メニュー

Idea

トップページ / 家づくりの思想

家を間取りから考えない。

すべての家は、土地の上に建つ。
このシンプルな事を、住宅業者の多くが軽視してきました。
「ご希望の間取りをかなえます。」ほとんどの営業マンがこう提案するから、
お施主様も理想の間取りから家づくりを考えるようになる。
さらに技術の進歩がその流れに拍車をかけ、
いつの間にか家は、土地から切り離された工業製品になってしまいました。
けれど、いくら時代が変わろうとも、
家の本質は土地に建つ「箱」。
土地には、大きさや形以外に、季節ごとの日射環境に影響を与える方位はもちろん、
地域の気候や、さらに山や川など窓から見える風景などのたくさんの環境要素があります。
さらに、将来に新築されたり建替わったりする隣家変化の想定も必要です。
それらを吟味せずに家づくりを考えるなんて。
土地の持つ固有の長所を活かし短所を補う。
だから私たちは、「間取りから考える」家づくりの提案をしません。
そもそも暮らしていくうちに「理想の間取り」は、どんどん変わるもの。
極端な話、間取りなんて後から変えることだってできる。
そう、間取りを変えられる家にすればよい。それだけのものなのです。
まずは土地の持つ力を活かしながら、枠組みとしての「箱」を考える。
間取りはその時々に合わせて柔軟に変えられるようにする。
ここから私たちの家づくりがはじまります。

家が暮らしに何かを強要するなら、
私は好きになれません。

家は土地の上に建つ「箱」であると同時に、暮らしの場です。
暮らす人のために家があります。家のために人が暮らすのではありません。
暮らしていけば、モノは増え散らかるもの。
そのために、「片付けられない。」「捨てられない。」と自分を責めてほしくない。
そういう人の弱さを受け入れられる家を造りたい。
もっと言うと、弱さを受け入れ、
散らかりにくくて片付けやすい“仕組み”を家に持たせたい。
流行りのミニマムな暮らしもいい。シンプルな暮らしもいい。
だけど、家が暮らす人に何かを強要するのなら、私は好きになれません。
今年82歳になる私の母も、いまだに嫁入り道具の布団が捨てられません。
けれど私はそんな彼女を愛おしいと思うのです。
昔は苦にならずにできた家事も、高齢になるとつらさを感じるようになります。
年を重ねた母は、なのに家事を頑張ってくれます。
無理はしなくていいと私がいっても、家族の役にたちたい気持ちは消えないのです。
ちょっとくらい、だらしなくてもゆるしてくれる。
年をとっても、やさしく受け入れてくれる。
そんな懐のある家が私は好きです。

家は古くなるからいい。

建った瞬間が百点満点で、年月とともに価値が減少する家ではいけません。
外観も、住み心地も、経年するごとに趣が変わっていく。
その変化を楽しんでもらえるような、そんな家でありたいと思うのです。
使っていくうちについたキズや汚れもまた愛おしくなるような、
そんなふうに家を愛してもらえたら、とてもしあわせなことじゃないでしょうか。
だから少し値ははっても、木、金属、石やコンクリートなど、
本物の素材を使いたい。庭には草木を育てたい。
日本の木造住宅の平均寿命は30年。つまり、30年で壊されてしまう。
ほとんどが、老朽化したから壊されるのではありません。いらなくなるから壊される。
なぜいらなくなるのでしょうか?
暮らし方は年齢や家族構成によって変わるもの。
夫婦二人から始まった家族は、子育てを経て二人に戻り、やがて一人になる。
そして、間取りと暮らしが合わなくなる。間取りの寿命が終わってしまう。
買い値を優先して、新建材を選らんで建てたけど、
30年するとずいぶん古びて、ただみすぼらしくなってしまった。
そんなところが理由です。
この歳になって分かったのは、時間がたたないと実感できないことがあるということ。
35歳と60歳の考える“いい家”は、まったく違います。
何年経ってもこの家でよかったと感じてもらえるように、
そして、次の世代の人たちがよろこんで住み継いでくれるように。
時には、ご希望にそぐわないお話をするかもしれません。
それはやめておきましょうと、お断りすることもあるかもしれません。
38年工務店の親父として生きて来た男のお節介を、どうかお許しください。
家づくりのことなら、なんでもお気軽にご相談ください
お電話でのお問い合わせ
受付時間 9:00〜18:00 【水曜定休】