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勝手口はいる?いらない?

今日は、家に勝手口を付けることによるメリット・デメリットを解説します。

お客様とのお打ち合わせの中で、「勝手口って付けた方がいいですか?」というご相談がありました。家づくりする時にご両親から付けておきなさいと言われたりして、悩む方もいらっしゃると思います。そのことについて詳しく考えていきましょう。

まず勝手口を考えるにあたって、そもそも勝手口とは何かというところから考えていきます。うんちくみたいになりますが、元々勝手口の「勝手」という言葉は、古くは弓道に由来するそうです。弓を引く時に押す方を押手、引く方の手を勝手と言います。

弓を引いて勝つためにするから「勝手」と言うのだと思いますが、押手を固定するのに対して勝手は自由自在に相手を狙うじゃないですか。そこから、自由自在というかあるがままの様みたいなことを「勝手」と比喩するようになった。これは、勝手という言葉の由来の1つだそうです。

また、室町時代の頃に、台所を勝手と呼んでいたそうです。封建時代では、あまりいい言葉ではありませんが「女・子ども」なんて言葉があったりしました。男の人は玄関から入ってどこでも行けるけど、女性や小さなお子さんや下働きの人たちは、玄関からではなく台所経由のお勝手の方から入るみたいなことがあって、これのことを勝手と呼んだそうです。

諸説では、糧(かて)が語源になって、勝手という言葉が生まれたとも言われていて、簡単に言うと勝手というのは要は台所ということになります。勝手口というのは、そもそもが台所などに食糧などの物資を搬入するための出入り口を表したようです。少し広く言うと、家事をする人間の出入り口が本来の機能であると捉えてもいいと思います。

こういうところを頭に置きながら、勝手口というものを味わってもらったらいいのかなと思います。

勝手口に関してはいろんな人が議論していて、よく言われるメリット・デメリットはこんなものがあると思います。メリットは、当たり前ですが外で買う物の多くは毎日食べる食料ということになりますよね。これらの搬入がしやすく、出入りがラクということです。

建築屋的に言うと、法律の言葉で2方向避難という言葉があります。大きなホテルとか集合施設とかに行くと、非常口マークが付いているじゃないですか。あれが1ヵ所だけだとそこで火事が出るかもしれないため、2方向に避難口を設計しておけば安全ということで、2方向避難という概念があります。家の中で言うと、玄関からもお勝手からも逃げられるということで、非常口機能も満たします。

さっきの買い物の搬入口としての延長みたいなものですが、台所はゴミが出るから出しやすいということです。特に生ゴミ関係だと思います。そこから出て、洗濯物を庭に干せるとか、要は家事がラクになるところがメリットになるのです。

最近少なくなった印象もありますが、勝手口の扉がジャロジー窓・引き上げ窓になったりして、光も入るし通風もできるということで、窓的な機能も兼ねるのもメリットの1つだと言われています。

一方でデメリットもあります。一番筆頭は、コストが掛かることです。勝手口の扉が増えますし、勝手口を取るためにスペースも必要ですよね。その前は物が置けないということで、出るためだけのスペースが取られてしまいます。

さっきは避難しやすいと言いましたが、逆に外からもアタックされやすいということです。防犯の面で不利になります。玄関の扉はわりとみんな頑健にするけど、勝手口がガラ空きで弱点になるみたいな感じです。

さっき通風がいいと言いましたが、裏返して冬に若干風が入るとかそこから熱が奪われることもデメリットだと言われています。

こうしたメリット・デメリットを天秤にかける時、私自身が考える勝手口を考える時の最大のポイントは、「日本人は靴を脱ぐということ」です。これが最大の着眼ポイントかなと思っています。

勝手口とひと口で言いますが、2種類あると思います。それは内土間・内靴脱ぎと言われているものと、外土間・外靴脱ぎと言われる勝手口です。サザエさんに出てくる三河屋さんの三郎さんが訪ねてくるのは、つっかけが置いてあるような内土間で、そこへご用聞きに来られていますよね。

また、最近動画を観ていると、「勝手口が邪魔なので床を作って埋めちゃいました」みたいな感じのものをよく観ます。最近はどっちかというと、付けるにしても最初から外土間という形の標榜をされてる人も多いと思います。

ただ、私は内土間派です。勝手口を付けるんだったら、こっちの方が便利じゃないかなと思います。というのも、靴を外で脱ぐのはまぁまぁストレスだからです。

2つの意味でストレスがあります。まず脱いでおいて、外に置いておかれないですよね。だから外土間の勝手口をするなら、絶対に外には下駄箱が必要だと思います。濡れないようにしておかないと不快です。いざ出ようと思ったらベチャベチャになっていることもあるし、雨が降らなくても夜露とかもあるじゃないですか。巷では最近水切れがいいスリッパもありますが、ストレスだと思います。

