エアコン1台で涼しい家と暑い家の違いとは?2つのポイントと大事なシュミレーションの話
すごく暑くなってきましたね。最近は高気密・高断熱の家がすごく多くなってきましたけど、これから大事なのが空調です。夏は涼しく、冬は暖かい。その環境をどういう空調や機械を使って実現するかというのも大事かなと思っています。今回も、私たちが10年以上前から取り組んでいる、エアコン1台での全館空調についてお話ししていきたいと思います。
最近は家の性能が高くなってきましたので、空調もエアコンでやろうという会社さんがすごく増えています。エアコンは省エネですし、台数が少ないとイニシャルコストも安くなります。もちろんランニングコストも抑えられます。だから、僕たちも「夏は小屋裏エアコン、冬は床下エアコンで全館空調をしています」という会社さんをよく見かけます。けれども、高気密・高断熱だから必ず成功するというものでもないんです。僕たちも10年以上前に松尾先生に教えていただいてチャレンジしましたが、最初の頃は失敗して、お客様にご迷惑をおかけしたこともありました。でも長く続ける中でいろいろなポイントがわかってきました。全部をお伝えすることはできませんが、重要な2つのポイントがありますので、今日はそのお話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
ではまず、大事な1つ目のポイントです。これはいろんな動画でもお話ししていますが、窓の計画がすごく重要なんです。僕たちはパッシブ設計をしていますし、床下エアコンや小屋裏エアコンをやっている会社さんも、パッシブ設計を取り入れているところが多いです。パッシブというと「なるべく窓を大きくする」というイメージを持たれる方も多いと思います。でも、それが失敗する原因の1つになることもあります。パッシブ設計の基本は、冬場にしっかり日が入る南側は大きく、その他は小さくするという考え方です。そうすると南側にたくさん窓を付けることになります。冬はすごく暖かいのですが、問題は夏です。大きなガラスがあると熱はガラスやサッシの枠を通してどんどん室内に入ってきます。目には見えませんが、外の暑い熱が押し寄せてきている状態なんです。だから南側に大きな窓をたくさん付けると、冬はいいけれど、夏は暑い熱がどんどん入ってきます。いくらエアコンが頑張っても、なかなか冷えません。
だから窓を付ける位置はすごく大事ですし、なるべく日射の熱が入ってこないようにする設計が必要なんです。そのポイントの1つが「10対3の法則」です。これは庇の話です。夏は太陽高度が高いので、その日射をしっかり防ぐことが大切です。ガラスやサッシに直接太陽の熱が当たらなければ、そこまで大きな熱は室内に入ってきません。だから、まずは日射をしっかり防ぐ設計をしなければいけないんです。10対3というのは、例えばサッシの高さを10としたときに、庇はその3割以上出しましょうという考え方です。2mのサッシなら最低でも60cmは必要です。ただ、60cmでは十分防ぎきれないというのが僕たちの経験なので、基本的には90cmくらい出すようにしています。
ここをご覧いただくとわかるんですが、この庇はウッドデッキの雨よけも兼ねていますが、ここまでしっかり出しています。これは1m70cmあります。夕方になると太陽高度は低くなりますが、これくらい出ていればかなり日射を防ぐことができます。ただ、出しすぎると今度は冬場に庇が太陽の熱を遮ってしまい、室内に日射を取り込めなくなります。ですから庇の長さはとても難しいんですが、夏場を考えると、しっかり庇を付けることがとても重要です。庇があれば日射をしっかり遮ることができますが、庇のない家もたくさんありますよね。その場合は、僕たちがいつもおすすめしているシェードです。晴れている日は朝からシェードを下ろして過ごしていただくと、日射をかなり防ぐことができますので、ぜひ取り入れていただければと思います。
