高性能住宅の時代だからこそ起きる、断熱性能の落とし穴
今回はこちらにあります、「高性能住宅の時代だからこそ起きる、断熱性能の落とし穴」というお話をしたいと思います。
これをなぜお話ししたいと思ったのかということなんですけど、実は私も営業をしていて、相見積もりと言いますか、ライバル会社さんや他社さんと比較されるお客様がたくさんいらっしゃいます。そんな中で、お客様から今回プランや仕様を見せていただく機会がありまして、それを見て「あれ?」と思ったんです。僕たちも社内で省エネ計算をしていますので、大体この仕様だったらUA値や断熱性能はこの辺かなというのはわかるんです。でも仕様を見せていただいた時に、「ここまで数字が上がるかな」という疑問を感じました。そして調べていくと、「なるほど、こういうことなんだ」ということがわかりましたので、今日は動画にして皆さんにお伝えできればと思います。よろしくお願いします。
ではまず、そのお話をする前に、「高性能住宅とは何か」ということなんですけど、今は高性能住宅という言葉が当たり前になってきていますよね。でも家の性能というのは本当はたくさんあります。その中でもよく言われるのが、断熱性能・耐震性能・気密性能、この3つです。この3つの性能が一定以上高い住宅を、高性能住宅と呼んでいます。
そもそも断熱性能って何?という方もいらっしゃると思います。ここにある表を見たことがある方も多いと思いますが、日本は地域を1~8地域までの約8つに分けています。1・2地域は北海道、3・4地域は青森や宮城など東北地方です。そして私たちが住む兵庫県姫路市など太平洋側は5・6地域になります。この辺りが比較的温暖なエリアと言われています。さらに7地域は宮崎県や鹿児島県あたり、8地域が沖縄県です。私たち姫路市は6地域になります。
横の表を見ていただくと、今の建築基準法で建ててもいいとされる最低限の断熱性能が0.87です。この数字は低いほど性能が高いと思ってください。つまり0.87が最低基準で、これより断熱性能の悪い家は建てられません。そして日本では2030年までに、この基準を0.6程度まで引き上げましょうという方針があります。
この0.6というのが今のZEH基準です。今はZEH住宅というと「そこそこ性能のいい家」というイメージを持たれる方も多いと思いますが、この流れでいくと2030年頃にはZEHが最低基準のような位置付けになってくると考えていただければいいかなと思います。
その上にはHEAT20という基準があって、G1・G2・G3というグレードがあります。ZEHが最低基準になれば、さらに上を目指すとなるとG1で0.56、G2で0.46という基準になります。私たちが普段ご提案している住宅は大体0.4~0.35くらいで、G2とG3の間くらいです。松尾先生はこれをG2.5と呼ばれています。私たちが住む6地域では、このG2.5くらいあれば、これからの法改正にも十分対応できるでしょうし、実際には冬の寒さよりも夏の暑さの方が厳しくなっていますので、それも見越してこれから建てる家はG2.5くらいある方がいいかなと思っています。
ですので、まず皆さんが家づくりを考えるなら、自分が建てる地域が何地域なのかを知ることが大切です。例えば2030年の最低基準でも、1地域なら0.4になります。このように地域によって基準は違いますので、お住まいのエリアが何地域で、その地域ではどの数字を目指しているのかを把握しておくことをおすすめします。
では、なぜ断熱性能を上げないといけないのでしょうか。もちろん快適に暮らせるからというのもあります。今回は私たちの6地域でお話ししますが、2028年の最低基準の住宅では、暖房を止めた状態だと室温は大体8℃を下回らない程度になります。G1なら10℃、G2なら13℃、G3なら15℃を下回らないという目安です。
つまり断熱性能が上がれば、家の冷え方が全然違います。朝起きた時に1階がものすごく寒いということがあると思いますが、UA値や断熱性能が上がるほど、それが緩和されます。体にも優しいですし、さらに横に書いてあるように、平成28年省エネ基準の住宅を基準にすると、G1で約30%、G2で約50%、G3では約70%エネルギーを削減できます。つまり使うエネルギーが減るので光熱費も安くなります。そして国としてもCO2削減のために性能の高い家を増やし、消費エネルギーを減らしていきたいという考えがあります。ですから、お客様にも国にもメリットがあるので、段階的に性能の高い住宅を増やしていこうという流れになっています。
私が先ほどから言っている断熱性能ですが、これはUA値という計算で求められる数値です。間取りや断熱材の種類・厚み、窓の性能や大きさなどが決まれば、省エネ計算によって家を建てる前から断熱性能がわかります。ですので私たちは、設計ができた段階で、自分たちの家がどれくらいの性能なのかをお客様自身でも確認してくださいとおすすめしています。