なおかつ、靴を外で脱ぎっぱなしというのは、たとえスニーカーであってもあまり気持ちのいい感じはしません。実際に近所の犬に持って逃げられたことがありますけど、イタズラ好きの犬や猫がいたら咥えていっちゃうかもしれませんよ。内側のスペースより床面を確保したくて外土間を選んだけど、実際に使ってみるといろいろストレスがあるということを覚えておいてください。

勝手口を考える時の最大のポイントは、屋根をしっかり作ることです。逆に屋根がしっかりできていないと、特に外土間の勝手口に関しては使わなくなることが多いと思います。

勝手口の由来は主に台所だと申し上げましたが、365日1日も休まず食料を加工する所なので、搬入はほぼ毎日あると思います。1週間に1回の溜め買い派もいるかもしれませんが、毎日買い物する人はそこで出入りをしなければいけませんよね。そうなると、勝手口がいるか・いらないかの議論は内・外だけではありません。そこにスムーズに至れるかが重要なのです。

近所のスーパーに行くのも、最近は自転車とか歩いていく人は少なくて、ちょっとの距離でも車で行くじゃないですか。牛乳とかソースの瓶とか重たいからよくわかります。買い物から帰ってきたら、駐車場から本当にその勝手口にダイレクトに入れるのかを考える必要があります。

駐車場の上はカーポートがあっても、お勝手までの距離が1m以上あったらその通路に屋根がないと人はだんだん使わなくなっていきます。しまいには何か物を置いて、余計に通りにくくなることもあるぐらいです。

よくびっくりするのは、最近エコキュートなんかの大きい機械やエアコンの室外機を外に置いて進入路を塞いでしまって、その奥に勝手を切っている家があると、ほぼ意味がなくなっているケースです。

それから、勝手口を作りたい人の発想の中に根強くあるのが、生ゴミをすぐ出せるという考えです。生ゴミはもっともすぐ捨てたらいいのですが、一定期間バッファを作って溜めておきますよね。週に何回か出す時に、生ゴミを室内に置くのは嫌だから室外に置ける勝手口がほしいということです。

生ゴミを外に出せるように屋根がちゃんとあって、駐車場を含めてゴミ捨て場のある道路側にスムーズに行けるようなアプローチが取れていたら別ですが、そうでなければただ出しておくだけの勝手口になることが多くあります。

そうなると「窓でもいいんじゃないですか?」と私は思うのです。大きく開く窓にして、窓の下の手が届く所に台を作っておいて、猫やカラスに荒らされないようなゴミ箱を作っておけばいいと思います。

勝手口のメリット・デメリットというのは、得られるものというより、それを使うにあたってあなたにとって面倒なものになっていないかどうかだと思うのです。「うちは玄関から台所まで距離があるので勝手口がないといけない」とよく言われますが、私はその距離をスーパーの荷物を持って入るストレスより、靴を脱ぐ方がストレスがあります。

家をバッと出て「あれを忘れてた!」という時、靴を脱いで上がる時にイラッとした経験、みなさんにもあるのではないでしょうか。私なんかは横着なお父さんなので、土足のままそっと上がってみたりして、それをたまたま娘に見られてとても怒られるみたいなことも
あるぐらいです。それぐらい、たったこれだけでも靴を脱ぐのはストレスになります。

台所への荷物の搬入のためだけに勝手口を近くに作るケースだと、人間の性として使わなくなることの筆頭じゃないかと思います。

ポイントは、靴を脱ぐということが何なのか。靴を脱ぐことのストレスがこれによって緩和されるのか。このことを考えることです。あるいは、昔の勝手口ってそこそこのスペースを取っていましたので、スペースを取るということはそこに絶対下駄箱が小さいやつでも必要になります。

ましてや、主婦の方で特に食事の準備を担当されているのだったら、買い物専用シューズを使うのは面倒くさいですよね。仕事帰りに買い物するような人だったら、玄関から入った方がいいと思います。または、玄関から台所にうまく入れるような間取りを、コンパクトに考える方が絶対にいいと思います。

一方、1階の外に物干しがあって、そこに出やすいようにするための勝手口なんかは必要だと思います。それは、本来の勝手口の機能ではなくテラスドアみたいなイメージです。別の機能として要件を考えていただいて、勝手口あり・なし問題を考えてもらえたらと思います。ぜひ参考にしてみてください。

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