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トップページ / 松尾和也先生に聞く
松尾和也先生に聞く。

本物のパッシブ住宅とは?

この10年で、日本の住宅は確かに進歩しました。だが、Ua値やC値の“見栄え”を競う限り、本質は届かない——と松尾和也先生は言います。松尾先生の門下で学び続ける山下新社長が、「太陽をよりどころにした本物のパッシブ設計とは何か」を、思想と実務の両面から伺います。
松尾 和也先生
株式会社松尾設計室代表。一級建築士。1998年に九州大学工学部建築学科(熱環境工学専攻)を卒業。2005年には「サスティナブルTOKYO世界大会」にて「サスティナブル住宅賞」を受賞。モットーは「健康で快適な省エネ建築を経済的に実現する」。住宅雑誌での連載や「断熱」「省エネ」に関する講演を通じて、延べ6,000社以上の設計事務所・工務店に技術指導を行っている。著書に『ホントは安いエコハウス』『エコハウス超入門』『間違いだらけの省エネ住宅』などがある。
第六章

施工・現場力の重要性

——設計を“結果”に変えるのは、現場の手

設計の精度を“結果”に変えるのは、やっぱり現場の力だと思っています。数年前、若手の現場担当がC値を0.3台に抑えられずに本気で悔しがっていた。正直、うれしかったんです。松尾先生に学び始めて10年、ようやくその感覚が社内に根づいてきたと感じました。

山下

そうなんですよね。「悔しい」が出る組織は、もう半分できています。次に大事なのは、個人の意識を仕組みに変えること。再発防止の記録、チェックリスト更新、現場の確認ポイントの標準化。ここまで落とすと、断熱・気密・日射(取得と遮蔽)の総合点が自然に上がります。どれか一つだけでは体感は伸びません。設計意図→施工→運用を一本の線でつなぐことが、結果を安定させます。

松尾先生

現場に立つと、体感がすべてを語ります。冬場に職人さんが「暑いわ」と上着を脱ぐ、夏は窓を閉めた方が涼しいと言い出す、——理屈が正しく施工に落ちていれば、職人さんは「なるほど、この会社はこういう家をつくっているのか」とわかってくれる。

山下

ええ。職人さんが理屈を知らないまま、言われた通りにやる状況は避けたい。 パッシブの良さと考え方が腹に落ちていれば、同じ手順でも精度と一貫性が違ってきます。現場で「なぜそれをやるのか」が共有されていること——ここが肝心なんです。

松尾先生

教育の道具として、以前先生に教えていただいたチェックリストの整備を進めています。先輩の失敗を更新していく再発防止の流れをつくり、監督の育成につなげたい。現場は“言い伝え”では回らないので、道具としてのリストが必要だと。

山下

その通りです。「品質管理チェックリストがない」というのは、住宅以外の製造業では考えられないことです。 再発防止とチェックリストの両輪で、人任せにしない品質管理へ切り替える。さらに同じ職人・同じ協力会社での安定運用が効きます。顔ぶれが固定化されるほど、標準の精度は上がります。

松尾先生

工程ごとに何を・いつ・どこで確認するかが決まっていて、その都度リストで確認できる体制が必要なんですね。写真でのエビデンス化も合わせて進めるようにしています。

山下

もう一つ、引き渡し後の“運転説明”も重要です。当社では紙にまとめて、約1時間かけて住まい方を説明する。これをやっている会社は、まだ少ない実感があります。

松尾先生

完成は「説明して、実際に稼働しはじめたとき」という考え方ですね。引き渡し後に、点検にうかがうと、エアコンの設定がまったく違う、というのは、まだまだ珍しくない。正しい使い方運転に切り替えてもらうところまでやり切るのが現場力だと考えています。

山下

夏型結露の話も、運用と直結していますよね。冷房時間の長期化と外気の水分量の増加で、冷たい表面に湿った空気が触れて結露が起こる。正しい運用ができていない家で事故が出始めているという指摘は、よく耳にします。

松尾先生

今日の話を社内の“当たり前”に落とします。

山下

ええ。現場力は“思想の最後の翻訳”です。図面で語ったことを、職人さんの手と、お客様の毎日の運転にまで翻訳する。その翻訳がうまい会社が、本物の性能を出している会社なんです。

松尾先生
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