UA値というのは、「U」が熱貫流、「A」がアベレージ、つまり平均という意味で、日本語では外皮平均熱貫流率と言います。ちょっと難しい言葉ですが、熱損失量を外皮面積で割った数字です。外皮面積というのは屋根や壁、床など外部に接している部分の面積のことです。どんなに性能のいい家でも熱は少しずつ逃げています。その逃げる量を面積で割って表したものがUA値なんです。
ここからが建築業界で起きていることなんですが、本来はUA値を競い合うこと自体は悪いことではありません。ただ、その数字だけが先行してしまっているように感じることがあります。
例えばUA値0.6の家と0.4の家があって、価格も間取りも同じなら、皆さん0.4を選びますよね。営業する側もどうしても数字を競うようになってしまいます。そこに落とし穴があるんです。
まず1つ目は、「窓を減らすことでUA値は良くなる」ということです。
図をご覧いただくと、冬は屋根から5%、換気15%、外壁19%、床9%に対して、窓からは52%もの熱が逃げています。夏は屋根6%、換気5%、外壁12%、床3%に対して、窓から74%も熱が入ってきます。もちろん方角によって多少違いますが、窓の影響が非常に大きいことがわかります。
つまりUA値だけを良く見せようと思えば、窓を減らせばいいんです。
こちらの図では、一般的な100mm厚の断熱材が入った壁を基準にすると、樹脂窓のトリプルガラスでも性能は約55mm分、つまり壁の半分程度と言われています。メーカーによって多少違いますが、それくらいの差があります。樹脂窓のペアガラスなら約30mm程度、アルミ樹脂複合サッシでは15mm程度しかないものもあります。
もちろんサッシメーカーさんもどんどん性能を上げてくださっていますが、それでも壁より弱いのは事実です。だから数字だけを追えば窓を減らすのが一番早いんです。
でも僕たちは日本人ですから、季節のいい時には窓を開けて風を感じたいですよね。そして自然光も取り入れたいです。私たちはパッシブ設計をしていますので、なるべく昼間は照明をつけず、太陽の光で暮らしていただきたいと考えています。そのためには最低限必要な窓があります。
もちろん設計の考え方によって窓を少なくすることが間違いというわけではありません。でも、必要な場所には必要な大きさの窓を付けてあげたいと思っています。ですから図面を見て「UA値がいいな」と思ったら、しっかり光を取り込む窓や風を通す窓が確保されているかも確認していただきたいと思います。
そしてもう1つがこちらです。
この2つの家は同じUA値だと思ってください。左は屋根だけ性能が非常によく、壁はそこそこですが、床だけ性能が低い家です。一方、右は屋根・壁・床すべてが極端に高性能ではないものの、バランスよく断熱されています。
私たちがおすすめしたいのは、同じUA値ならバランスのいい家です。
実際、私が最初に「あれ?」と思ったプランも、屋根は非常に性能が良く、夏は快適そうなんですが、床だけがかなり弱かったんです。平均すればUA値は良くなりますから数字は出ます。でもバランスは良くありません。
そうなると、上半身は暖かいけど足元は冷たいという状態になります。逆に床だけ良くて屋根や壁が弱くても同じです。しかしUA値だけでは、その違いは見抜けません。
ですので、「UA値が良くてもバランスが悪いと意味がない」ということなんです。
このイラストは、私たちが断熱やパッシブ設計を教わっている松尾先生がよく使われる例です。同じ暖かさでも、こちらは高性能なダウンを着ているのに短パン姿です。上半身は暖かいけれど足元が寒いので、全体として暖かいとは感じません。それでもUA値は出てしまいます。
一方こちらは、程よい厚みのコートを着て、ズボンも履いて靴も履いています。ものすごく暖かいわけではないけれど、全身のバランスがいいので住み心地はとても良くなります。
今、こういうことが実際に起きているんじゃないかなと私は懸念しています。
ただ、お客様がこれを見極めるのは難しいですよね。UA値はいくらですかと聞いて、「0.4です」「G2以上です」「G3です」と言われると、それだけで安心してしまうと思います。
今まではそれでも良かったんですが、高性能住宅が当たり前になってくると、そういう計算の仕方をしているケースもあるかもしれません。
ではどう見極めるかというと、営業マンさんや設計の方に「計算書を見せてください」とお願いしてみてください。自社で計算している会社ならすぐ見せてくれると思いますし、外部委託している会社でも計算書は必ずあります。
その中で、床・壁・屋根、それぞれのU値を確認してみてください。例えばUA値が0.4なら、屋根も壁も床も近い数字になっているかを見ることが大切です。屋根だけ極端に良くて他が悪いなら、先ほどお話ししたようなバランスの悪い家になっている可能性があります。
計算書を見るのが難しければ、「屋根・壁・床の断熱性能はバランスよく設計されていますか」と営業マンさんに聞いてみるだけでもいいと思います。「ちゃんと見ていますので大丈夫ですよ」と説明してもらえれば安心できます。
なかなか聞きにくい内容かもしれませんが、ぜひ頭の片隅に置いていただいて、そういう機会があれば確認してみてください。意外と気づきにくいポイントですので、ぜひチェックしていただければと思います。


