住まいの終活を考えるシリーズ① 「実家じまいがうまくいかないケースと対策」
今日はですね、ここ最近よく話題に出しています「住まいの終活」、特に実家じまいや空き家対策の時に、ちょっと困ったケースが起きることがあるんです。そのことについて、少しお話しさせていただけたらと思います。
実家じまいがうまくいっていないなぁとか、「うーん」と言っているケースは、大きく分けると2つあると言われているんです。その1つ目が、ズバリ実家の所有者、つまりお父さんやお母さんが亡くなった後に、残された家族、いわゆる法定相続人同士で、遺産をどう分けるかという話し合いをすることになるわけですが、この具体的な手続きが「遺産分割協議」なんです。でも、これがうまくいかない場合、なんとなく兄弟げんかのようになってしまったりして、そういう時に空き家がどうしようもなく放置されてしまう、これが困った問題として起きてくるんですよね。
話し合いがつかなかったら、相続税の支払い期日はどんどん近づいてきますし、感情的になってしまってうまくいかないと、結局「誰が空き家を管理するんだ?」ということがほったらかしになってしまうことがあるんです。そうなると、みなさんもおわかりだと思うんですが、暖かいシーズンになると、数カ月ですごく雑草が生えてきたり、クモの巣が張ったり、人気がなくなると急に猫が住みついてしまったり、一気に家が荒れてしまうことがあるんですよね。そうすると、たとえそのまま使うにしても、処分するにしても、やっぱりあまり印象がよくないじゃないですか。なので、これがあるとすごくしんどいなぁと思います。これが1つめのケースですね。
そして2つ目は、所有者であるお父さんやお母さんがご存命なんだけど、ご高齢で、どこかのタイミングで急に認知症の気配が出たり、お年寄りって突然転んで寝込まれると一気にそうなったり、僕も経験あるんですが、僕のばあちゃんも病院に入院した途端に、家族で一番近いお嫁さんや孫の顔がわからなくなってしまう、びっくりしたことがあるんです。そういうふうになってしまって「認知症かな」となった時に困るのが、今お住まいの家を「おばあちゃん、もう帰れないな」となった時に、なんとかしないといけない。たとえば極端な話ですが、売るにしても、ほっておいても仕方がないから貸そうかとなっても、あるいは若い夫婦が帰ってきて、そこを使わせてもらおうとリフォームしようか、いろんなケースがあると思うんですけど、そういう時には普通は何かしら契約行為が必要になるんですよね。売買契約、賃貸契約、工事の請負契約などです。
ただ、この請負契約などの契約行為は、基本的に所有者本人がしないといけないんですけど、認知症の場合は契約行為ができなくなるんです。そうなるとどうしようもなくて、結局そのまま施設に入られて、何もできないまま、どんどん空き家が傷んでくる、そういうことが起きてきます。ですので、こういう2つの困ったケースにならないようにしなきゃいけないということで、この動画を見てくださっている方の中には、だいぶお年を召されて「これからどうしようかな」と考え始めておられる方もいると思います。やっぱり家族に負担や迷惑をかけたくないなぁというのは、誰しも親心として思うことじゃないかなと思います。だからこそ、今できることは何かということも、頭の片隅に置いておいていただければと思います。
まず、ケース1の遺産分割協議が失敗しないためには、一にも二にも「相続の準備」をしておくことが大切です。典型的な相続の準備というのは、あらかじめ遺言書を書いておくことなんです。たとえばお父さんやお母さんがしっかりしている時なら、兄弟がいろいろ好きなことを言う場面でも、「いやいや、これはこの子に継がせるから」とか、「この子にはこういうことがあったから、今ある財産の半分じゃないけど、親としてこうしてほしい」と言われると、子どもは「お父さんやお母さんがそう思うんなら、それでええんと違う?」と、意外にすんなり合意してくれたりするんですよね。
