Q&A:薪ストーブをどのように考えてますか?メリット・デメリットを教えてください。
今回いただいた質問は、少し季節外れなんですけど、夏に暖房の話をしてしまいます。「薪ストーブというものがありますよね。これをどのように考えますか。どんなメリット・デメリットがあるか教えてください」というご質問です。これに季節外れの今答えるのはどうなんやろ、冬に答えた方がいいんかなと思いつつ、いや、アカン。今だからこそ薪ストーブについて答えなアカンという、おじさん的なモチベーションが湧いてきまして、今日は「なんで真夏に薪ストーブやねん」と思いながら解説をしていきたいと思います。
これはどういう質問だったかというと、パーソナルな感じなのであまり言ったらアカンのかもしれないですけど、質問者はたぶん奥さんなんです。これから家を建てる予定で、その奥さんは薪ストーブをやりたいと思っている。でも、ご主人が反対しているんです。なので、メリット・デメリットを教えてくださいというご質問でした。その裏側には、「どうやって主人を説得したらいいんでしょうか」という願いも込められているのかなと、勝手に深読みしましてお話ししていきます。
まず一番最初にお伝えしたいのは、薪ストーブは確かに暖房器具ではあるんですけど、僕はかっこよく言うと「暮らし方を選ぶ設備」という側面がとても強いのかなと思っています。「暮らし方を選ぶ設備って何なん?」となると思うんですけど、薪ストーブについて相談される時に、「暖かいですか」「エアコンと比べたらどうなんでしょうか」と聞かれることがよくあります。その時に僕は少し「うーん」と思ってしまうんです。薪ストーブは単に暖かくなるだけじゃない。その前には火を起こして、薪をくべて、炎を眺めるという、ほかにはない時間があります。だから、そういう暮らしの形につながっていくものという視点で評価したり検討したりしないとアカンかなと思うんです。
言っておくと、薪ストーブは最高です。ものすごく暖かいです。でも、その暖かさは、すごい手間の上に成り立っていることも事実です。薪ストーブは鉄板や鋳物でできているものが多く、そこで火を焚くと炎だけじゃなく、その金属の塊自体が熱せられます。そして、そこから遠赤外線という輻射熱が出るんです。この輻射熱が本当に気持ちいい。例えば対流型の石油ストーブって、10メートルも離れるとあまり暖かさを感じませんよね。でも、しっかり温まった薪ストーブなら、10メートル離れていても体をズキュンと温めてくれるんです。
電子レンジも火を使っていないのに温まりますよね。あれは電磁波が食べ物の水分を揺さぶって熱に変えているわけです。同じように輻射熱が体に当たることで、体の水分が温められ、ポカポカしてくる。この暖かさは本当に心地いいです。人だけじゃなく、壁も天井も床も、家全体に輻射熱が降り注ぎます。その結果、内装材の表面温度が上がります。体感温度というのは、室温だけではなく、壁や床など表面温度の影響も大きいと言われています。だから空気が30度でも壁が0度なら寒く感じるし、逆に室温20度でも壁も床も20度なら、その方がずっと暖かく感じるんです。これが輻射熱暖房のすごさです。
しかも停電でも関係ありません。火をつければ暖まるし、家の設計とうまく組み合わせれば、薪ストーブ一台で家中を暖めることもできます。大きな山小屋全体が暖かい、そんな暮らしもできるわけです。
でも、その一方で、木を切って、割って、積んで、乾燥させて、含水率20%以下くらいまでしっかり乾かし、火をつけて、燃え終われば灰を掃除して、煙突のメンテナンスもする。そういう手間の積み重ねの上に、あの最高の暖かさがあるんです。だから、ご主人が「どうかな」と言っているとしたら、多分「その作業、全部僕がすることになるんちゃうかな」という気持ちがあるんじゃないかなと思います。便利さや効率だけで考えるなら、やっぱりエアコンの方がいいでしょうね。
メリット・デメリットは画面にもまとめてありますので、確認したい方はそちらも見ていただけたらと思いますが、住宅設計の視点では、ストーブと家との相性もすごく重要なんです。薪ストーブはどんな家にも向いているわけではありません。高気密・高断熱で細かく仕切られた家だと、一部屋だけ暑くなりすぎることもあります。暑いから窓を開けて、それでも薪をどんどんくべるという、何をしているのか分からない状態になることもあります。
それから煙突の位置も非常に重要です。煙突の中には高温の空気が流れるので、煙突からも輻射熱が出ます。つまり薪ストーブは、本体だけではなく煙突のルートでも家を暖める設備なんです。吹き抜けに煙突を通せば吹き抜け全体が暖かくなりますし、リビング階段とうまく組み合わせれば、その周辺まで暖かくできます。煙突からの熱を上手に利用することで、家全体を本当にくまなく暖めることができるんです。だから薪ストーブは、後から置く家電のような暖房器具ではなく、家づくりと一緒に考える設備なんです。
