68.8%の人が答えた「今が建て時」の本当の意味
最近よく言われている「今は家の建て時というか、チャンス」という話について、僕なりに感じていることを解説していきたいと思います。ごく最近、リクルートさんのアンケート調査の結果が出て、レポートを読ませてもらったんですけど、今、7割弱の人が「今が家の建て時だ」と思われて、家を購入されているようなんです。その論調としては「そういうことだから、みなさん建て時みたいですよ」という感じに読み取れるのかなという気がしたんですけど、その本当の意味って何なのかなってことを少し考えたので、解説していきたいと思います。
題しまして、「68.8%の人が答えた『今が建て時』の本当の意味って何」。そんな感じでお話をしていきたいと思います。確かに、大きな母数で調査されているものは全体の意識みたいな感じなので、みんなそう思っていると思うんですけど、よく分かった上で建て時だなって動く人もいれば、それに乗せられて「そうなんや」って思う人もいるので、またあるいは「そう言うけど」ということで、強烈にブレーキをかけている人もいると思うんです。何がいいとか悪いとかじゃなくて、どんなふうにそれを捉えるかという僕なりの道筋をお伝えしたいなと、今回すごく思ったんです。
思うと、過去にも「今、家は建て時ですよ」という話はありました。僕もこの業界をかれこれ40年近くやっておりますので、何回かあったと思います。その時は「今、家が安い」というニュアンスがとても多かったんかなと思います。確かに、建築費も高騰している、金利もどんどん上昇している中、今68.8%、7割弱の人が答えているのは、実は「安い」ということじゃないんじゃないかなと僕は思うんです。土地が安いからとか、金利が安いからって、お金の問題で言っているんですけど、建築費がどうなったり、金利が上がったり下がったりするかは、正直、誰にも読めへんと僕は思うんです。
何でブレーキがかかるか分からないので、為替なんか見たらすごいですよね。相場を読むということで、多分みんなが建て時だと思っているのは、安いから建て時じゃなくて、これ以上待っていることが得ではないという理解だと捉えたら、それは当然インフレ経済なので、そうなってくるのはそうなんです。ただ、2つ目として、建て時にはこういう社会のタイミング以外に、もう一つ家族のタイミングという問題があると思うんです。社会のタイミングって、さっき申し上げた金利とか、土地価格の上昇とか、建築費とか、それから国の政策というのも大きいです。
これまでは新築の建物をたくさん建てましょうという政策が取られてきましたけど、今は少し変わろうとしていますよね。それに比べて、家族のタイミングって何かと言われると、結婚を機にとか、出産を機にとか、子育てが本格的にということとか、それが僕の周りでは多いですが、定年を迎えたとか、迎えるのがもうそろそろやからとか、実は親の介護せなアカンねやということで、家づくりに関して考えるというタイミングではありますよね。一番それに対して僕が思うのは、その家が必要な時間に間に合うんかなということは、一つ考えなアカンタイミングだと思います。
だから、経済的な損得だけじゃないんです。住宅には経済的な損得という側面以外の価値もあるということを、繰り返し僕が言ってきたつもりですけど、今回もこのタイミングを頭に置いてほしいんです。家が必要な時期と建ててよい時期は、必ずしも一致しないと思うんです。というか、今「要るんや、要るんや」って言っても、その人の状況を見ていたら、「ちょっとどうかな」って思う人は何人かいらっしゃいます。例えば、暗い話になるかもしれませんけど、本当に今それを建てるんやけど、ずっとこの地域に住み続けていくんかなって思うような人もいらっしゃいます。
それともっと切実なのは、欲しい欲しいっておっしゃっているんですけど、本当に家族全員の合意としてその家が欲しいんですか、ということです。僕もたくさんのお家づくりをさせていただきましたけど、その中で不吉なことを言って申し訳ないんですけど、離婚される方ってそこそこいらっしゃいます。昔から思うと、増えているんかなとも思います。そういう離婚されたご家族を思い出すと、「あれって旦那さん、ホンマに欲しいって感じじゃなかったな」とか、「奥さんに何か引っかかりがあるんかな」って、後から思えばという方は一定数いらっしゃるんです。
多いのは、例えば奥さんとギクシャクしている。でも、今回家を建てるということで二人の絆を取り戻したい、ということでやられたんですけど、結果的に本当に奥さんが思っているのは、家が欲しいとか、家があるからいいとか言う前に、ご主人と何か分かち合いたいことがあったということで、残念ながらということもあるんです。だから、それは本当にどうなのかを立ち止まって考えてみてもいいんじゃないですか。じっくり話し合ってみてもいいんじゃないですかって、僕は思うんです。