でも、これが亡くなった後になると、本人の意思がわからなくなるし、ご兄弟がご結婚されていたら、それぞれの配偶者の方も話に加わってきますから、「あなたもちゃんと言いなさいよ」とか、「君も言わないとダメだよ」なんて、一声添えられて、ちょっとややこしくなってしまうことがあるんです。なので、遺言書という形で、まだまだお元気なうちに書いておかれると非常にいいと思います。特におすすめは「公正証書」という形で残しておく遺言書です。これは地元の公証役場に行って、遺言書をきちんと認めてもらうやり方ですね。
それから、そこまで本格的じゃなくても、遺言書を地元の法務局に保管してもらう制度も最近はあります。こういうのも使っていただくといいかなと思います。また、場合によっては「生前贈与」ということで、あらかじめ財産を渡しておくことも1つの方法です。ただし贈与の時は課税が発生する場合がありますから、そのタイミングで課税されたりもするんですけど、今は「相続時精算課税制度」もありますので、贈与はしておいて、税金の申告は亡くなった後に、というやり方もできます。これは私がすることではなくて、きちんと税理士さんや会計士さんに相談していただくことになりますが、そういう形で準備をしておくことが大切なんです。
もう1つ、話のついでに恐縮ですが、いわゆる所有者の方が亡くなられた後は、速やかに相続登記をしないといけません。誰がその不動産を引き継ぐのか、これができていないと、いわゆるペナルティ、例えば固定資産税が少し高くなったりすることもあります。こうしたことも含めて、事前にしっかり決めておいていただくと、とてもいいのかなと思います。
そして認知症の対策についてですが、認知症は誰もなりたくはないですけど、なかなか防ぎようがないところもありますよね。だからこそ、気持ちがしっかりしているうちに、自分の判断力がなくなった場合に「処分をしてくれる人」を選んでおくことも大切です。これを一般的には「民事信託」や「任意信託」と言います。たとえば、財産が大きい場合には、子どもさんに全て一任するのがなかなか大変という時、自分がとても信用できる人、例えば法律家や社会的に信頼できる方、親友のような方にお願いするというやり方もあります。
また、「いやいや、うちは家族が仲良いし、長男がしっかりしているから託したい」という場合には「家族信託」という方法もあります。あらかじめ、この人にこれを任せておくと決めておくのは、とても大事なんです。一番多いケースでいうと、おばあちゃんならおばあちゃんの銀行口座があって、老後のためにきちんとお金を貯めていた。でも、もしお母さんが認知症になってしまったら、その時点で金融機関に息子さんが「お母さんを施設に入れるからお金を使いたい」と行っても、それはできないんです。金融機関としては、お母さんに本人確認を求めますし、そこで本人確認ができないと、「そんなの知らない」と言われてしまうかもしれません。そうならないためにも、銀行口座をこの人に管理委託するという金融機関との取り決めや、家族信託としてきちんとした信託契約をしておくことも可能です。こういった準備をしておかれると安心ですよね。
ただ、現実には、事前にこうした準備をしている方は少なくて、認知症になってから「困ったな」と動き出す方が多いんです。その時には「成年後見制度」を使ったりします。これも法定・任意の2つのやり方がありますが、どちらにしても家庭裁判所に行ったり、公証役場で公正証書を作ったりしないといけなくて、まぁまぁ大変なんです。そして、誰を後見人にするかも家庭裁判所が決めますから、思うようにいかないこともあるかもしれません。
もちろん、おじいちゃん・おばあちゃんが残した貯金を、ちょろまかすというのは論外ですが、なんとなくグレーな感じで「これは費用として使わなきゃ」という時もあるじゃないですか。そういう時のためにも、やっぱり事前に民事信託や家族信託をやっておかれると、すごく安心だと思います。
こういった話を聞いていただいて、相続準備や認知症対策のお話をしましたが、「それは分かるんだけど、いつからどうやって始めればいいの?」と悩ましいところだと思います。なので、その前にまず、所有者ご自身が自分の気持ちや周辺の整理をして、ある程度何をすべきなのか方針を立てていくことが大切かなと思っています。
次回の動画ではですね、ご自身がされたらいい「自分自身の整理」について、もう少し詳しく解説をしていきたいと思います。