように車を愛しています。ですからとても手間暇をかけています。なんせ綿棒を使ってホイールを磨くような人なので、異常なぐらい偏愛しています。
このようなこだわりの強さは、もう1つの極である「家が好き」という所の中にも発露することがあります。最近は、SNSでぽろっと発信したり、ブログでこだわりを書いている社長さんも多いです。そういう所もチェックされると面白いと思います。
また、その社長さんが創業者の方か、2代目・3代目かということによっても違います。創業者の方は、パワフルで決断力がある、押しが強い所があります。
一方、2代目・3代目の方は人当たりがいい方がいらっしゃる印象です。先代からのいい番頭さんがいらっしゃるようなこともあります。例えば押しの強い人が苦手な方や、強力な親御さんがいらっしゃってそれに対してストレスを感じているような方は、2代目・3代目さんの方が話が合うと思います。
いろんなことを言いましたが、社長さんの色はやはり社風に現れます。その会社が何を大事にしているかということは、やはり社長さんに影響されます。
もっと言うと、家づくりは社長1人でできるわけではありません。ですから、その社長さんがチームとしてどんな風に束ねているかという所も重要だと思います。
何より、社長さんご自身が本業である家づくりについてよく勉強しているかどうかが大事です。時代はどんどん変わります。技術要求も変わっていきます。その勉強を、チームネットワークとしてできているかという点も、最終的には大事になると思います。
業者さん選びでも家づくりの方向性が決まるということを知っていただければと思います。こういうことを言ってしまうと自分にプレッシャーがかかるので、今汗をかいていますが、こんなことを考えていただいたらいいと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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by 森下 誉樹
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気持ちのいい春が来たので、それにちなんで気持ちのいいリビングとは何かについて考えたいと思います。
みんな気持ちのいいリビングが欲しいじゃないですか。新築を設計するにあたって、間取りを作る時に一番最初に考えるのはリビングの位置じゃないかと思います。
なんたってリビングというのは、家族みんなが一番集まってきて一番長くいる空間ですから、ここの快適性がものすごく重要になってきますよね。だからここは優先順位が高くなることはとてもよくわかります。
「気持ちのいいリビングとは?」という質問を考えた時に、一番よく出てくるのは日当たりがいい場所です。日当たりがいいリビングはいいですよね。これに併せて、風通しも良い方がいいです。
そしてもう1つ大きい要件が、景色がいいことです。穴蔵で何も見えないリビングよりは、外の良い景色が見える方が快適ですよね。そういうことも全部踏まえて、リッチで豊かな感じが醸し出されていくのだと思います。
実際にいいリビングがどんな風に作られているのかを考察していきます。日当たりがいいかどうかは、みんな気にしていると思います。しかし、おざなりになっているというか後回しになっていると僕が感じるのは、景色の良さです。
例えば、日当たりを望む人が土地をもし選べるとしたら、南側道路を選びますよね。南側に道路がある敷地で考えた時には、南側に玄関を持ってこないといけません。駐車場も都市だったら2台ぐらい必要です。
日当たりがすごくいい良い土地を買って、いい感じには建てられたと思うけど、結果どうなるかと言うと、南側のリビングの窓からは車のお尻しか見えないのです。車好きが車を眺めたい気持ちはあるけど、ちょっと意味が違いますよね。車好きの人って前から見たいのではないでしょうか。だから、ちょっともったいない感じがします。
もっと言うと、道路から車1台分と言ったら5mぐらいしか離れてないから、高低差がないと道路と近いのです。そうすると、日当たりのいいリビングもついついカーテンを閉めるという現象が起きてしまいます。
前も他の動画で語りましたが、「日当たりを求めてたんじゃないの?」と。日当たりも中途半端になって、景色も良くない。ここの土地に家を建てた醍醐味が半減したみたいなことが起きてしまうのです。
