片付く家の各論:重要なのは食品庫のみえる化
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今回は、収納の中でも希望される食品庫(パントリー)について掘り下げていきたいと思います。
今回も、大島健二先生が書かれた「住まいかた解剖図鑑」からの提案をもとに進めます。大島先生はいつも細かく噛み砕いて教えてくださるのですが、一番の魅力はそのキャッチフレーズです。今回も食品庫について、このような言い回しをされています。
「重要なのは食品庫の見える化だ」
かっこよくないですか?「見える化」という言葉は、ビジネスをされている方ならよくご存知でしょう。物事を可視化すること、例えば数字や情報を視覚的に捉えることで、効率が上がったり、問題が明確になることがよくあります。これを家庭内で考えた場合、どうなるかというお話です。
食品庫は、日頃の買い物をまとめて貯蔵しておく場所です。特に、共働きで忙しい方々が、円滑で効率よく生活できるように工夫されています。お米やサラダ油、そして私のような呑兵衛の方ならお酒、乾物の昆布、缶詰、サランラップなどの買い置きが増えます。さらに、最近では気候変動の影響で災害が増えているため、「いつ我が家が災害に遭うかわからないので備えよう」という意識も高まり、防災用品を食品庫周辺に保管する方も増えています。このように、今後の家づくりにおいて、食品庫の役割はますます重要になっていくでしょう。
大島先生は、具体的な例として、キッチン近くに食品庫を配置する間取り案を提案されています。特に、階段下のスペースを有効利用して食品庫にするケースが紹介されています。「食品庫の見える化」とは、無駄を防ぐための工夫です。私は別の動画でも、パントリーにおける奥行きの問題について論じてきましたが、私の経験では、30cm以上の奥行きを持つパントリーは無駄が出やすいです。奥行きがありすぎると、奥に置いたものが見えなくなり、存在を忘れてしまうからです。
例えば、奥行きが30cm程度であれば、2段にしても「奥にシーチキンがあるな」とか「奥にサラダ油があるな」と把握できます。しかし、奥行きが45cmになると、一気に把握しづらくなります。30cmの奥行きは、ちょうど本棚くらいの感覚です。これなら通路部分に作ることができ、廊下を通るたびに目につきます。目につくということは、在庫管理がしやすいということです。例えば、私の妻もよく言いますが、「醤油があったのに、また買っちゃった!」というのは、奥行きの深い場所に置いてしまうことで起こりがちです。これでは無駄が発生しやすくなります。
「見える化」というのは、しょっちゅう目に入ることも含まれています。多くの人は見た目を気にして建具を作って隠しますが、隠してしまうと目につかず、忘れやすくなります。若い人にはピンとこないかもしれませんが、私のように年を重ねると、どんどん物を忘れるようになります。だからこそ、浅い奥行きで物が見えるようにすることがとても重要だと感じます。
大島先生の提案には、特に優れたアイデアがあります。階段の踊り場下の奥行きが80cmほどあるスペースを、「引き出しにしなさい」と言われている点です。引き出しにすることで、奥行きがあってもガーッと引き出して上から全体を見下ろせるため、無駄が発生しません。
私のように一升瓶の焼酎を何本も買ってしまうと、どうしてもかさばってしまいます。いつも「もう邪魔くさいわ」と妻に叱られますが、このように奥に置いてしまうと、「あれ、芋焼酎って買ってたっけ?」と忘れてしまうことがあります。これを防ぐためにも、この引き出し式の収納は非常に有効です。「飲んでないやん、前の芋焼酎!」と怒られることもなくなると思います。
この階段下を活用した食品庫は、秀逸なアイデアです。大島先生は、「こういった踊り場下の奥行きのある場所は引き出し式にするとどうですか?」と提案しており、さらに「いつも通り目にする場所に浅い食品庫を配置するのも非常に素敵です」と解釈できます。
次に、もう一つの案として、廊下的な食品庫があります。納戸やクローゼット、勝手口、洗面所に向かう際、キッチンは廊下としても機能することが多いです。キッチンとサニタリーを連続させる間取りもよくありますが、その通り道に目が届きやすい、奥行きの浅い食品庫を設けると非常に便利です。この案では、冷蔵庫の下に冷凍食品を入れるスペースも提案されています。
例えば、私のお客さんの中に魚釣りが好きなご主人がいらっしゃいます。イシダイなどを釣ってきても、一度に食べきれないため、フリーザー(冷凍庫)を別に置いているそうです。使用頻度は少ないかもしれませんが、上開きのフリーザーを置いて、その上の空間を作業台としても使えるのです。こうした配置も、廊下的な食品庫で活用できます。
「見える化」により、「コンビーフが3つあったな」とか、「醤油は1本ストックがあったな」、「お酢は視界から消えたから買わなければ」というように、在庫管理が自然としやすくなります。大島先生も、食品庫においてこの視覚的管理が非常に重要だと強調されています。
そこで、私たちの新しいモデルハウスでは、造作キッチンに挑戦しました。一般的な対面キッチンでは、ダイニングテーブルをくっつけると収納が取りにくくなることがありますが、丸テーブルを独立して配置することで、開いたときに何が入っているか一目でわかるようにしています。さらに、冷蔵庫をあえて隠し、オープン棚を設けたり、キッチンのカウンター下に調理家電を並べ、その下には引き出し収納を設けました。
引き出し収納は、奥行きのあるスペースに最適で、奥にあるものも見やすく管理が簡単になるのが大きなメリットです。ただし、すべてを引き出しにすると造作費用が大きくなるため、コストを抑える工夫も大切です。私の場合は、予算的な理由で下部を開き扉にしてもらい、引き出しにする代わりに奥行きを活かしてカトラリーを収納しました。これは、あまり費用をかけない簡易な引き出しのような設えにする工夫です。とはいえ、造作キッチン自体はとても素晴らしく、松井木工さんに製作をお願いしました。キッチンの雰囲気を知りたい方は、ぜひ見学にいらしていただければと思います。
この「見える化」というコンセプトは、キッチン全体のユニット収納にも活用できます。引き出しは調理機器だけでなく、パントリー部分にもぜひ取り入れてみてください。多くの人は「パントリーは奥行きのある棚が必要」と考えがちですが、実は違います。食品を入れる場所であればすべてが食品庫といえるので、この「見える化」の原則を取り入れることで、非常に実用的なパントリーを設計できます。無駄を減らし、食品ロスも防げるため、家計にも優しい家づくりが実現できるのです。
ぜひ、このアイデアを家づくりに取り入れ、パントリーの設計を深めてみてください。
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