Q&A:なぜ施工エリア外で建築できないのですか?方法はありますか?
今日は素朴なご質問なんですが、時々いただく「なぜ施工エリア外で建築はできないんですか」とか、「何か方法はあるんですか」というお話についてお答えしてみようと思います。僕たちは姫路市界隈を中心に活動している工務店なんですけど、ありがたいことに岡山の方や大阪の方など、少し離れた地域から「施工可能ですか」とお問い合わせをいただくことがあるんですね。遠くから声をかけていただけるのは本当に嬉しいことなんですが、その際には「申し訳ありません、施工エリアを定めていまして」とお断りすることが多いんです。なぜそうしているかというと、結局のところ距離の問題に尽きるんですね。これは僕たちに限らず、多くの工務店が同じように考えていることだと思います。
大手ハウスメーカーさんは「どこでも行きますよ」というスタンスに見えることもありますが、実際には広域で対応できる体制を整えているということで、厳密にはエリアの考え方は存在しています。その中で、僕たちのような地域密着型の工務店がなぜエリアを絞るのかというと、単に家を建てるだけが仕事ではないと考えているからなんです。家というのは完成して終わりではなくて、その後お客様が長く快適に住み続けていくための維持管理も含めて、大切な仕事の一部なんですね。言ってみれば住宅は、完成後も運用やメンテナンスが必要な“工業製品”的な側面もあると思っていて、設計や施工だけでなく、その先の暮らしまで含めて責任を持ちたいという思いがあります。
特に最近強く感じるのは、気候変動の影響です。夏の暑さは年々厳しくなっていますし、以前沖縄の技術者の方から聞いていたような過酷な環境が、今では西日本でも当たり前になりつつあります。エアコンが突然壊れるようなことも「想定外」ではなくなってきている中で、それを一緒に解決していく体制が必要だと思うんです。また、お客様のライフステージも時間とともに変わっていきますよね。家が建ったときは100%満足していたものが、子どもの成長や仕事の変化などで少しずつ合わなくなってくることもある。そういった変化に対して柔軟に対応していくことも、僕たちの役割だと思っています。
さらに、高性能住宅をつくるとなると施工品質や細かな調整が非常に重要になります。距離が遠くなると、僕たちが現場に行く頻度や密度も下がってしまいますし、職人さんにも負担がかかります。地元の職人さんにお願いする場合でも、僕たちが求める品質を再現できるかという課題が出てくることもあります。そういったことを総合的に考えると、「建てる責任」だけでなく「住み続けてもらう責任」を果たすためには、ある程度エリアを限定せざるを得ないというのが正直なところなんです。
例えば全館空調の家でも、暑さ寒さの感じ方は人それぞれ違いますし、住み始めてから「少しムラを感じる」といった調整が必要になることもあります。そういうときに、できるだけ早く対応できる距離であることが大事なんですね。家は変化し続けるものなので、何か異変があったときにすぐ駆けつけられる距離かどうかというのは、とても大きなポイントになります。
それでも「どうしてもお願いしたい」と言っていただくこともありますし、「紹介できる会社はありませんか」と聞かれることもあります。ご紹介できる場合は、信頼できる工務店さんをご案内することもありますが、そうでない場合は、ご自身で会社選びをしていただくことになりますよね。そのときに大事なのは、「なぜその会社に魅力を感じたのか」を少し具体的に整理することだと思います。デザインが好きなのか、性能に惹かれたのか、それとも考え方に共感したのか。その要素を分解していくことで、他の会社でも近い価値観を持ったところを見つけやすくなると思います。
また、設計と施工を分けるという方法もあります。設計は気に入った会社にお願いして、施工は地元の工務店に依頼するという形ですね。ただその場合は、施工会社の技術力の見極めがとても重要になります。断熱や気密の施工に対する理解度、気密測定の実施状況、パッシブ設計の基本知識、施工基準書の整備など、チェックすべきポイントはいくつかあります。設計を担当する会社に相談すれば、そのあたりも一緒に見てくれると思いますし、設計と施工は対立するものではなく、協力関係であるべきなんですね。お互いに言うべきことを言い合える関係性が大切だと思います。
一方で、距離がある場合に「条件付きで対応します」というケースもあります。例えば定期点検は難しいとか、交通費や出張費が必要になるとか、あるいは初期対応が少し遅れる可能性があるとか、そういった点については事前に理解していただく必要があります。それでもお願いしたいという場合は、工期の調整やタイミングなども含めて、お互いに歩み寄ることができれば対応できるケースもゼロではありません。
せっかく気に入っていただいたのにお断りするのは心苦しいですし、本当にありがたいお話なんですが、お互いにとって無理のない形で良い家づくりをするために、こうした考え方を持っているということを知っていただけると、話もしやすくなるんじゃないかなと思います。


