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プランニング作成無料のプランを値踏みするポイント

今日は、お客様が人情的な思いで、複数の会社にいろいろと調べてもらう際に、提案内容や見積もりを比較されることがありますよね。その時によく見かけるのが、「間取り・プランニングを無料で作成しますよ」というものです。僕らから見ると、そのスピードがすごいなと思うほどの勢いで図面を仕上げ、「こんな感じです」と見せてくれる。いわゆる“プランニング作成無料”という時の、あの無料プランですね。ただ、それを見る時に、「果たしてこれは本当に参考になるのかな?」と首をかしげることが多いんです。そこで今日は、その“無料プラン”を見る時に、どこを押さえて評価すればいいのか。「値踏みする」と少し意地悪な言い方をしていますけど、そのポイントについてお話していきたいと思います。

これはもともと、僕の師匠である松尾先生が「エコハウスを設計する時のメソッド」として常々言われていることで、非常に的を射た考え方なんです。僕なりの解釈も交えながら、今日はその辺を少し噛み砕いてお話ししていきますね。いつものように僕の板書を見ながら……と言っても、字が多くて見づらいと思うので、話を聞きながらなんとなくイメージしてもらえたらと思います。

まず最初に、ややこしいんですけど「間取り作成無料」「プランニング作成無料」と言いますよね。でも、僕ら建築の立場からすると、これは一緒くたにしてほしくない言葉なんです。というのも、「間取り」と「プランニング」は実は違うものなんです。間取りというのは、部屋の配置やつながりを平面図で表したもの。昔なら方眼紙にチャカチャカっと手書きして、「はい、こんな感じです」と見せていた、あのレベルです。水回りや階段、廊下の位置、窓やドアの配置、家具の想定配置などをざっくり表したもの。2LDK・3LDKといった表現も、間取りを簡単に言い表したものですね。

一方で、僕らが言う「プランニング」は、それだけではありません。敷地条件や周辺環境、そしてお客様の地域ならではの暮らし方までを総合的に考えて、住宅設計全体の方向性を決めるプロセスを含んだものなんです。だから、まず敷地条件の把握が絶対に必要です。形や面積はもちろん、方位、眺望、隣地との関係、玄関の向き、そして法的な制約まで、すべて把握します。それに加えて、住まわれる方のライフスタイルや趣味、年齢構成、将来の暮らし方の変化をヒアリングしながら、採光・通風・動線・プライバシーなどの要素を丁寧に検討していく。さらに建物の立体的な構成や外部空間とのつながりまで考える。それがプランニングです。間取りよりもずっと広い、上位の概念なんです。

だから「間取りを持ってきました」という段階で、僕としては「それではダメですよ」と言いたくなります。無料でもらった間取りだけでは、家づくりの本質的な部分は何もわからないんです。敷地条件や環境を踏まえたプランでなければ意味がない、そう思います。

その上で、無料プランを見る時に注目してほしいポイントが6つあります。まず1つ目は「敷地条件を踏まえて、景色をどう取り込んでいるか、あるいはどうカットしているか」。隣家からリビングが丸見えとか、庭が落ち着かないようではダメですよね。例えば隣の勝手口がリビングの正面にある場合、その視線や生活感をどう遮るかも工夫が要ります。車庫や庭の配置も含め、敷地全体のゾーニングをどう考えているかが大切です。ゾーニングとは、建物の配置や外構の関係を最初に整理する工程で、これができていないプランは大抵“間取りだけ”で作られています。

僕の師匠のさらに師匠にあたる大西賢治先生という有名な方がいらっしゃるんですが、その方の設計された住宅を見に行ったことがあります。周囲が生活感あふれる下町の一角で、景観的には正直ごちゃごちゃしていたんですが、その家は違いました。先生は外周に塀を設けて、内部に庭をつくり、外からの視線を完全に遮ったんです。そこから見えるのは、塀の上の青空だけ。中に入ると別世界でした。周囲をどう切り取るか、いかにゾーニングを考え抜くか。その重要性を改めて実感した瞬間でした。

次に2つ目のポイントは「木造住宅の構造計画を無視していないか」。木造では、1階と2階の柱を通す“通し柱”があるんですが、これは構造的に非常に合理的なんです。2階の荷重がそのまま1階の柱に伝わる構造になっていて、耐久性もコストも優れています。図面に通し柱のマークが描かれているか、それだけでも設計者の基本の理解度が見えるんです。

3つ目は「間取りと外観を同時に考えているか」。外観を後回しにして間取りだけで決めると、屋根や壁にムリが出て、外観がボコボコになってしまうことがあります。1階と2階の壁がきちんと揃っているプランは、構造的にも合理的で、全体を一体的に考えている証拠なんです。

そして4つ目。これはとても大事ですが、「方位と太陽の動きを踏まえた設計になっているか」。夏の直射日光をどう遮るか(=日射遮蔽)、冬の陽をどう取り込むか(=日射取得)が考えられているかを確認してほしいです。無料プランの中には方位すら書かれていないものもあります。そうすると、南に見える方向が実は西日だった……なんてこともあるんです。結果、夏は暑く冬は暗い。そうならないように、自然光をどう取り入れているかは必ずチェックしてください。

最近は高性能化の流れで窓を小さくしたり、数を減らしたりする傾向があります。でも、昼間から照明をつけないといけない家というのは、やはり本質的に違うと思うんです。外の気配を感じながら暮らせること、それが本来の快適さだと思います。内と外をつなぐ「中間領域」、たとえば縁側やデッキのような空間があるだけで、暮らしはぐっと豊かになります。

5つ目は、「お施主さんが気づいていなかった提案があるか」。言われた通りに作るだけでなく、「こういう暮らし方もできますよ」「将来こうなるかもしれませんから、こうしておくと便利ですよ」といった、プロとしての提案があるかどうかです。言葉にできなかった思いを形にしてくれていたら、それは本当に良いプランだと思います。

最後の6つ目は、「基本事項のチェックを丁寧にしてくれているか」。家族構成や将来の暮らしの変化に合わせて、必要な要素をちゃんと確認しているか。例えば、受験期の子どものためのスペース、大人になった子どもの居場所、いずれ巣立つ時の配慮。こうした変化を考慮して、設計チェックリストのような形で説明してくれる設計者なら信頼できます。無料プランであっても、そうしたチェックが行き届いているかどうかで、価値は大きく違うんです。

つまり、同じ“無料プラン”でも、価値あるものと無価値なものがあります。今日お話しした6つの視点で見てもらうと、その違いがはっきり見えてくると思います。皆さんの家づくりがより良い方向に進むための参考になればうれしいです。

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