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通気胴縁について考える
通気胴縁について考える
今日は少しニッチな話になりますけど、先日ある若いお客様から「通気胴縁って必要なんですか?」っていう質問を受けたんです。通気胴縁って、こんな細い板みたいなものが売ってますけど、「これって意味あるんですか?」って、ちょっと頼りなさそうに見えたのかもしれません。そんな質問を受けたので、そのときに説明させていただいたんですね。そしたらその若いお客様がすごく感心してくれたので、今日はそのときのお話をもう一度再現しながら解説していきたいなと思います。いつものように、僕の板書を見てもらいながら聞いてもらえたら嬉しいです。
まず、この通気胴縁というテーマを話すときには、僕はもう古い人間なので、木造住宅の細かい部分の歴史なんかも一緒に知っておいてもらえたら面白いんじゃないかなと思ったりするんです。というのも、木造住宅って、一時期ちょっと馬鹿にされたり、あまり尊敬されない瞬間があったんですね。それは、古くから在来木造工法で家づくりをしてきた人たちが、ニューウェーブ的な新しい木造住宅に対して、ちょっと「それってどうなん?」みたいな揶揄をしていたような時代があったんですよね。僕のおじいちゃんもそうで、今の木造はアカンって言ってました。「何がアカンって言ってるんかな?」と、最初は思ってたんですけど、思い返すとそれが40年くらい前の話なんです。
当時、世の中の木造住宅の外壁が「モルタル大壁仕上げ」というのが流行った時期があったんですよね。今はまたちょっとブームが戻ってきてますけど。モルタルというのは、いわゆるセメントと砂と水を配合したものを壁に塗っていくんです。それを全部塗り込むのが大壁工法なんですね。それに対して、昔ながらの真壁工法というのは、柱が見えていて、その間に白い漆喰なんかを塗っているやつなんですよね。柱が見えているやつが真壁で、大壁は柱を全部くるんでしまうようなやつなんです。
そのモルタル仕上げの外壁が流行りだした頃に、柱の外側にラス板っていう薄い下地板をバンバン打って、その上に赤い部分、つまりフェルト紙というか、アスファルトルーフィングみたいな防水紙を貼ってたんですね。それでその上にラス網をホッチキスの親分みたいなので止めて、その上にモルタルを塗って、下塗りして乾かして、上塗りして、最後にリシンやボンタイルを吹き付けて仕上げるっていう、そういう工程だったんです。
当時はこれが「技術革新や!」みたいに感じられていたんでしょうね。和風真壁の家は柱が見えていて、その間に漆喰を塗るから、年月が経つと柱と壁の間に隙間ができたりして、そこから光が漏れたりするんですよね。おじいちゃん世代からすると、そういう隙間風や吹き降りが入ってきて、「これはアカン!」みたいに言ってたんです。だから全部をくるんでしまって、隙間を作らない大壁工法が流行ったんでしょうね。
でもね、結果としては、気持ち的には「防水・止水性能をアップして家の耐久性を上げよう」という発想だったと思うんですけど、何年か経つと家の中の壁の表面に黒い点々が出てきて、「これカビちゃうの?」「雨漏りしてるんちゃう?」みたいになって、めくってみたら中の断熱材が黒くなってたり、ラス板が腐ってたり、ひどい場合は柱まで傷んでたりしたんですね。
これってどういうことかというと、昔の家って断熱性能が低かったんですけど、寒かったら石油ストーブ焚いたりして、茶瓶で湯気をボンボン出して加湿してたんですね。気密性もないから、水蒸気が家中に回っちゃって、外壁の中まで入り込んで、しかも断熱材もほとんど入ってないから、外壁の内側は外気とほぼ同じ温度になっちゃってたんです。室内は暖かいのに、外壁の内側が冷たいから結露が起きて、それがどんどん木を腐らせていったんですね。だからおじいちゃんは「モルタル大壁はアカン!」って憤慨してたんです。
そのあと、家の耐久性を高めるために技術者たちがやったことが3つあるんです。まずは、湿気が内側から入ってくるのを防ごうということで、防湿層を設けるようになりました。僕が40年前に大手ハウスメーカーで働いてたときも、石膏ボードに防湿層が付いたものを使うようになりました。でも当時の職人さんたちはその仕組みをちゃんと理解していなかった印象があります。
次に、フェルト紙の防水紙を、透湿性のある防水シート(今で言うタイベックとか)に変えることで、湿気が出ていくようにしたんです。そして最後に、外壁の裏側に通気層を作って、湿気を速やかに外に排出できるようにしたんです。この3つの対策でモルタル外壁の耐久性問題が一気に解決されました。
こういう経緯があるので、「お客さん、通気層って大事なんですよ」って話をしたんです。今は断熱材も多様化していますが、やっぱりグラスウールとかロックウールがコストパフォーマンスが高いので、基本的にはその上に通気胴縁が必要なんですよね。
さらにここ数年、地球温暖化で日本の夏がすごく暑くなって、湿気のリスクがさらに増しているんです。だから通気層をしっかり確保して、外壁に当たる太陽の熱を上手く排出させることが大事なんです。通気層をしっかり確保すれば、室内への熱の侵入を少しでも抑えられるんです。
そのために、通気胴縁のやり方もいくつかあるんです。代表的なのは縦胴縁で、今のサイディング外壁はほとんど横張りなので、縦胴縁で固定するんですね。これだと空気の通りも良くて、施工もしやすいんです。最近は縦張りの木の板を貼る家も増えてきて、そうなると横胴縁で支えることも多くなってきたんです。ただ横胴縁は縦のようにスムーズに空気が抜けないので、1.8m以内に3cm以上の隙間を空けるなどの工夫が必要なんです。
さらに今では、縦胴縁の良さと横胴縁の良さを両立させる十文字胴縁や、エアホール胴縁というのも出てきているんです。特に群馬県の小暮さんという友人は、十文字胴縁推しで、群馬の夏の暑さ対策にも良いって言ってました。十文字胴縁は厚みが倍になるので、窓周りの納まりにも工夫が必要ですけど、その分通気も良くなるし、防水にもなるんです。
最後に、胴縁を木材で作る場合は、防腐剤や防火剤を使うこともあるんですけど、それが金属と電食を起こして錆びやすくなることもあるので、注意が必要です。最近では樹脂製や金属製の胴縁を使う人も増えてきました。
こんなふうに、通気胴縁は家の耐久性だけでなく、気候変動や高温多湿な日本の夏を乗り越えるためにも、とても大事な部分だと思います。見えない部分ですけど、縁の下の力持ち的な存在ですので、ぜひ家づくりの際に意識してもらえたら嬉しいです。