それから、仕事をいっぱいされる旦那さんで、頑張るがゆえに転勤が増えてくるみたいなこともあります。それから、僕は今切実に思っているんですけど、親御さんの介護というようなことはないのか、その家でいいのか、その場所でいいのか、ということですよね。そういう意味で言うと、家族のタイミングだけが建て時にはならないし、家族のコミュニケーションが不足していたら、立ち止まって考えてみると、自分の時期に関して見えてくるものが変わってくる可能性があるから、これは思ってほしいんです。
4つ目として、みなさん住宅ローンや資金計画で悩まれた時に、「どうやって返すか」ということだけにフォーカスする人がいるんですけど、今はそれだけでは弱いですよね。返すのは当たり前で、同時に返しながら貯金するということをやらんとアカン時代だと思うんです。これまでは住宅価格が安かった、金利もゼロ金利やとか言って、「今がチャンスや」ってやってこれたんですけど、ここからは金利はどうなるか分からへん、世の中の動向もどうなるか分からへんということになってくると、家族を守る一つの前提として、どれだけ貯金があるかは絶対、現実に大きいと僕は思うんです。
そこを特に思わなアカン時代に入ったと思います。銀行は貸してくれる。でも、安心して返せる金額は違うと思うんです。教育費とか介護費もかかることを考えたら、ピークで赤字にならへんですか、ということも考えてもらわなアカンのです。住宅ローンを返しながら、同時に貯蓄とか運用とか、いわゆる資産形成もやっていただく。例えば状況によったら、いつも僕はフラット35ぐらいを勧めることが多いですけど、「何々さんはフラット50でいきましょう」ということがあるかもしれません。
だから、金利変動があるということは、固定金利でまずはブレがないものを考えながら、実際に借りる時に変動で借りてもいいんですけど、ヘッジする方法を理解していますか。住宅を買う時に家計をコントロールする力がありますか、という視点もあるんです。20代の人たちならまだしも、30代以上、最近は晩婚化傾向があるので、40代ちょっと手前ぐらいで始まる人も多いと思うんですけど、繰り上げ返済したり、同時に老後の資金も貯めるというのは、最初によくよく考えておかないと、後からなかなかできないという側面もあると思います。
5つ目としては、僕が最も見落とされていると思うのは、人生の時間という価値だと思うんです。当たり前なんですけど、住宅取得を1年延ばせば、建築費とか金利も変わるかもしれないけど、それ以上に自分の人生が1年進むじゃないですか。3歳の子は4歳になります。元気な親も1つ年を取るわけです。
それから、しみじみ思うんですけど、自分のエネルギーって、みんな今ずっと維持できると思ってますけど、1年経ったら確実に減るからね。子どもさんの笑顔とか、元気な親の姿とか、自分のエネルギーというものは、時間が経ったら二度と戻ることはないんです。ここも踏まえた上で思うんです。家の価値は、お金の面、経済性だけじゃなくて、家族との時間でできていると思うので、それも考えて建て時を吟味していただきたいと思うんです。結論です。今が建て時かどうかではなくて、今決める準備ができているかどうかを考えてほしいです。
だから「今、建て時ですか」って聞かれたら、ずっと言ってきましたけど、共通の答えってないです。一人一人違うのが決め時というもんだと思うんです。暮らし方とか、家族に求めるもの、お互いの気持ち、資金計画、運用計画。そうしたら、新築がいいのか、注文住宅がいいのか、規格がいいのか、はたまた中古がいいのか、リノベーションがいいのかって分かれていくんです。それは全て建て時とかいうことのあれじゃなくて、みなさんにとって人生の優先順位で決まっていくことだと僕は思います。こういう自己認識の枠がきっちり定められた上で、「よし、新しい暮らしを始める準備が俺ら結構できたな」と思えば、それは建て時なんです。
そのことを思っていただいて、僕は多分ここ30年ずっと同じことを言っていると思うんですけど、状況がどんなに変わっても、そこの準備です。どんなに状況が変わっても、準備ができていたらやればいいんです。準備ができてへんかったら、どんだけ得な状況になったって失敗します。言い切ったらアカンかもしれないけど、可能性が高いです。「今が建て時」というアンケートの結果をそういうふうに飲み込んでいただいて、みなさんの家づくりを成功させていただいたら、僕は一番いいんじゃないかなと思います。


