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誰も知らない「寝室」のよもやま話

今日は寝室に関してお話をしていきたいと思います。

これはセンシティブというか、意外と語られないテーマですよね。この話をしようと思ったのは、以前も紹介した藤山和久さんの「建築家は住まいの何を設計しているのか」という本の中に「なるほど」と思うところがあったからです。僕の勝手な持論も交えて話をしていきたいと思います。

なぜみんな語りたがらないのか、理由はズバリこれです。寝室が物置になっています。古いお家は特にですけど、シニアのご夫婦が布団を敷かれてお部屋に寝られているケースで、スッキリと布団だけで寝ていることはほぼありません。

周りにはタンス・ファンシーケース・スタンドだったり、百貨店の紙袋があったりみたいな感じで、ゴチャゴチャしている中を掻き分けてお二人が寝られていると思います。場合によっては万年床みたいになっているような佇まいの寝室は、意外にあるのではないでしょうか。

リフォームの設計にも注力されている中西ヒロツグさんという建築士の方がいらっしゃるのですが、藤山さんの紹介でこの本にも出てきます。その中西さんが「物置化」という問題について、「寝室は寝室としてだけで考えたら絶対ダメで、必ず収納とセットで考えないとこんなことになるんだ」ということをおっしゃっているんです。

時代感で言うと典型的なのが、6畳の和室に1間(180cmぐらい)の間口の押入れがついている家に起きます。1間の押入れ、つまり90cmの奥行きで180cmの間口ってなかなかのボリュームなんですけど、そこに物を入れていくとどうなるか。ボンボン突っ込む感じになるんです。後で片付けようと言っているうちに5年が経ち、10年が経つみたいな感じです。そうするとそこに入り切らないものが、どんどん溢れてきていきます。

中西さんが、寝室は非社会性があるとおっしゃっています。第三者の目が届かないと言った方がいいんですかね。そういうところがあるので、寝室を考える時は何でも気楽に放り込んでも乱れない収納と、心地よい眠りを誘う通風窓を設えていないといけないということです。

中西さんはリフォーム・リノベーションを得意にされている方なので、今ある部屋を改善したいという方はそこがポイントなんだとおっしゃっています。ひるがえってそれは、新築も絶対当てはまります。

もう1つあるのが、無窓化問題です。窓があるのに窓にハンガーを掛けたり、カーテンをしっ放しにしたりして、窓のない家になってしまう。だから「エアコンをガンガンかけて風通しができないのは問題だ」と中西さんはおっしゃっています。

近年の新築でよくあるのが、6畳の部屋に3畳ぐらいのウォークインクローゼットを作ることです。これは僕も過去の違う動画でも話をしてきて、中西さんも同じことを思っていらっしゃるんだなと嬉しくなるというか、みんな感じることは一緒なんだなと思いました。

ウォークインクローゼットというのは、文字通りウォークしてインします。通路部分があるから、面積の割にあまり収納できないんです。ウォークインクローゼットというのは最後は巨大な押入れみたいになって、物がどんどん溜まっていってゴチャゴチャになるから、中西さんは止めた方がいいとおっしゃっています。

中西さんの理想の寝室はこうです。できるなら8畳のスペースを取って、セミダブルのベッドを2つ置いて、2間(3600mm)ぐらいの間口の壁面収納を作ります。もし面積に制約があったら2間の壁面収納と6畳の部屋にして、シングルのベッド2つとかダブルのベッドみたいな形が理想かな、とおっしゃっています。

僕が思うのは、できるだけ寝室というものを心地よい空間にしておきたいんです。シニアの人がこういう空間で寝るのは、動物が巣に帰ってきて寝るみたいな感じですけど、案外安眠できないんじゃないかと思います。

それでなくとも年齢を重ねると、僕もそうなんですけど、夜に目が覚める・トイレが近くなりますよね。夫婦で「俺は冷え冷えじゃないとアカン」「私は寒くて嫌だ」みたいなやり取りがあったりして、どっちかが我慢してどっちかが不快みたいなことが結構あるので、こういうところに関しては気をつけていただきたいんです。