例えば僕だったら、同じ南側の敷地を与えられてもこんな風にします。車の駐車場を2つ並びにせず、知恵を絞って南入りではなく西入り・東入りにします。車を横に置く分だけ、5mの半分ですから2.5mしか取れないかもしれませんが、リビングの前に庭を持ってくるのです。
そうすると何が良いことがあるかと言うと、庭と車との間に目隠しのフェンスができたり、植栽を植えられたり、あるいはデッキができたりします。デッキの上にプランターを置いてもいいし、植栽を植えたりしたら景色が良いですよね。リビングから緑が見えたり、子どもたちが外で遊んでるのが見えたりすると、ウキウキすると思います。
玄関を西にやったおかげで、限られた間口の南を全部開口にできるから、より日当たりに貢献するじゃないですか。翻って、冬場に日射取得ができるから、暖かい家にもなります。もっと言うなら、目隠しのフェンスをすることによって、南側道路の弱点だった外からの視線を遮断することもできるから、より落ち着いた空間になりやすいのです。
それからこんな例もあります。道路が西・東にあったりする敷地で往々にしてあるのは、間口が絞られていて東西には長いという所では、大体こんな配置をします。間口が限られているから仕方ないとは思いますが、なぜか隣家があるのに判で押したように南側に大きな窓を持ってきたりするのです。
そうすると、南の窓なのに隣家があるおかげでほぼ日は入りません。なおかつ隣家の北側って大抵は裏側みたいな所なので、カッコいい家が見えるのではなくただの壁が見える可能性が高いです。下手したらエコキュートの貯湯槽があったり、ゴミ箱が置いてあったりするかもしれません。
また、南側に部屋を持ってきたいですよね。だから、西入りのさらに北側に入り口を持ってきて、南側の居室を確保するあまり駐車場を南に寄せて2台取りがちです。
そうじゃなくて、あえて北側に駐車場を2台分作って、南の空間に庭を考えるというやり方があります。例えば吹き抜けを持ってきて、1階の窓からはあまり光は入らないけど、2階の吹き抜けの窓からは光が取りやすいことがよくあります。あるいは、東側はうまく光が入ってきそうな隙間があれば、ハイサイドライト(高窓)をつけて、東の朝日を入れていくみたいな感じで明るさを取ったりするのです。
気持ちのいいリビングという要件を考えていくと、リビング(の位置)を考えることに併せて、駐車場の位置というか配置の仕方をどうするかが重要になります。でも、「後で考えたらいいや」とか、ぼんやり考えてる人が多い印象です。これは残念です。ぜひプランが始まったら、ここの視点は持っておいてください。
最後に、ここのところ飯塚豊先生が言われている、家が豊かな空間を作るためのポイントをご紹介します。それは、中間領域というものが必要だということです。中間領域という言葉に耳慣れていない人のためにも、説明しますね。
よくあるのは、デッキの上にパーゴラがあるやつです。大抵デッキがある所って、内側がリビングというケースが多いのですが、外部だけど内側と連なって延長された曖昧な空間。つまり、外でも内でもない空間を中間領域と言います。
今の季節、「桜の木がうちにも1本あったら良かった」と思っているお父さんもいるんじゃないでしょうか。奥さんからは「毛虫が出るからやめて」と言われるけど、僕なんかは「毛虫は自分が取るから桜を植えさせて」というタイプのオヤジです。年に一度また春が来たなと、またみんなで桜を見られたことにとても郷愁を感じるタイプなので。
日本の昔の縁側とか濡れ縁とかもそうだし、街のカフェで言うならオープンカフェです。アウトドアリビングと呼んでもいいし、中庭という感じで表現する場合もあります。こういう風な空間をリビングと繋げられるとなお良いです。これが豊かさを作る1つのキーだと思います。庭との繋がりをリビングとセットで考えないと、いかにもリビングはもったいないということです。
まとめていきましょう。気持ちのいいリビングを作りたいとみなさん思っていると思うのですが、日当たりだけに囚われず、景色の良さとは何かをいつも心に置いておいてください。それをクリアするには、駐車場の位置・配置と庭との繋がりということも覚えておいていただきたいです。
この三位でリビングを考えてもらうと、きっと満足してもらえるリビングになると思います。ぜひ参考にしてみてください。
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