耐震等級3だけでは安心できない理由
今回は「耐震等級3の家」についてお話ししたいと思います。特に、それにまつわる「注意していただいた方がいいこと」について、少し解説していきたいと思っているんです。
最近、海外で大きな地震があったりして、「やっぱり耐震等級3の家がいいよね」っていう声が増えてきたんですけど、一方で「耐震等級3だから絶対安心」みたいな気持ちもあるじゃないですか。もちろん、それ自体はとても良いことなんですが、それだけで安心するのはちょっと早いかなと思うんです。実はもう1つ、着眼しておいた方がいい大切なポイントがあると、最近の若いお客様とのやり取りの中で感じましたので、今日はそのことを森下チックに、やさしくお伝えしていきたいと思っています。
いつものように、僕の板書を見ていただきながら聞いてもらえたらと思うんですけど、まず、耐震等級3の家が良いとされている背景には、「在来木造住宅は地震に弱い」という、ある意味社会問題のような捉えられ方があるんですね。特に1995年の阪神淡路大震災の時、在来木造住宅がバタバタと倒れてしまって、「やっぱり木造は弱い」と言われた時期があったんです。でも実際には、木造を提供していた設計士さんや工務店さん、そして職人さんたちがその後に猛省して、「これはいかん」と本気で立ち上がって、いろんな改良を重ねてきたんです。
例えば、木造住宅っていうのは、基礎があって、その上に柱があって、梁があって、屋根がかかるっていう構造ですよね。そこに「筋交い」と呼ばれる斜め方向の部材を入れて、横からの力に耐えるように工夫してきた。これがいわゆる地震対策の基本的な構造概念になります。でも、実際にはこの筋交いがポキンと折れたり、外れたりすることがあって、震度7のような大地震ではなかなか効果を発揮しづらかったんです。
一方で、同じ木造住宅でも「2×4工法(ツーバイフォー)」と呼ばれる、ヨーロッパや北米由来の建て方は、外側と内側の両方に構造用合板を貼り付けて釘で細かく留めていく、まるで車のモノコックボディのような構造をしているんですね。この構造のおかげで、耐力壁がふんだんに使われていて、壁の量もバランスも良く、非常に地震に強いとされてきました。
これを受けて、在来木造の設計者たちも「じゃあ在来を強化しよう」と、筋交いだけでなく外周に構造用合板を貼ったり、接合部を補強金物でがっちり留めたりすることで、ハイブリッドな耐震構造へと進化していったんです。そして2000年には建築基準法の改正があり、「四分割法」とか「N値計算」とか、ちょっと難しい言葉が出てきますが、要は「在来木造でもしっかりと耐震等級3が取れるようになった」ってことなんです。
木造は軽くて扱いやすい材料ですし、基礎もそれほどお金をかけずにしっかりしたものができます。それに、快適性や省エネ性を上げるためにも木造はとても有利です。そういうこともあって、耐震等級3を満たす家で、さらに断熱もきっちりやれば、本当に高性能な家になるというわけなんですね。
でもここからが今日の本題です。耐震等級3の家がスタンダードになってきたのはとても喜ばしいことなんですが、それによって見落とされがちなのが「構造面材の品質の維持」なんです。新築時は当然強い。でも、皆さんの家は50年とか、もっと長く住みたい家ですよね? その間に、構造の強度が損なわれてしまったら元も子もない。
具体的には、構造面材を固定している釘やビスが緩んでしまったり、面材そのものが雨水や内部結露で腐ってしまったりすることがあるんです。だから、耐震等級3という性能だけではなく、「耐久性」に関してもきちんと備えておくことが、これからは本当に大事になってくるんです。
ハウスメーカーの営業の人はよく「耐震等級3で耐久性も抜群です!」って言うと思います。でも、僕からすればそれはちょっと煙に巻いたような話なんじゃないかなって。耐久性って誰でも言えるけど、じゃあその「耐久性がある」って具体的にはどういうことなの? って考えると、やっぱり「屋根や壁の通気・換気」がしっかりできているかどうか、これが一番のポイントなんです。
通気や換気がちゃんとできていれば、構造面材も乾燥した状態で保てますし、釘の部分も緩みにくい。雨漏りや結露が起きても、それが乾いてくれれば躯体の性能は維持されます。カビや白アリも来にくくなりますよね。
でも一方で、防水や止水をきっちりやりすぎると、通気や換気を妨げてしまうことがある。これはまさにトレードオフの関係なんです。ここが本当に難しいところで、僕もいろんな動画でこのテーマについてお話ししていますので、ぜひ他の動画も見ていただけたらと思います。
例えば、以前僕が大手鉄骨系ハウスメーカーの現場に相談されて見に行ったことがあるんですけど、その時も内部結露がひどくて、土台のところが錆びて、断熱材の裏がぐっしょり。ちゃんと通気ができてなかったんですね。鉄骨の家でもこういうことがあるんです。
そこで、今日みなさんにぜひ知っておいていただきたいキーワードが「外皮マイスター」という資格です。社団法人「住まいの屋根換気壁通気研究会」がやっている資格制度なんですけど、これは本当に真面目な内容で、研修受けたらもらえるような簡単なものではないんです。試験も難しいし、実習もある。だからこそ、外皮マイスターを持っている工務店さんや会社さんは、信頼できる1つのバロメーターになるんじゃないかなと思っています。
実際、坂本先生(元・国立建築研究所の理事長)や石川先生(耐久性の大家)、それから僕の師匠の松尾先生など、信頼できる専門家たちが設立に関わっていますし、技術もノウハウも惜しげなく公開されています。企業秘密のような内容も含めて、世の中に広めたいという熱意でやっているんです。
また、NPO法人「雨漏り診断指標会」の理事である久保田さんという方も、すごい実務家で、止まらない雨漏りの家を現地で調査して、確実に止めていくという素晴らしい活動をされています。この久保田さんも、外皮マイスターの会でガチなフィードバックをしてくださるので、非常に学びが深い場になっているんですね。
だからぜひ、みなさんも「うちの家、大丈夫かな?」と気になったら、外皮マイスターについて検索してみたり、工務店さんに「こういう取り組みされてますか?」って聞いてみてください。それだけでも、すごく意味のあるやりとりになると思います。
リフォームやリノベーションでも活用できる考え方ですので、ぜひ知識を得て、より良い家づくりにつなげていただけたら嬉しいです。こんな感じで、いつも家づくりについていろんな角度からお話ししていますので、よかったらチャンネル登録をしてみてください。