生活の質という言葉があるじゃないですか。生活の質の中で睡眠はものすごく大きいと思います。だからここを気にしていただきたいです。

一方で、大手ハウスメーカーの豪華なカタログを見ててよく思うのですが、寝室に寝るという行為以外の機能をつけることが結構あります。例えばどんなものかというと、シアタールームを兼ねた寝室や、図書館のように蔵書を並べたりして書斎にするとか、極めつけは
ホームバーを寝室につけることも。

実は僕も若い頃に憧れた時期があるんですけど、こういう寝る以外の機能を寝室に持つというのは、中西さんは「あまりお勧めしません」とおっしゃっています。

中西さんは豪邸の改築とかもやられる人だから、贅を尽くしたり趣向を凝らした寝室に行ってみたら、多くのユーザーがそれに飽きているそうです。せっかくあるシアターを観ないし、図書館はグチャグチャになっているし、バーはもってのほかで全く使わないみたいな感じです。

「やっぱり寝室は、あくまで気軽に使える収納だけ設えたら、あとは睡眠の質を上げることに注力した方がいいんじゃないか」とおっしゃっていて、僕も正にそうじゃないかなと思うんです。

中西さんはエアコン依存問題についてもお話しされています。たしかに風通しが良くていい時期はいいんですけど、今年なんかどうでしょうか。5月に30℃台になったりするようなこのご時世で言うと、35℃の夜の風を入れて本当に快適でしょうか。当然35℃の夜の風に湿気も含んでいますから、全然カラッとしていません。そうするとやっぱりエアコンは、必要かなと思うんです。

気持ちのいい季節の風通しを良くするということはアリですが、寝室の最適なエアコン問題というのがあります。そのために1つ思うのは、寝る所の断熱性です。新しいお家の人はこれから断熱性能を家全体で考えればいいと思いますが、既築の家に住んでいるシニアの方は自分の寝る所の断熱に関してはしっかりやられることをオススメします。

断熱性能がきちんと担保されていたら、エアコンは最小の運転でいいんです。自動運転モードにすれば、最低限の風で一番燃費のいい状態で使えるようになるので、電気代もそんなに苦になりません。なるべく長時間運転される方がよくて、そうなると部屋全体の表面温度が
下がってくるので、より輻射熱による焼け込み問題が緩和されます。

あとはエアコンの場所によって、ベッド・お布団に風が直接かからないエアコンのベストな配置も、断熱改修と一緒によく吟味するのがいいかなと思います。

それと本では語られていませんでしたが、僕が思うのは明るさコントロールです。明るさというのは、照明ではなく太陽光のことです。

個人的なことを言って恐縮ですが、今でも妻と同じ寝室で寝ています。彼女は朝日が昇ってきたら、それで目を覚ましたい人なんです。僕はどっちかというと日中にストレスフルで、夜に目が覚めることも多く、深い眠りに落ちてなるべく起きないようにしたいと思っています。

健康的な生活をして、僕みたいにストレスフルじゃなかったら、夜明けと共に目が覚めるのは健全だと思います。そういう人であっても、例えば今日は休みだから朝寝を1〜2時間余分にしたいとか、今日は疲れているからぐっすり眠りたいとなると、カーテンやスクリーンで遮光をコントロールしていくことも寝室としては重要です。バーとかを作ることを考えるぐらいだったら、遮光カーテンの方が優先度は高いかなと思ったりします。

子どもさんが大きくなっていって、部屋が余っているなら、夫婦が別就寝という形にしたらいろんなことが解決するという問題もあると思うんです。だけどそれが寂しいというパートナーの人もいます。

それから、もう僕も60代なので、「こいつ息してるかな」みたいによく女房が心配してくれます。「お父さん息してるのかな」みたいな感じで気配がわかるということも踏まえながら、別就寝のバランスを考えていただくのも、寝室にとって重要なことかなと思います。

誰も語ることがないし、割とひっそりと内に隠れるだけに、ここはどっちかというと住み手の方が意識的に区別をつけないといけません。自分の大事な眠りの質を担保する場所が、ただの物入れになりかねないので、ここはぜひ気をつけていただけたらと思います。ぜひ参考にしてみてください。

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