Q&A:南の隣家に太陽を遮られているのですが、後から日当たりを改善できますか?
今日も私たちの会社にいただいたご相談の中から、「これは面白いな」と思った質問にお答えしていきたいと思います。今回いただいたのは、南側に隣家があって太陽の光がほぼ遮られていると、後から日当たりを改善する方法はないんでしょうか、というご相談なんですね。それについて、僕なりに感じたアイデアをいくつか解説していけたらと思います。いつものように板書を見ながら聞いてもらえたらと思うんですけど、南の家が建て替わって、それまでは良かったのに急に暗くなったとか、ずっと住んでいた家でも気がついたら南を塞がれてしまって、せっかくの南側を活かせていないなと感じるケースは結構あるんです。建てるときはあまり意識していなくても、住み始めてから実感することって多いんですよね。なので、南が塞がれた家をどう再生するか、僕は大きく4つのアイデアがあるんじゃないかなと思っています。
まず1つ目が「上から採光する」というアイデアです。垂直採光とも言いますけど、平たく言えば南がダメなら空から取ればいいんじゃないか、という発想ですね。代表的なのがトップライト、いわゆる天窓です。南の隣家の影響を受けにくいので、安定して光が取れますし、冬でもしっかり明るさが確保できるのが特徴です。さらに吹き抜けと組み合わせると、2階の屋根にあるトップライトの光が1階まで落ちてくるので、光が空間の中を移動していくような感覚になって、これはすごく魅力的なんです。ただし、トップライトは選び方次第で本当に住み心地が変わります。特に夏は日射が強く入りすぎてしまうことがあるので、ガラスの間にブラインドが入っているタイプや、断熱性能の高いものを選ぶこと、それから設置位置も南面にこだわらず、北側に配置した方が安定した光になるケースもあるので、ここは慎重に検討してほしいところです。またバリエーションとして「モニター屋根」、いわゆる腰屋根という方法もあります。屋根の一部を持ち上げて、その立ち上がり部分にハイサイドライトを設けることで、光の井戸のように光を取り込めるんですね。さらに上部の窓を開閉できるようにすれば、暖かい空気が抜けてパッシブ換気のような効果も得られるので、夏場の通風や排熱にも有効で、なかなか面白い仕組みだと思います。
2つ目は、現実的で取り入れやすい方法として「吹き抜け+室内窓」です。南の1階が暗くても、2階には光が入るケースが多いんですね。完全に密着していなければ、2階の方が光を拾える可能性があります。その2階の光を1階に落とすという考え方です。吹き抜け上部に高窓を設けて、そこから入った光を室内窓や透過性のある間仕切りで広げていく。壁や床も光を反射しやすい素材にして、空間全体で光を回していくイメージです。リフォームでも比較的検討しやすくて、木造住宅でも構造補強をしながら一部の床を抜いて吹き抜けを作ることは十分可能ですし、2階に設ける高窓は非常に効果的です。逆に1階の暗い窓まわりをヌックのような居場所にするなど、空間としての魅力を高める工夫もできるので、この方法はかなりバランスがいいんじゃないかなと思います。
3つ目は「南以外の光を再評価する」という考え方です。いわばコロンブスの卵的な発想なんですけど、多くの方が「南がダメだから」と言われる中で、設計者としては東西北の光もすごく大事にします。例えば東の光は、朝の生活にとても相性がいいんです。朝日が差し込むことで自然と目が覚めて、気持ちよく一日をスタートできる。人間は太陽とともに生きてきた生き物なので、この朝の光はやっぱり心地いいんですよね。また北側の光は安定していて、強すぎないのが特徴です。LDKでも穏やかな明るさを求めるなら北採光はすごく魅力的ですし、アトリエのような用途ではむしろ北の方が適している場合もあります。西日は嫌われがちですが、冬の夕方の西日は柔らかくて、生活の中に豊かな時間を作ってくれます。夕焼けを眺めるような時間って、意外と記憶に残るものなんですよね。そういうふうに考えると、「南=明るい家」という固定観念を少し外して、家全体で光をどう取り込むかを考えることも一つの方法だと思います。
そして4つ目が、ちょっと裏技的なんですが「反射して光を運ぶ」というテクニックです。例えば川沿いの家が明るく感じるのは、水面に反射した光が入ってくるからなんですね。これと同じように、反射光をうまく使うことで明るさを確保することができます。極端な話、お隣さんと関係が良ければ、見えない側の壁を反射率の高い白で塗らせてもらうとか、自分の敷地内に反射パネルを設置するとか、アルミの庇で光を跳ね返して上階の窓に入れるとか、いろんな方法があります。少し漫画的な発想に聞こえるかもしれませんが、実際に効果はあるんです。また室内でも、天井や壁、床の色を明るくすることで反射率を上げて、光を拡散させることができますし、間仕切りをガラスやポリカーボネートにすることで、光を通しながら安全性も確保できます。
こういった方法は、家の条件によって最適な組み合わせが変わってきます。2階建てなのか平屋なのか、隣家との距離はどれくらいか、リビングは1階なのか2階でもいいのか、屋根に手を入れられるのかなど、いろんな条件を踏まえながら、この4つのアイデアを組み合わせていくことで、日当たりはかなり改善できる可能性があると思います。僕はいつもリノベーションのときにお話しするんですが、既存の家を活かすときこそ、一度常識を横に置いて、「ちょっと漫画的かな」と思うくらいの発想を取り入れてみるのがすごく大事なんです。思い切った提案ってなかなか受け入れにくいこともあるんですけど、完成した空間には自信が持てることも多いので、その一歩を踏み出してみる価値はあるんじゃないかなと思います。そんな視点もぜひ頭に置いていただけたら嬉しいです。


