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佐藤先生からの提言:耐震等級3の本当の意味を知る

今回は耐震等級3の本当の意味について解説します。

今回も、2024年元日に発生した能登地方の大きな地震を受けて、佐藤先生からいただいた提言をもとに、地震に対する対策の解説をしていきたいと思います。

先回の動画の中で、「安心安全な家が欲しい」と思う中で、おそらく多くの方が思われている安心な家というものは、地震に対して命が守られる、かつ地震が起きた後も暮らしていけるということ、それを確実に担保できる1つの指標が耐震等級3だというお話をしました。今回はこの耐震等級に対して、さらに深く解説していきたいと思います。

現実の僕たちの現場の中では、建物の安全性、つまり強さを確認する方法は、3つあると言われています。

1つは、建築基準法の仕様規定と言われているものです。これは、建物の壁の量が十分あるか、建物の壁のバランスはうまく配置されているか、建物の柱の柱頭柱脚部分の固定の強度は十分あるか。こういったことを検討するように決められているものです。

ですから、これが最低基準であり、耐震等級で言うと1になります。これを確認する方法が、まずベースにあります。

これよりもう1段階高いレベルの確認として、品確法(住宅品質確保促進法)という法律があります。この法律により、建物の性能表示や耐震等級などという言葉が出てきました。新築を考えている方ではおなじみの長期優良住宅という言葉も、この法律の縛りの中でできたものです。

品確法では、仕様規定をもっと厳密に厳しく見て、耐震等級2・3の家づくりにしましょうということを謳っています。

ここで耐震等級2・3という言葉が出ました。森下さんが盛んに言っている耐震等級3だからいいんじゃないの?と思うかもしれませんが、実はもう1段階高い安全確認のレベルがあります。許容応力度計算という高度な計算法です。これが、構造計算と呼んでいいものに当たります。

仕様規定と品確法は、構造計算っぽいですが、構造計算ではありません。こんなことを言ったら怒られますが、準構造計算・なんちゃって構造計算、というような意味合いで考えてもらうといいと思います。

許容応力度計算と仕様規定・品確法では何が違うかというと、実際の計算のルート・精緻さが違います。
佐藤先生の絵で説明します。言葉は同じ「耐震等級3」ですが、実は、許容応力度計算が求める細かさのレベルと、品確法が求めるルート・レベルには違いがあると言われています。

私もお客さんから「何が違うの?」と聞かれたことがあり、説明に窮したことがあります。その時に苦し紛れで話した説明で、なんとなくお客さんがわかってくれた話で説明します。

ここに2つの構造体の図があります。柱・梁・基礎があり、2階のバッテンは筋交いで、壁だと思ってください。一見同じように見えますが、1点違うのが、片方の図には柱の下にもう1本柱があることです。

私が随分昔に出した動画で、直下率の説明をしたものがあります。2階と1階の壁が一致している家が強い、という話をしたものです。その話と同じです。

例えば、地震力が横にかかって、この壁自体が横にグッと押された時に、強い回転力がかかって梁に伝わります。その時に、1階の柱がある時とない時では、力の伝わり方が違います。

1階の柱がある時は、柱から伝わった力がそのまま下の柱に伝わって、そのまま基礎に伝わります。ガシッと踏ん張るような感じです。

一方で、下に柱がない場合は、力が分散します。分散するからいい、なんてことはなくて、分散していくと梁に対してすごく応力がかかるんです。変形したり、下手したら外れたりしてしまいます。そして、力が広がってしまうので、直に力を受けるのと比べると地震力をガチッと受ける力が弱く乏しくなります。

しかし、壁量という考えで言えば、どちらも同じです。このように、構造体の組み立て方・構造の太さ・大きさなどによって、構造というものは微妙に変わってくるんです。

このように、ただ単に壁量だけというように平面的な捉え方ではなく、立体的に、梁と柱の接合点の力のかかり方などを含めて、細かく細かく考えて安全性を求めたものが、許容応力度計算です。

構造の強さについて、多くの構造の専門家がものすごいおびただしい数を解析した中の結論として、仕様規定・品確法・許容応力度計算の比較をした図があります。

例えば、仕様規定での耐震等級1と、品確法の計算で耐震等級2・3との差が感覚値でどれぐらいかを示しています。建物によってばらつきがありますから、感覚値としています。

一般的に、耐震等級2というのは、100年に1回レベルの地震にあっても耐えられるように、1.25倍の強度にしておく、という感じです。耐震等級3は、もっと長いスパンの500年・300年に1回しかないような強烈な地震に対しても倒れないようにするため、1.5倍ぐらい、としています。

このように、耐震等級1の1.25倍なり、1.5倍になりの形で計算されていますが、許容応力度計算の耐震等級1というのは、イメージ図で当てはめると、いきなり品確法の耐震等級2ぐらいの強度があります。耐震等級2に至っては、品確法の検討でOKとする耐震等級3よりもやや高いです。そして、耐震等級3は、名前は同じでも品確法よりも許容応力度計算の方がグッと高くなっています。

もちろん、単純に何倍という計算ではないかもしれませんが、少なくとも分布イメージとしてはこれぐらいの差があるということです。

みなさんきっと今回の地震を受けて、命を守るために、まずは絶対に新耐震の基準である耐震等級1はクリアしないといけないと思ったと思います。それだと少し怖いから、命は助かっても住めなかったら嫌だから、耐震等級2・3にしたい、新築を建てるなら3にしたい、などと思われるかもしれません。

しかし、実は安全の確認の仕方によってこれだけの幅があるということも知っておいていただきたいんです。

もちろん、既築の家を強化していく際にはいろんな制約があったり、難しさも伴います。その中で、現実的な妥協点というか、とりあえずここで行こうという点を見極める必要もあるかもしれません。

しかし新築に関しては、耐震等級にすることは、必ずしもものすごいコストが掛かるわけではありません。私の感覚では、おそらく数十万~100万円も掛からないと思います。

大きな地震は稀かもしれませんが、今は結構地震が多いので、稀ではないかもしれません。地震があっても住み続けられる家というのは、言い変えたら保険だと思います。そう思うと、そんなこともやっぱり対策されたいのではないかと思います。

今回地震の被害を受けて、みなさん我が事になったと思います。耐震等級3の家が欲しい・求めたいとなった時には、安全の確認の仕方によって大きく幅があるということを、ぜひ注意していただきたいと思います。

また、類似の言葉で「耐震等級3相当」という言葉があります。厳密な定義は全くありませんが、このような言葉を使う人がいますよね。私は、「品確法の3を達成したら、耐震等級3相当」ぐらいの意味合いで使っているのかと思っていましたが、違いました。

実際に耐震等級3相当の家に住んでいるお客さんの話を聞いていると、「仕様規定でいう壁量の1.5倍あるから3相当」と言い放っている人もいるようです。

ちょっとそれは言い過ぎじゃない?と思いますし、誤解・勘違いされることになると思いますから、注意してください。こんなことも知識として知っていただいて、今後のみなさんの家づくり、そしてみなさんの生活を守るために、活用していただけたらと思います。

ぜひ参考にしてください。

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