2026年:今だから住宅見学会で見ておくべきポイントを考える
今日は久しぶりに、家づくりを考えておられる方が情報収集やパートナー選びのために行かれる現場見学会・住宅見学会で、「ここを見ておいた方がいいんじゃないか」というポイントを、最新版の考え方としてお話しできたらと思います。あるYouTuberの方が見学会のチェックポイントを解説されているのを拝見したのと、ここ最近、住宅業界が販売促進に力を入れる中で「高性能住宅」が当たり前になったなと感じたことが、今回このテーマを取り上げようと思ったきっかけなんです。
僕の師匠である松尾先生が、十数年にわたって「家は高性能でなければいけない」と社会運動のように訴えてこられました。断熱・気密、パッシブ設計も含めて、家づくりはトータルで考えるものだと。その流れが広がり、高性能が当たり前になったのは本当に素晴らしいことやと思います。でも一方で、どの会社も高性能となると、比較軸が「価格」だけになってしまう危うさも感じるんです。相見積もりやセカンドオピニオンキャンペーンで「うちの方が安い」「合わせます」と前面に出す。価格も大事ですが、それだけで家を比べるのは少し寂しい気がします。
動画では、クロスの継ぎ目や幅木との隙間、建具の動き、サッシからの隙間風、床下のゴミなどをチェックしろとありました。それは確かに大事ですし、丁寧な仕事は前提です。ただ、検討段階で“荒探し”に力を入れるよりも、これからの暮らしをどれだけ想像できるかの方が大事なんじゃないかなと思うんです。
まず一つ目は「抜け」と「広がり」。内部空間に、面積以上の広がりを感じられるかどうかです。座って部屋の対角線方向に視線をやってみてください。スーッと視線が抜ける、光が差し込む、外の空や緑が見える。例えば北側の高窓から柔らかい光が入り、青空がちらっと見える。それだけで気持ちがふっと軽くなる。こういう工夫がある家は、設計者が空間をきちんと把握し、暮らしを想像している証拠やと思います。「この天井の高さや形に意図はあるんですか?」と聞いてみると、考えている人は嬉しそうに語ってくれるはずです。
二つ目は「たまり」、つまり人の居場所です。ただ広いだけでは落ち着きません。壁にもたれられる場所、少しこもれるヌック、造作ベンチ、背中に壁があって包まれる感覚。天井が少し低い空間も、実は安心感があるんです。「一人で本を読んだり、ぼーっとできる場所はありますか?」と聞いてみてください。家族の団らんも大事ですが、自分の定位置があるかどうかはすごく大事やと思います。
三つ目は光の質。高性能化で窓が小さくなる傾向がありますが、昼間に照明なしで心地よく過ごせるかは重要です。見学会では照明を消させてもらって、自然光だけの状態を見てください。直射日光だけでなく、反射光による柔らかい明るさ、陰影の美しさ。夜の照明計画についても「どんな雰囲気を想定していますか?」と聞くといいですね。明るいだけでは落ち着きません。高級ホテルのラウンジのように、必要なところだけを照らす光が、心をゆるめてくれるんです。
四つ目は空調と空気の流れ。エアコンの風が苦手な方もいますし、風の入口と出口がどこかを知るのも大事です。夏なら湿気対策をどうしているか。「高性能ですよね。でも夏の除湿はどう考えていますか?」と笑顔で聞いてみてください。具体的に答えられる会社は信頼できますし、「うちは高性能ですから」とだけなら少し注意かもしれません。
さらに、設計者との対話も大切です。「この家に住むとしたら、自分の定位置はどこにしたいですか?」「休日の午後、2時間自由時間があればどう過ごしたいですか?」「一番バタバタしてストレスを感じる時間帯はいつですか?」こんな質問をしてくれる人は、本気で暮らしを考えています。家族の団らんだけでなく、それぞれの時間帯やリズムまで想像してくれる。抜けやたまり、光や風を面白がってくれるお客さんと家づくりをしたい、というのが設計者の本音やと思います。
高性能が当たり前の時代になって本当に良かった。でもだからこそ、見えにくくなっている価値もあるんです。価格だけでなく、暮らしの豊かさにつながる付加価値を、ぜひ見学会で感じ取っていただきたい。そんな視点を頭に置いて見ていただけたら、家づくりはきっともっと楽しく、加速していくと思います。