次に2つ目のポイントですが、湿度の管理です。最近はこれがすごく重要だと感じています。経験的には3〜4年くらい前から、夏の湿度がすごく上がってきています。感覚的にも、その頃から夏の暑さが一段階厳しくなったように感じます。もちろん気温も上がっていますが、圧倒的に違うのは湿度なんです。だから、いくら冷やしていても、熱の侵入を防ぐだけでは限界があります。湿度をしっかりコントロールできれば、室温が27〜28℃くらいでもすごく快適なんです。
僕たちはこういう温湿度計を使っています。温度と湿度が表示されるんですが、普段みなさんが見ている「湿度〇%」という表示は相対湿度です。湿度には相対湿度と絶対湿度の2種類があります。相対湿度というのは、例えば25℃の空気が含むことのできる水分量に対して、今どれくらいの割合で水分を含んでいるかを示したものです。温度によって空気が含める水分量は変わります。だから、25℃の50%と30℃の50%では、実際に含まれている水分量は違うんです。温度が高くなるほど空気はたくさん水分を含めますので、同じ50%でも中身は変わってきます。
僕たちが気にしているのは絶対湿度です。絶対湿度はグラムで表されます。温度にあまり左右されず、空気中に実際どれだけ水分が含まれているかを同じ基準で見ることができます。業界でも絶対湿度という言葉を聞くようになったのはここ数年ですし、一般の方が気にされることはあまりないと思います。でも、相対湿度だけでなく絶対湿度を見ながら生活するだけで、すごく快適な家になります。
僕たちは「見張りんぼ」という機器を使っています。ネットでも購入できますが、ここに絶対湿度が何グラムという表示で出ます。このグラム数を見ながら、「今日は蒸し暑いな」「湿気が多いな」「少ないな」と判断して、エアコンをドライのオートで回そうかというように考えています。目標としては、夏場は絶対湿度13gくらいを切りたいですね。今は14.5gくらいなので、あともう少しという感じです。室温は27℃くらいでも構いませんが、その代わり絶対湿度を13g前後まで下げると、すごく快適な空間になります。まずは湿度に注目して、「今日は高いな」「低いな」という感覚を覚えていただくことが大切です。そして、それをどう下げていくかはエアコンの使い方でも変わりますし、換気設備によっても調整できますので、そういう観点で見ていただければと思います。
ここまで、夏をエアコン1台で快適に過ごすための2つのポイントについてお話ししました。でも、これを家を建てる前に見極めるのはなかなか難しいですよね。その会社さんが本当にできているかどうかはわかりにくいと思います。そこで僕たちがおすすめしているのは、夏場に実際に建っている家の見学会へ必ず参加することです。行ってみれば一目瞭然です。そして「エアコンは1台で動かしているんですか」「2台なんですか」と質問してみてください。これから住宅展示場へ行かれる方は、ぜひ室外機が何台あるか数えてみてください。展示場は建物自体が大きいということもありますが、意外とたくさん付いているんです。
最後に、それをどうやって見極めればいいのかというお話です。まず必ず聞いていただきたいのが、「日射シミュレーションをしていますか」ということです。やり方はいろいろありますが、土地や方角、周囲の建物などをCADソフトに入力してシミュレーションを行うと、その土地では夏の何時頃にどこへ日が差すのか、冬は太陽高度が一番低い日にどの時間帯でどこまで日が入るのかがすべてわかります。その結果をもとに窓の位置をしっかり決めているかどうかが大切です。そうすることで、夏場のモワッとした熱気が窓から入りにくくなりますし、必要な日射遮蔽もきちんと計画できます。ですから、まずはこうしたシミュレーションをしているかどうかを確認してください。
そして、先ほどお話しした相対湿度と絶対湿度についてですが、なかなか専門的な質問は難しいと思います。一番簡単なのは、「相対湿度と絶対湿度の違いは何ですか」と聞いてみることです。そういうことを意識して設計している方であれば、すぐに答えてくれると思います。逆に「絶対湿度って何ですか」という反応であれば、まだそこまで意識されていないのかなという判断材料にもなると思います。
ぜひ、これから家づくりを考えている方は、勇気を出して質問してみてください。よろしくお願いいたします。


