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松尾和也先生に聞く。

本物のパッシブ住宅とは?

この10年で、日本の住宅は確かに進歩しました。だが、Ua値やC値の“見栄え”を競う限り、本質は届かない——と松尾和也先生は言います。松尾先生の門下で学び続ける山下新社長が、「太陽をよりどころにした本物のパッシブ設計とは何か」を、思想と実務の両面から伺います。
松尾 和也先生
株式会社松尾設計室代表。一級建築士。1998年に九州大学工学部建築学科(熱環境工学専攻)を卒業。2005年には「サスティナブルTOKYO世界大会」にて「サスティナブル住宅賞」を受賞。モットーは「健康で快適な省エネ建築を経済的に実現する」。住宅雑誌での連載や「断熱」「省エネ」に関する講演を通じて、延べ6,000社以上の設計事務所・工務店に技術指導を行っている。著書に『ホントは安いエコハウス』『エコハウス超入門』『間違いだらけの省エネ住宅』などがある。
第四章

欧米との住宅文化の違い

——“長く使う前提”と、日本のこれから

欧米では三世代で家を引き継ぐという前提がある、と伺ってすごく刺激を受けました。日本はまだ一世代で買って一世代で終える感覚が根強い。ここに文化の差があると感じています。

山下

そうなんですよね。アメリカなどでは築5年と築30年でも、同じエリア・同じ面積なら価格がほぼ同じで売り買いされることが珍しくない。平均利用年数も長い実感があります。日本の“買った瞬間から価値が大きく下がる”特殊な市場は、やっぱり是正されていくべきなんです。

松尾先生

日本でも中古住宅の価値が少しずつ上がり始めている肌感覚があります。材料費・人件費の高騰で新築自体が難しくなってきた現実もあって、価値観の転換が起きているのかなと。

山下

ええ、「まともな中古住宅の値段は上がるしかない」という見立ては、希望的観測じゃなくて需給から見ても確度が高いと思っています。不動産業界がメンテの行き届いた家に正しく価値を付けること、銀行が中古でも適切に融資すること。今度はその流れがもっと加速すると思います。

松尾先生

「良いものを長く使う」に社会全体が寄っていく、と。我々工務店としても、後から大きく手をかけなくても損をしない家をつくる、という軸がますます大切になりますね。

山下

その通りです。長く使う前提で何を優先投資するか。断熱・気密・耐震のような基本性能と躯体が先で、仕上げや設備は更新前提で考えるほうが合理的です。どれだけ高級設備を入れても数年もすれば“旧型”になる。一方で性能の芯は年数が経っても効き続けるんです。

松尾先生

逆に、性能が弱いと捨てられてしまう現実もありますよね。寒い・暑いが解体の直接理由になってしまう。だからこそ断熱・気密・耐震等級3といった骨格の性能を最初から外さない。

山下

そうなんですよね。これからは面積を無理なく小さくし、芯の性能に投資して、更新可能な部分は更新する——そういう方向に、自然と舵が切られていくはずです。

松尾先生

住み替えの文化も、海外と日本では違いますよね。海外はライフステージに合わせてどんどん住み替えるという話も聞きます。だからこそ“出口戦略”の発想も必要だと感じます。買うときから売却価格やメンテの手当てまでを見通す考え方ですね。

山下

ええ。出口戦略を描いて購入し、適切にメンテする。立地と売買のタイミングを間違えなければ買ったときより高く売れることだってある。日本でも駅近の新しいマンションではすでに起きている現象ですよね。戸建ても基本性能を担保すれば、その方向に近づいていきます。

松尾先生

そもそも基本性能が担保できる家であることが前提になりますね。

山下

一方で、日本特有の温湿度の難しさもあります。冬は寒く乾燥、夏は暑く湿潤、さらに地震・台風・シロアリ。まさに一年を一着で乗り切る“マルチウェア”を求められるのが日本の住宅なんです。

松尾先生

四季のある日本ならではの難しさがあるわけですね。

山下

そう。たとえば今は夏型結露が増えている。高断熱・高気密で冬型は抑えられつつある一方、冷房時間の長期化と外気の水分量増で、夏に結露が起きるメカニズムが顕在化している。ここへの対処を意識している会社はまだ少ないのが現状です。

松尾先生

地域特性に応じた防湿設計も、やはり鍵ですね。以前、沖縄は“外→内”に水分が動くから防湿の考え方が本土とは逆になる——この原理を知らずに本土と同じ納まりを持ち込んで事故が起きる話を聞いたときは、ゾッとしました。

山下

結局、長く使う家って、思想(長期視点)×基本性能×地域の理屈の掛け算なんです。設備自慢ではなく、躯体と温湿度の理屈に投資する。メンテを前提に設計する。そこに金融と流通(中古評価・融資)が追いついてくれば、日本でも“三世代で使う”文化に近づいていきます。

松尾先生

数字は道具、太陽がよりどころ、暮らしが目的。そこに“長く使う前提”を重ねて、基本性能へ先に投資する。僕たちの役目は、出口まで見越して“損をしない家”を提案することですね。

山下

そうなんですよね。世代をまたいで受け継ぐことが前提になれば、設計も施工も芯が太くなります。日本の家づくりが、いよいよそこに向かっていく時期なんです。

松尾先生
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