だからこそ、奥さんが薪ストーブを入れたいと思っていて、ご主人が悩んでいると、家づくりそのものが前に進まない。奥さんもどうしたものかなと思っておられるんじゃないかと想像します。
そして、ここからが長い前置きになりましたけど、なんで夏にこの話をするのかということです。僕の周りには薪ストーブを愛しているご家族が何組もいます。友人にもいますし、お客さんにもいらっしゃいます。その暮らしを見ていると、この設備は冬だけを豊かにするものじゃなく、一年を通して暮らしを面白く、豊かにしてくれるものなんじゃないかなと思うんです。
夏は使わないのに、こんな大きなものを置かなくてもいいやんという人もいるかもしれません。でも違うんです。薪ストーブが好きな人たちは、夏になると薪を集めに行くんです。木を切って、割って、積んで、今年だけじゃなく翌年、翌々年の分までストックしていく。夏も秋も春も、冬の準備を楽しみながらやっているんです。キャンプに行った時も、子どもたちと一緒に薪になる木を拾いに行ったり、軽トラで運んだり、うちの会社へ「木材があったらください」と来られるお客さんもいらっしゃいます。
だから薪ストーブは、リビングやダイニングにあるシンボルなんです。夏でもその上で料理をしたり、子どもたちが火の面白さや怖さを学んだりする。僕らの子どもの頃は学校にも薪ストーブがありました。アルミのお弁当箱を新聞紙で包んで薪ストーブの上で温めて食べたりしていました。僕も含めて、そんな悪い子が何人もいました。
薪ストーブは家族の会話も弾ませてくれます。キャンプファイヤーや焚き火って楽しいですよね。真冬に焚き火を囲んで、「寒いな」と言いながら友達と過ごす時間が好きなんですけど、その雰囲気が家の中にあるようなものなんです。
なので、僕は少し感情移入しすぎているかもしれませんが、結論として、暖房効率だけで選ぶならエアコンなど他の選択肢もあります。でも、かっこよく言いますよ。人生の豊かさとか思い出を選ぶなら、薪ストーブです。
奥さん、これでいいかな。薪ストーブが何百年、ひょっとしたら何千年も愛されてきた理由は、人は効率だけで生きているわけではないからだと思うんです。火を囲んで家族や友人が集まり、その冬の楽しみのために夏や秋に汗をかいて一緒に薪を集める。「嫌や、お父さん」と言われながらも一緒に出かけ、お母さんのおにぎりを食べながら、「おいしいな」「せやろ」と笑い合う。そんな時間って、ええやないですか。ちょっと昭和寄りすぎるかな。でも、一緒に季節を感じる時間って大事なんです。炎は、嫌なことがあっても寂しいことがあっても、眺めているだけで癒やされる力があります。
最後に、なぜ僕がここまで強く言うのかというと、家づくりをしていて、本当にいい家をつくりたいという気持ちが強いからです。本当にいい家にはいろんな定義がありますが、僕は家族が自然と集まる場所がある家がいい家だと思っています。それぞれ好きなことをしているのに、気がついたら家族が集まっている。飯塚先生は「溜まり」とおっしゃいますけど、僕は「家族が集まる場所」と言った方がしっくりきます。
薪ストーブは、その集まる理由をつくってくれるんです。昔はテレビがその役割でした。だからアナウンサーは「お茶の間のみなさん」と呼びかけていた。家族みんなでテレビを囲んで、力道山を見たり、ドリフターズやクレイジーキャッツを見たりして笑っていました。でも今はテレビがあっても、なかなか集まりません。お盆が近いから言いますけど、お仏壇だって一族が集まる理由の一つです。手を合わせることで、みんなが集まる。
薪ストーブも同じです。「そろそろ着火式するで」と言えば、「ほんま?」「じゃあ子ども連れて行くわ」となるかもしれない。「火のつけ方を教えてよ」と頼まれたら、お父さんが張り切るかもしれない。おじいちゃんがストーブの上でお芋やたい焼きを焼いてくれるかもしれない。うちの親父も昔、薪ストーブの上でたい焼きを焼いてくれました。今思えば、よくあんな手間をかけてくれていたなと思います。でも子どもたちは、その一つのたい焼きを楽しみに待っていたんです。
たい焼きは薪ストーブとは直接関係ないかもしれません。でも、そんな思い出をつくる存在になるのなら、効率だけで暖房器具を選ばなくてもいいんじゃないかなと思います。そして、質問してくださった奥さんも、きっとそういうことを思っておられるんじゃないかなと感じます。
ぜひこの話をきっかけに、ご夫婦で「私たちの家はどうする?」と話し合ってみてください。子どもが大きくなっても帰ってきたくなる理由を、どうやってつくるか。子どもや孫が帰ってきてくれたらうれしいですもんね。設備というのは今だけでなく、何十年というスパンで評価するものだと僕は思っています。そんな視点で、薪ストーブは冬だけのものではなく、夏の家族の暮らしにもつながる設備なんだと考えていただけたらうれしいです。


