Q&A:九州地区で平屋を計画。床断熱と基礎断熱どちらが良いか?
今回は、以前「もし家づくりについて質問があったら、いつでもしてくださいね」とお願いしていたところ、視聴者の方からご質問をいただきましたので、そのことについてお話ししていきたいと思います。どんな質問かといいますと、九州地区で平屋を計画されている方から「床断熱と基礎断熱、どちらがいいですか?どっちがより合理的なんでしょうか?」という内容でした。そこで今日は、僕なりの考えを少しお話ししていこうと思います。
床断熱VS基礎断熱。これは少し前まで専門家の間でもよく議論されていましたよね。特に寒さに関して、どちらが有利なのか、不利なのかということで意見が分かれていた印象があります。長野県や北海道のような寒冷地では、それぞれの技術者が自分の持論を持っておられるようです。僕が聞いた中では、「寒さに耐えるためには床断熱がいい」と言われる方もいらっしゃいました。理由を聞くと、床の中に厚みをしっかり取ることができ、気密性も高められるので、快適な室内環境をつくれるということでした。確かに、土台部分が10〜12センチほどありますから、そこに断熱材をしっかり入れることで、10センチ以上の断熱性能が確保できる。そういう意味で床断熱を推す方も多いようです。
一方で、「いやいや、基礎断熱の方がいい」という方もおられます。その理由として挙げられていたのが“凍結深度”の問題でした。僕ら西日本に住んでいるとあまり馴染みがないですが、寒い地域では地面が凍るほどの冷気が下から上がってくるそうです。地面が0℃以下になることで、その冷熱が家の下へ入り込む。これを防ぐために、基礎を深くして、さらに基礎部分を断熱することで冷気の侵入を防ぐんですね。だから寒冷地では基礎断熱が有効だ、という考え方なんです。
さて、今回の質問者の方は平屋を計画されているということでした。同じ30坪の家でも、2階建てなら15坪ずつになりますが、平屋だと床面積が倍になります。つまり床に関する断熱の影響がより大きくなるわけです。だからこそ、どちらが合理的か悩まれたのかなと思います。僕の考えとしては、九州や瀬戸内などの温暖地では、正直なところ「どちらでもいいんじゃないかな」と思っています。採用する断熱の種類によって、初期コストもランニングコストも極端に差が出るわけではないですしね。
それよりも大事なのは、家全体のシステムとしてどう機能するか、という視点だと思っています。建物はパーツの組み合わせでできていますが、最終的には全体のバランスで快適性が決まるんですよね。ですから、床断熱か基礎断熱かを考える時には、まず「どんな間取りにするのか」を重視したほうがいいと思います。最近は広いリビング・ダイニング・キッチンが一体になったオープンな間取りが多いですが、昔ながらの日本家屋のように玄関や廊下で部屋を区切るプランもありますよね。この間取りの違いによって、適した断熱の方式も変わってくるんです。
例えば、家の中がオープンにつながっているプランなら、床断熱でも基礎断熱でも大きな違いは出にくいと思います。でも、エリアが廊下などで分断されている場合は、僕たちはよく基礎断熱+床下エアコンを採用します。床下の空間全体を暖めて、リビングだけでなく脱衣所やトイレまで均一に暖かくできるからです。こういう構成にすると、寒さへの対応力が高くなるんですよね。
一方で、オープンなプランであれば、床断熱でも十分快適にできます。西日本ではグラスウールのような繊維系断熱材を使うことが多いですが、その場合は16kg/m³ほどの密度のものを使い、最低でも10センチの厚みをしっかり入れるといいと思います。僕が尊敬している広島の建築家の方は、さらに5センチプラスして15センチにすると、床下エアコンを使わなくても床の冷たさがほとんど気にならない、とおっしゃっていました。なるほどなと思いましたね。
ただ、どうしても建具で仕切られて水回りが北側に独立していると、そこに熱源がない場合は少し寒く感じると思います。リビングは暖房が入っていても、脱衣所やトイレには人がいない時間が多く、暖房が切られていることもありますよね。そういう時は、やはり基礎断熱+床下エアコンで家全体の空気を循環させてあげる方が快適です。冬に冷たい場所で着替えるのはつらいですし、僕自身も苦手なので、そうした意味でも全体を温められる仕組みを選ぶのがいいと思います。
ですから、床断熱か基礎断熱かを決める際は、単体で考えるより「家全体のシステム」として見ていただくのが大事なんじゃないかなと思います。壁や屋根、窓などもそうですが、部分的に選ぶというより、全体としてどう機能するか。そのバランスを意識することが一番大切なんじゃないかと思います。
そして最後に、みなさんにも気軽に質問をいただけたらと思います。実は僕も気づけば570本くらい動画を撮ってきたんですが、さすがに最近は「これ前にも話したかな」という内容も多くて、ちょっとネタ切れ気味なんです(笑)。でも、こうやって質問をいただくと、あらためて大事なことを整理できるし、家づくりをこれから考える方にとってはいつでも新鮮な話になると思うんです。ですから、どんな小さなことでも構いませんので、コメントやお問い合わせフォームから気軽に質問を送ってください。動画の中で取り上げて皆さんと共有できるものは、また解説していきたいと思います。答えられないことは正直に「これは僕には無理です」と言いますが、できる限りしっかりお答えしていきますので、ぜひ遠慮なく質問を投げかけてみてくださいね。


