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パッシブハウスって何?パッシブデザインの家とどう違う?

今回は、「パッシブハウス」と「パッシブデザイン・パッシブ設計の家」の違いについて解説します。

パッシブハウスは、最近耳にすることが増えたと思います。パッシブハウスというのは、世界のいろんなところで認めてもらえる基準での温かさが確実に可能な、省エネ性能が高い家を総称したものを指します。逆に言うと、日本のハウスメーカーは省エネ性能が高い家を謳っていますが、あれは明確な基準がなく抽象的な言い方なんです。

パッシブハウスについてマニアックな説明をしますと、冷暖房負荷(空調がどれぐらい必要か)が15KWh/㎡以下に抑えられた家で、一次エネルギー消費量が120KWh/㎡以下の家でなければいけません。また気密性能が、家に50Paの加圧をした時の漏気が0.6回以下という基準があり、これらの条件を満たした家がパッシブハウスと言われています。なのでパッシブハウスは「認定機関が明確な性能基準で認定し、お墨付きを与えた家」ということになります。

日本ではこういう基準で性能の比較をしません。パッシブハウスを、多少家づくりを学び始めた人がわかっている言葉でわかりやすく説明すると、この絵のような三角のピラミッドになります。まず、今建っている新築の家は、省エネ基準の家と言われています。これは平成28年度の基準で、UA値(外皮性能を表す尺度)で0.87W/㎡・K(断熱等級4)になります。これが日本の今の最低基準です。その上が、ZEH(ゼロエネルギー住宅)基準という、年間のエネルギー収支がゼロになる家です。多くの大手ハウスメーカーさんは「ZEH基準を満たしている」と謳っています。ですからある程度の価格の家は、ZEH基準はクリアしていて当たり前になりつつあります。

その上の基準が断熱等級5です。これは、HEAT20というエネルギーの諮問機関の会議体が出したG1基準とほぼ同じです。UA値は姫路のような温暖な地域(6地域)で0.56W/㎡・Kです。その上の基準がG2(断熱等級6)です。その上が、これから日本が基準にしたいと言っているG3(断熱等級7)で、UA値0.26W/㎡・Kをクリアした基準です。日本ではG3は「超高性能だよね」と言われていますが、それよりもう1ランク上が、パッシブハウスの基準です。UA値換算すると0.2W/㎡・Kで、C値の換算で0.2㎠/㎡を下回るような家です。勉強した人はわかると思いますが、今の日本の省エネ基準の家(平成28年の基準)と比べると84%も省エネなんだそうです。

パッシブハウスはすごく厳格な論理で設計された家です。ドイツのパッシブハウス研究所に認定を受けないといけません。パッシブハウスの素晴らしいところは、高い基準で設計されていることはもちろん、施工検査も入ることです。気密検査・風量測定などをしっかり施工しないと認定してくれません。これは認定してもらうにもお金がかかります。現行の日本円換算で、約30万円ぐらいです。日本にもパッシブハウスジャパンという団体があり、そこが橋渡ししてドイツのパッシブハウス研究所に認定してもらいます。

私もパッシブハウスジャパンさんに勉強しに行かせてもらいプログラムも聞きましたが、正直難しいです。なので私の判断としては、もしパッシブハウスを建てたいときは、熟練・尊敬する技術者の人にお願いして設計・コンサルティングしてもらうのがいいと思います。パッシブハウスを自社で設計できて施工までできるのは、かなり技術レベルが高い会社です。日本ではパッシブハウスの認定件数は少なく、数件しかないそうです。全国の猛者たちが、汗をかきながら歯を食い縛ってやるぐらい素晴らしい基準だということです。言い換えると、パッシブハウスは断熱性能はもちろん、蓄熱性能という熱を蓄える性能や、熱を遮熱する性能も高いということです。

それに対して「パッシブデザイン」「パッシブ設計の家」という言葉があります。同じじゃないのかと思いますが、「パッシブデザイン」「パッシブ設計」は、理念・概念や設計のやり方を総称したものを言います。似ている言葉でごっちゃになってしまいますが、そういう違いがあると覚えてください。

パッシブデザイン・パッシブ設計を違う言い方でカッコよくすると、自然の力を最大限に活用する手法のことを言います。5つの原則があり、「断熱・気密」「日射遮蔽」(夏の日差しをしっかりカットする)「日射熱利用暖房」(日射取得をして冬の間、太陽の光で暖房をする)「通風」(風通し)「昼光利用」(昼間は照明をつけなくていい)です。この5つの原則で作られたものがパッシブデザイン・パッシブ設計と言われています。ただこれは、1つの原則と指標であり、パッシブハウスのように明確な性能基準があるわけではありません。

また、パッシブデザインと相対するものとして「アクティブデザイン」があります。大手の鉄骨系の建物をやられる方はアクティブデザインで省エネ性を高めることが多いと思います。これは先進技術・設備(太陽光発電・蓄電池・HEMS)などを利用して、省エネ性を最適化することを目指すというものです。

アクティブデザインと比較してもパッシブハウスはやっぱりすごいと思いますが、問題点が3つあります。1つ目はコストが高くなることです。ZEH基準の家や大手ハウスメーカーさんの家よりも、3〜4割高くなると言われています。2つ目が日射熱の利用を考えるので、立地に制限があることです。できないとは言いませんが、東京の下町のような密集地ではやりにくいですし、検査も厳格なので工期も長くなります。3つ目が先ほども言いましたが、きちんと対応できる設計者・施工者が少ないので頼むところが限られてくることです。

これらを踏まえた上で、私の考えとして、パッシブハウスをどういう方が建てるべきかという判断基準を聞いてもらえたらと思います。

パッシブハウスはドイツで生まれました。昔から日本とドイツは交流が深く、文豪の森鴎外もドイツに留学していたと言われています。気候は日本と比べると平均気温が5〜10℃ぐらい低いです。日本の冬の平均気温はだいたい10℃ぐらいですが、ドイツは-1〜4℃ぐらいなので、日本より寒いです。ドイツの平均気温は、冬は5℃以下で、夏は25℃ぐらいです。湿度も低いのでクーラーが付いている家が少ないそうです。なので日本でパッシブハウスを建てるなら、長野県・北海道・東北のような寒い地域にメリットがあると思います。省エネの理想を追求しているというメリットはありますが、私たちが住んでいる西日本のような温暖な地域に関しては、現実的なトータルコストを考えると、優先順位は分かれると思います。

寒い地域の方は、予算が許せばパッシブハウスを建てたらいいと思います。温暖な地域の人に関しては、まずパッシブデザインを標榜してください。そしてアクティブ設計の要素(太陽光発電・蓄電池など)も複合的に組み合わせて暮らしを最適化をするべきだと、私個人としては思います。ぜひ参考にしてみてください。

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